Part3貨物の引取りと通関手続き
Story3貨物が受け取れない!①決済及び通関と貨物取引の流れ②信用状(L/C)の発行③貨物の受取り(荷受け)④輸入通関⑤AEO制度⑥FTAの活用
Part3貨物の引取りと通関手続き
①決済及び通関と貨物取引の流れ信用状を利用した場合、輸出者は船積を行い、船積書類を揃え、為替手形を振り出し、取引銀行に買取ってもらいます(さまざまな船積書類が添付された為替手形を「荷為替手形(⇒Part4『①代金決済』)」と呼びます)。
輸出地で買取られた荷為替手形は、輸入者側の信用状発行銀行に送られ、信用状発行銀行は輸入者に決済をするように連絡をします。
この手形代金を支払い、決済は完了となります。
手形決済後、銀行から渡される船積書類の中に、船荷証券(B/L)が含まれています。
このB/Lと呼ばれる船荷証券がないと、船会社から貨物を引き取ることができません。
この船荷証券を入手したら、通関業の許可を併せ持つ海貨業者に、輸入通関と貨物の引取りを依頼します。
輸入の場合は、関税、消費税、地方消費税などが課税されますから、その納税申告の代理も同時に依頼します。
海貨業者は、通関手続きを行い、さらに船荷証券(B/L)を船会社に呈示し貨物のための手続きを行います。
たとえばコンテナ船で到着するコンテナに満載された大口貨物(FCL貨物)の場合、税関長による輸入許可を受けたら、貨物はCYから引き取られ輸入者が指定した倉庫まで陸送されます。
この陸送をドレージと言い、陸送する会社をドレージ会社といいます。
ここで、コンテナからモノが取り出されます。
これをデバンニングといいます。
コンテナに混載された小口貨物(LCL貨物)の場合は、ヤード内にあるCFS(コンテナ・フレイト・ステーション)でデバンニングされ、輸入者の手に渡ります。
コンテナ船以外の船の場合、貨物の陸揚げ方法が異なりますが、B/Lと輸入許可書がないと本船から引き取ることができないのは、コンテナ船の場合と同じです。
②信用状(L/C)の発行1信用状とは売買契約が成立すると、輸出者は貨物の引き渡し義務(債務)と、代金を請求権(債権)が、一方の輸入者にとっては代金支払い義務(債務)と、貨物の引き渡し請求(債権)が発生します。
しかし義務や権利といっても、初めての取引だったり高額な取引の場合、売主は本当に貨物の代金を受け取れるのか、また買主は本当に契約通りの貨物が送られてくるのか不安になるでしょう。
貿易の世界では、このような心配事が現実にならないように、初めての取引だったり高額な取引の場合、輸出者は輸入者に対して、代金の支払いについて輸入者の取引銀行の保証をもらうように要求することが多いのです。
この輸入者の取引銀行の支払い保証を信用状(L/C;LetterofCredit)と呼んでいます。
この信用状の流れを知ることは、貿易の決済の仕組みを知る上で、とても重要です。
そして、貿易決済の基本を知る手掛かりにもなります。
さて、このような場合、輸入者は自分の取引銀行に信用状の発行(=支払い保証)をしてほしいと依頼します。
これが信用状開設依頼とか、信用状発行依頼(本書では、信用状発行依頼と呼びます)です。
依頼するときには、各銀行で制定された書面(信用状発行依頼書)に記入して銀行に提出します。
信用状は、契約の内容通りに発行してもらう必要があります。
輸出者は誰なのか、どのような内容の貨物で、数量、単価、合計額などや輸入者が必要とする船積書類を記入し、発行依頼をするのです。
銀行にとって信用状発行は、銀行が支払を保証するわけですから融資と全く性格は変わりません。
いわゆる与信業務の一つなのです。
ですから発行するにあたって、信用状発行依頼書のほかにいろいろな書類を提出しなければなりません。
さらに重要なのは、発行に際して銀行に担保の提供、保証協会の保証などが必要になります。
このような手続きを得て、銀行の審査を通り、はじめて信用状が発行されるのです。
もちろん信用状発行に係る手数料もかかります。
信用状が無事発行されると、輸出地の通知銀行を経由して、売主である輸出者の手に渡ります。
輸出者は、信用状を受け取ると貨物を船積し、輸出します。
そして、買主である輸入者に対して、「船積し、船が出港したよ」という船積通知(ShippingAdvice)を送ります。
この船積通知が輸入者に届くと、輸入者は、輸入の準備をします。
2信用状のしくみ(一覧払手形の場合)信用状のしくみを図解して見てみましょう。
①買主である輸入者は、自分の取引銀行に信用状の発行を依頼します。
信用状の申込者ですので、Applicantと信用状のしくみの中では呼ばれます。
②銀行の審査が通り、信用状発行依頼書に基づいて信用状が発行されます。
信用状を発行する銀行のことを、信用状発行銀行(IssuingBank)といいます。
③信用状が発行されると、信用状発行銀行から輸出地の銀行を経由して輸出者に信用状が交付されます。
この輸出地の銀行を、信用状の到着を輸出者に通知することから通知銀行(AdvisingBank)といいます。
なぜ、信用状発行銀行や輸入者から直接、輸出者に信用状が渡されないのでしょうか。
それは、大きな理由があります。
信用状発行銀行と通知銀行は、コルレス契約が結ばれています。
そして、契約上で通知銀行には信用状発行銀行の署名や暗号が取決められています。
通知銀行は信用状が届いた段階で、信用状の真偽を取決められた署名や暗号で確かめます。
真正のものであると確認をしたところで輸出者に交付します。
もし、信用状発行銀行や輸入者の手から直接交付されたのでは、真偽の確認が取れません。
④信用状を手に入れた輸出者は、貨物を船積みし、船会社から貨物の預かり書であるB/L(船荷証券)を入手します。
また、CIFやCIP条件の場合、輸出者は海上保険を付保しなければなりません。
付保したならば保険会社から保険証券を受け取ります。
⑤輸出者は、貨物の明細書であるインボイス、B/L(船荷証券)、保険証券など信用状で要求している書類を揃え、為替手形を発行し、取引銀行に買取依頼をし、買取代金を受け取ります。
輸出者の立場なら、輸出貨物の決済はこの段階で完了です。
⑥買取銀行で買い取られた荷為替手形は、銀行決済のうえ、信用状発行銀行に送付されます。
⑦信用状発行銀行は、送付された為替手形の代金を輸入者に請求します。
⑧輸入者は手形代金を信用状発行銀行に支払います。
⑨手形代金を支払うと、信用状発行銀行は輸入者にB/Lなどの船積書類を渡します。
⑩輸入者は、輸入通関手続きを行い輸入許可を受け、輸入港に到着した貨物をB/Lと引き換えに無事受け取ります。
インボイスやB/L、保険証券などを船積書類と呼んでいます。
これを為替手形に添付したものを荷為替手形と呼んでいます。
これを輸出者は銀行に買い取ってもらい、買取代金を受け取ります。
このように、信用状の仕組みの中では、輸出者は利益を受ける人ですから、受益者(Beneficiary)と呼びます。
またB/Lは、有価証券であり、「貨物の引取り請求権」そのものを表わした証券です。
B/Lを呈示しない限り、基本的には貨物を船会社から受け取ることはできません。
そして、貨物の処分はB/Lをもって行うこととされています。
例えば、輸入港に運送中に転売(洋上転売)する場合には、B/Lを譲渡する形で行われます。
貨物代金を払ったとしてもB/Lが譲渡されないと船会社に貨物を引き渡すように請求できません。
B/Lの譲渡は裏書によって行われます。
このように流通証券としての性質も有しています。
荷為替手形を買い取る銀行を買取銀行(NegotiatingBank)と言います。
3いろいろな信用状信用状はいろいろな側面から分類されますが、特に重要だと思われるものは次のとおりです。
◎取消不能信用状(IrrevocableCredit)信用状が発行されて、受益者である輸出者に通知された以上、信用状関係当事者の全員の同意がなければ取消や内容の変更ができない信用状です。
信用状関係当事者とは、「輸入者」「輸出者(受益者)」「信用状発行銀行」、そしてもしあれば「確認銀行」※をいいます。
現在流通している信用状はすべて取消不能信用状です。
※確認銀行信用状発行銀行だけの支払い確約だけでは、信用力が不足する場合は国際的に信用度の高い銀行にさらに支払確約(確認)を受けている場合がある。
この銀行を確認銀行と呼んでいる。
確認銀行がついている信用状を確認信用状(ComfirmedL/C)という。
◎買取銀行指定信用状(RestrictedL/C)手形の買取銀行が指定されている信用状です。
ただし輸出者と買取銀行の間で取引がない場合でも、自分の取引銀行で手形を買い取ってもらうことができます。
手形を買い取った取引銀行が、指定された銀行に再度買取を依頼します。
◎回転信用状(RevolvingL/C)継続的な取引がある場合に利用するものです。
通常、信用状は売買契約1件ごとに輸入者が銀行に依頼して発行するものですが、回転信用状であれば毎回取引するごとに信用状発行手続きをするなどの煩雑さが解消されます。
また、多額の金額を信用状の額とするとリスキーだという場合にも利用されます。
たとえば、年間取引量は1億2千万円になる場合、一度に1億2千万円の信用状を発行すると、担保物の差し入れに困難があったり、発行手数料もかなりの金額になります。
また、信用状を毎月発行するのも煩雑です。
しかし、回転信用状を利用すると、月の限度額を1,000万円とし、また翌月1,000万円が自動的に更新されることで分割輸入をし、上記の問題を回避することができます。
この信用状は前月分の未使用残高の累積を認めない方法と、未使用残高を翌月に累積して使用できる方法があります。
■スタンドバイ・クレジット
これは、貿易取引を前提とした信用状ではなく、たとえば海外の支店などが現地の銀行から借入れをしたいが、海外の信用力がないため借入れがスムーズに行かないという場合に、本社の日本での取引銀行が発行するL/Cです。
つまり、本社の取引銀行が債務保証しているものとみることができます。
③貨物の受取り(荷受け)輸入貨物を引き取る場合には、税関長の輸入許可が必要です。
通常、輸入者は、輸入通関や貨物の引き取りを通関業の許可を受けた海貨業者(以下通関業者といいます。
)に依頼します。
輸入通関とは、輸入(納税)申告から税関長の輸入許可を受けるまでの手続きをいいます。
通常、輸入(納税)申告は、貨物を保税地域(CY:コンテナヤードなど)に搬入してから行います。
この輸入通関は、輸入者(企業)が自分で行うことも出来ます。
しかし、複雑であるということと、コスト高になるということから多くは、通関業者に依頼するのです。
依頼事項は、概ね次の4つに分けられます。
①外国から到着した貨物を船会社や航空会社などから受け取る手続き(荷受け)②貨物の保税運送(OLT)を行う手続きやコンテナから貨物を取り出す作業(この作業をデバンニングといいます。
)③税関長に行う輸入(納税)申告から輸入許可を受けるまでの手続き④輸入許可を受けた貨物を指定場所まで運送する手続きこれらの手続きにより、輸入者は、貨物を無事受け取ることが出来るのです。
その業務を依頼するにあたり、通関業者に「輸入作業依頼書」と共に次のような書類を渡します。
≪必要な書類≫a)船荷証券(B/L)、航空貨物引渡指図書(リリースオーダー)b)インボイス(仕入書)、パッキングリスト(包装明細書)c)経済産業大臣の輸入承認(I/L:ImportLicense)検査済書、届出済書など行政法規により輸入に関して許可や承認などが必要な場合、許可や承認を受けていることを証明する書類d)その他、税関の検査、審査の際参考となるべき書類注文書、カタログ、運賃明細書、保険料明細書などe)必要に応じ原産地証明書(特恵関税、FTA関連、WTO関連など)1コンテナ船貨物の場合コンテナ貨物の引取りの一例を見てみましょう。
①輸入者は取引先の通関業者にコンテナ貨物の受取りと輸入通関手続を依頼します。
「輸入作業依頼書」およびB/Lなど必要な書類を通関業者に渡します。
②通関業者は船会社にB/Lを呈示し、現場のCYのオペレーター(大口貨物:FCLの場合)またはCFSのオペレーター(小口貨物:LCLの場合)宛ての「荷渡指図書(D/O)」を交付します。
なお、貨物が船積書類より先に届いた場合、銀行の連帯保証付きの「補償状(L/G)」を船会社に呈示しD/Oを受け取る方法もあります。
③荷渡指図書(D/O)の交付。
④通関業者は輸入者を代理して税関長に輸入(納税)申告をします。
⑤税関長から輸入許可(I/P)を受けます。
⑥荷渡指図書(D/O)と輸入許可書(I/P)を呈示します。
⑦通関業者は貨物を受け取ります。
この時、デバンニングレポートなどを受け取ります。
このデバンニングレポートは引渡しのときの貨物の状態を記録したもので、船会社側と荷受側が相互に署名します。
⑧輸入者は通関業者を通し貨物を引き取ります。
2在来船貨物の場合コンテナ船以外の在来船の場合も基本的には、コンテナ船の場合と同様です。
ただし荷渡指図書(D/O)の宛て先が異なります。
在来船の場合、貨物の陸揚げの方法は、自家揚げ(ShipsideDelivery)と総揚げ(ShedDelivery)があり、それぞれ荷渡指図書(D/O)の宛て先が異なります。
「自家揚げ」とは、荷主の責任で陸揚げする方法です。
重量が重い貨物や大きな貨物の場合にこの方法が取られます。
荷主(実際には委託を受けた通関業者)が直接、船から貨物を陸揚げするのですから、荷渡指図書(D/O)は船長宛に発行されます。
そして貨物を引き取る際には、輸入者側と船会社側の検数人が立ち合い、検数票(TallySheet)が作成されます。
この検数票をもとに、貨物の受取書であるボート・ノート(貨物受渡書)が作成され、本船に提出されるのです。
また「総揚げ」とは、船に積み込まれている貨物を船会社が、全部一括して陸揚げする方法です。
この作業はステべ業者(Stevedore:船内荷役業者)によって行われます。
陸揚げされた貨物は、保税地域に搬入され、そこで貨物が引渡されます。
D/Oの宛て先は、陸揚げを行うランディング・エージェント宛てに発行されます。
引き取る際は、検数票(TallySheet)が作成され、それをもとにボートノート(貨物受渡書)が作成されるのは、総揚げの場合と同様です。
3航空貨物の場合航空貨物の場合は、航空貨物運送状(AirWaybill)が使われます。
船舶の場合のB/Lとは異なり、有価証券ではありません。
つまり貨物の引渡請求権を表した証券ではありません。
そのため、貨物の引取りには、この航空貨物運送状の提示は必要ありません。
航空貨物の場合、輸出者の振り出した荷為替手形よりも貨物の方が先に着くことがほとんどです。
そうすると、決済がされないまま貨物を引き取ることになります。
そこで、航空貨物運送状に記載される荷受人を、信用状発行銀行にします。
そして、決済前に貨物を受け取るにあたり、銀行が航空会社などに対し、銀行を荷受人として出荷された貨物を、輸入者あるいは輸入者が委託した通関業者に、貨物を引き渡すように指図します。
これが、航空貨物引渡指図書(リリース・オーダー:ReleaseOrder)です。
これを航空会社やその代理店に呈示することにより貨物を引き取ります。
この場合、貨物は決済前なので銀行の担保物なのですが、これを輸入者は借り受けるという形をとるわけです。
輸入者は、航空貨物引渡指図書を銀行に発行してもらうにあたり、輸入担保荷物保管証(丙号)(航空貨物用):(AIRT/R:AIRTrustReceipt)と担保としての約束手形を差し入れます。
その後、決済がされると、貨物はすでに引取り済みであっても、その時点で晴れて輸入者のものになります。
④輸入通関1輸入(納税)申告輸入にあたって、輸入者は、原則として税関長に輸入申告書と納税申告書を同時に提出しなければなりません。
輸入申告は、輸入する貨物自体の申告です。
つまり貨物の引取りのための申告です。
もうひとつは、貨物を輸入する場合に課される関税、消費税、地方消費税などの納税申告です。
したがって、輸入する場合は、この2つの申告を税関長に同時に行う必要があります。
2関税などの納税申告輸入の場合、輸出とは違い税金が発生します。
代表的なものが関税です。
関税は、例えば海外から安い農水産物などが輸入された場合、日本の農水産業が大きな打撃を受けないようにする、つまり国内産業の保護が目的に課税されます。
しかし鉱工業産品を中心に、関税が無税であるものも多くあります。
その一つがウイスキーです。
ウイスキーは関税が無税です。
しかし、いくら無税と言っても酒税、消費税、地方消費税は、課税されます。
輸入する場合は、原則としてこれらを輸入するにあたって課税される税金を輸入者が計算し、申告します。
仮にこれらの税が免税などで課税されない場合も、申告書は提出する必要があります。
関税は、一般の輸入の場合に課税する税率のほかに、開発途上国である特恵受益国から輸入する場合に適用される特恵税率、WTO加盟国などから輸入する場合の協定税率、FTA(自由貿易協定締約国)から輸入する場合のFTA税率があります。
さらには、少額貨物などのための簡易税率があります。
これらのうち、特恵関税の適用や、協定税率の適用を受ける場合、あるいはFTA税率の適用を受ける場合は、それぞれ「原産地証明書」を原則として輸入(納税)申告の際に税関に提出する必要があります。
特にFTAは、協定ごとに原産地規則が異なっていますので注意が必要です。
また、協定によっては、原産地証明書以外の方法で原産地を証明する方法もあります。
なお、原産地証明書の遅延により、輸入(納税)申告までに入手できない場合には、あとでお話しする「輸入許可前における貨物の引取り承認」(BP承認)を利用することができます。
3輸入が規制されている貨物よく新聞などで麻薬や向精神薬を密輸し、逮捕されたという記事が出ています。
麻薬や向精神薬は通常、輸入出来ないことは常識でご存知だと思います。
輸入の規制については、関税法にその規定があり、さらに外国為替及び外国貿易法(略して外為法)、医薬品医療機器等法、食品衛生法、植物防疫法などにより規制されています。
輸入してはならない貨物関税法には、「輸入してはならない貨物」が定められています。
これらは、税関が水際で直接取り締まることができるものです。
例えば、麻薬、向精神薬、指定薬物、拳銃、爆発物、ポルノ、児童ポルノなどのほかや商標権や著作権などの知的財産権侵害物品(いわゆるコピー商品)などが挙げられます。
たとえば、商標権の侵害物品であろう疑義商品が輸入品の中に含まれていた場合、税関は「認定手続き」と呼ばれる手続きによって、黒か、白かを判断します。
もし黒であれば、「輸入してはならない貨物」に該当することになり、輸入は許可されません。
外為法・輸入貿易管理令
外為法の政令である輸入貿易管理令には、輸入にあたり経済産業大臣の輸入承認が必要な場合が規定されています。
「輸入割当品目」(IQ品目)と呼ばれている品目もその一つです。
これらは輸入の数量制限がされているもので、輸入にあたっては、経済産業大臣の「輸入割当」と「輸入承認」の2つが必要です。
この「輸入割当」と「輸入承認」がないと、税関長の輸入許可を受けることができません。
つまり、輸入はできないのです。
輸入割当品目には、たら、ぶり、にしん、帆立貝、貝柱及びいかなどの水産物の一部と、モントリオール議定書に基づく特定フロンなどのオゾン層破壊物質が規定されています。
その他の法律食品衛生法は、人体に有害な直接的・間接的な物品の輸入について規定しています。
食品や食品添加物のほか、食器、箸、フォーク、スプーンなどや、乳幼児が遊びに使うとき口に接触するおそれのある積み木のようなおもちゃなどが対象になっています。
これらのものを輸入する場合には、「食品等輸入届出書」と「輸出国の衛生証明書」などを検疫所に提出する必要があります。
また、「医薬品医療機器等法」(旧薬事法)では医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器を業として輸入する場合において、家畜伝染病予防法ではハチミツ、ソーセージ、ハム、ベーコンなどを輸入する場合などにおいて、規制があります。
輸入をする場合には、どのような法律で規制があるかを調べる必要があります。
そして、規制されている法律で行政機関の許可・承認、その他の行政処分が必要であれば、税関長に輸入(納税)申告をする前に手続きをし、許可や承認を受けておく必要があります。
なぜなら、輸入(納税)申告時に許可や承認を受けていることを税関に証明しないと、税関長の輸入許可を受けられないからです。
原産地について偽った表示や誤認を生じる表示がある場合輸入する商品や包装に実際の原産地と異なる原産地が表示されている場合や、誤認を生じさせる表示がされている場合には、輸入は許可されません。
ただし、マカオや香港の製品については、原産地を中華人民共和国としても虚偽表示とは、取り扱わないとされています。
誤認を生じさせる表示とは、例えばどのようなものがあるでしょう。
たとえば、中華人民共和国でつくられたものである場合で、“LicensedbyItaly”とされているような場合です。
イタリア製だと誤認を生じさせる恐れがあります。
もっとも、このような場合でも“MadeinChina”と正しい原産地を表す表示がきちんと目立つように表示されていれば、誤認を生じない表示と認められるでしょう。
偽った原産地表示や誤認を生じさせる原産地表示がある場合は、それを消すか、訂正しないと輸入はできません。
4輸入許可前貨物の引取り承認制度(BP承認制度)輸入(納税)申告を行った後、税関の審査・検査に時間を要する場合や、貨物が先に日本に到着したため、申告時に原産地証明書の提出ができない場合に、輸入許可前に貨物を引取ることができる制度が、関税法に定められています。
例えば、クリスマス用品やハロウィーン用品など季節に需要が左右されるような貨物の場合、税関の審査・検査に時間がかかっては、商機(ビジネスチャンス)を逸してしまいます。
このようなことを防止するために貨物が輸入許可される前に保税地域から引き取り、市場に流通させることができる制度が、輸入許可前貨物の引取り承認制度です。
ただし、著作権侵害物品や原産地を偽った表示や誤認を生じさせる表示がされている貨物などの、輸入が許可されない貨物は、この制度を利用できません。
また、外為法・輸入貿易管理令の規定により、経済産業大臣の輸入承認を受けていないなど、行政法規によって行政機関の許可・承認などを受けていない貨物も同様に利用できません。
この制度を利用する場合は、税関長に承認申請を行い、輸入許可前貨物の引取り承認(BP承認)を受ける必要があります。
また、承認申請の際、承認を受けようとする貨物の関税額に相当する額の担保の提供が必要です。
このように引き取られた貨物は、輸入許可された貨物のように自由に市場に流通させることができます。
しかし、関税、消費税などがまだ納付されていませんから、税関の通知にしたがい納付します。
納付後、正式な輸入許可を受けます。
⑤AEO制度AEO(AuthorizedEconomicOperator)制度とは、国際物流のセキュリティ強化対策と、国際物流の円滑化を目的に、関税法に規定されている制度です。
具体的には、税関手続きに関する法令順守(コンプライアンス)が優れ、かつ取扱貨物の安全(セキュリティ)を確保している輸出入業者、通関業者、倉庫業者等にAEO業者の地位を与え、その者には通関業務上のメリットを与えている制度です。
輸入に関しては、特例輸入者、認定通関業者が重要です。
特例輸入者と特例申告輸入貨物を保税地域に搬入した後、輸入申告と納税申告を同時に行うのが、大原則だとお話ししました。
この例外があります。
すなわち、貨物を保税地域に入れないで、輸入申告を行い、輸入許可を受け、後に納税申告を行うという方法です。
この方法は、誰でも行えるというものではありません。
輸入者としてコンプライアンスが優れ、またセキュリティ管理の優れた者に対して、その者の申請により、税関長は特例輸入者の承認を行います。
承認の要件など具体的なことは関税法に定められています。
この承認を受けた特例輸入者は、貨物が日本に到着する前に、貨物の引取りのための申告(輸入申告)ができます。
そして、貨物が日本に到着する前に税関長の輸入許可を受けることができ、貨物の日本到着と同時に貨物を引き取ることができます。
そして納税申告の提出と関税などの納付は、輸入許可を受けた日の属する月の翌月末日までに行えばよいことになっています。
納税申告の原則は、輸入申告と同時に行うのですが、特例輸入者の行う納税申告は、輸入許可後に行うことから、特例申告と呼んでいます。
輸入申告と納税申告を分離することにより、その検査・審査を迅速化させることができます。
認定通関業者この認定通関業者も、税関長の認定を受けた通関業者です。
そして、この認定通関業者に輸入通関を依頼した場合、特例委託輸入者となり特例申告によることができます。
つまり、輸入申告は貨物を保税地域に入れないで行うことができます。
もっとも税関の貨物に対する検査・審査のため、保税地域に入れなければなりません。
そして輸入許可を受け、輸入許可の日の属する月の翌月末日までに特例申告を行えば良いので、その間納税が留保されます。
輸出入申告官署の自由化輸入(納税)申告は、原則として貨物を入れる保税地域の所在地を所轄する税関官署に対して行うのが原則です。
ところが、特例輸入者や認定通関業者に輸入通関を依頼した特例委託輸入者の場合、平成29年秋からそのような制限は撤廃され、全国のいずれかの税関官署に対しても自由に輸入(納税)申告することができるようになります。
⑥FTAの活用1自由貿易協定FTAとはFreeTradeAgreement、つまり自由貿易協定を示す語の略です。
日本ではこの協定を含め、そのほかの包括的な経済活動等を行うことを前提とした経済連携協定(EPA:EconomicPartnershipAgreement)が、次々に締結されています。
このような地域経済の活性化を促進しようとする経済圏づくりは、日本だけではなく、世界のあちらこちらで作られています。
北米で1994年に発効された北米自由貿易協定(NAFTA)は、アメリカ、カナダ、メキシコの経済圏で、関税の撤廃、金融、投資の自由化や知的財産権の保護を図るものです。
その他、南米
では、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ等の経済圏でMERCOSUR(メルコスール)が、ヨーロッパではEUが、東南アジア諸国連合(ASEAN)では、ASEAN自由貿易地域(AFTA)を発足させています。
2EPAを利用する方法EPAを利用して輸入した場合、EPAの締約国の原産品の輸入については、締約で定めた協定税率が使用でき、一般的には通常適用される税率(MFN税率)よりかなり有利です。
たとえば、水産物をタイに輸出して加工した後、日本に輸入した場合、水産物調整品の通常の実行税率は7.2%ですが、タイEPAを利用した場合は無税になります。
これを見ればわかるように、コスト削減につながる大きな関税の節減効果が見込まれます。
EPAの利用について検討する場合には、まず、日本との締約国であるか、どうかを確認します。
そして、輸入しようという貨物のHSコードを特定します。
HSコードというのは、「商品の名称および分類についての統一システムに関する国際条約」に基づいた品目別の分類番号をいいます。
日本では、品目コードとか、税番と呼んでいるものです。
このコードは日本の場合、9桁あります。
このうち、上6桁は世界共通です。
さらに電子情報処理組織(NACCS)を利用する場合には、NACCS用コード1桁がプラスされます。
このHSコードがわかれば、タリフにより適用税率がわかります。
ちなみに、日本貿易振興機構(ジェトロ)や税関のHPには、それぞれのEPA税率が載っています。
ここで一般の税率(MFN税率)と比べ、有利であることを確認します。
EPAを利用した方が有利だという場合には、そのEPAで定める原産地規則を確かめます。
ここにはEPAの協定国の原産品と認められるための諸条件が決められています。
これは、EPAごと、輸入する品目ごとに異なりますので注意が必要です。
もし原産品と認められないという場合には、EPA協定による税率は使えないので一般のMFN税率が適用されます。
また、輸入時において税関に原産地を証明する必要がありますが、これもEPAごとに異なります。
実際に利用する場合には、原産地を証明する手段、例えば、原産地証明書による場合には、原産地証明書を入手しなければなりません。
原産地証明書以外にもEPAによっては、認定輸出者による自己証明や、輸入者や輸出者などが行う原産品申告書による方法もあります。
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