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マニュアルで得られる5つの成果

マニュアルで得られる5つの成果について解説していきます。

目次

生産性が劇的に上がる

「仕事の基準」づくりが、生産性向上の第一歩

このような状況を打開するには、 「良い仕事をするための決まりごと(ルール)」 が必要です。 この「良い仕事」には、次の3つの条件があります。

① 成果を上げる

② 効率を上げる

③ 満足度を高める

それぞれ説明していきます。

① 成果を上げる

どんな仕事でも、なんらかの「成果」を上げることに結びついていなければなりません。逆の言い方をすれば、仕事は成果を明確にして、絶えずその成果を意識して行うものです。成果に結びつかない仕事というものは、自己満足でしかないともいえます。

② 効率を上げる

いくら丁寧な仕事でも、時間がかかりすぎたり、決められた時間や約束の時間に遅れては意味がありません。時間は、コストです。コストパフォーマンスを考えて仕事をするというのは、非常に大切なことです。素早くムダなく仕事を進める、つまり、効率的に仕事をすることが求められています。

③ 満足度を高める

いわゆるお客様はもちろんのこと、仕事の次工程や他部門、取引先なども「お客様」として捉え、その満足度を高めることを意識して仕事をすることが大切です。常に相手のことを考えて仕事をする。その結果、相手に喜ばれると、その結果、成果も上がることにつながります。

この3つの「良い仕事」の条件を実践している人が、「仕事ができる人」です。だからこそ、誰もが「仕事ができる人」になるための「仕事の基準」が大切です。 では、この「仕事の基準」がない、つまり、皆が勝手に仕事をしている、バラバラなやり方で仕事をしていることを放置していると、どんな問題が起こるのでしょうか。

《バラバラなやり方がもたらす弊害》

生産性が向上しない仕事のムダ・ムラ・ムリが増大する(コストがアップする)

ミスやクレームなどが増加する会社としてのノウハウの蓄積ができない自己流・我流がはびこる業務の効率化や改善が進まない人材育成が停滞する引き継ぎが確実にできない品質やサービスが低下するお客様の不信感が増加する 「人によってやり方が違う」ということは、その仕事を新たに学ぶ人にとっては「何が良いやり方なのか分からない」ということを意味します。

この「やり方」、バラバラなノウハウを一本化し、「仕事の基準」として統一しなければ、上記のようなさまざまな問題を引き起こすことになります。 つまり、「仕事の基準」を整備していない会社は、非常に危険な状況を放置し続けていることになります。

逆に、「仕事の基準」を整備するとどうなるのでしょうか。 言うまでもなく、「バラバラなやり方(ノウハウ)がもたらす弊害」の逆の成果がもたらされます。

私がお手伝いをした会社の成果を幾つかご紹介しましょう。

成果報告同じ仕事の作業時間が短縮できた(サービス業 総務事務)

技術の習得が速くなった(製造業 生産現場)

同じミスを繰り返さなくなった(飲食業 接客業務)

正確で良いやり方が身についた(サービス業 フロント業務)

仕事の改善が進んだ(製造・販売業 品質管理業務)

引き継ぎの時間が短縮し、確実に引き継げた(飲食業 フロント業務)

以上のようにさまざまな成果、特に、コストダウンや生産性が劇的に上がっています。 また、自己流・我流のやり方が矯正されることにもなります。 良い仕事のノウハウ(やり方)をもとに、「仕事の基準」を明確にし、それを会社の仕事のルール(決まりごと)として統一し、一本化する。これによって、小さな会社が抱えるさまざまな問題が解決できるのです。

仕事の基準 = 最も良い(効率的で、仕事の成果が上がる)仕事のやり方 この「最も良い仕事のやり方」をまとめ、会社の基準にすることを、「標準化」と言います。そして、これが「マニュアル」なのです。

この仕事のやり方の統一・一本化は、教える側にとっても学ぶ側にとっても、大きな効率化につながります。教える側………教えやすい学ぶ側…………学びやすい会社にとって…引き継ぎや担当者不在にも対応できる 全員に共有することによって、仕事の効率が大幅に改善されます。

これまで見てきたように、「マニュアル」で得られる成果の1つは、 生産性が劇的に上がる──「仕事の基準」づくりが、生産性向上の第一歩 になるということです。 目の前の緊急に解決しなければならない諸々の問題はあると思いますが、将来を見据えた優先的な取り組みの1つとして、この「マニュアル化」は非常に重要な経営上の施策です。

2優秀な人材の流出が防げる

定着率のアップ、採用コストの大幅ダウンケース

2 ある社長曰く、 「いやぁ、最近の若いもんは、こらえ性がなくて、長続きがしない。怒ればすぐ辞めるし、困ったものです」と嘆き節。 そこで退職した A君に話を聞いてみると 「そのうち慣れるから、と言って何も教えてくれない。人によって言うことが違うし、何が良いやり方なのか分からない。結局、人を育てるという意識がないんじゃないですか」 と手厳しいご意見。両者の隔たりは、かなりのものです。

「何も教えてくれない」という不満からくるストレスは、相当なものです。「そのうち慣れるから」では時間がかかりますし、「慣れる」前に辞めてしまいかねません。 教えてくれない = 育てる気がない と受け止められ、退職へと進む。優秀な人材ほど、そんな状況を憂慮して辞めていくといいます。 自分は教えてもらわなかった 新人にも教えない 自分で覚えろ という悪循環が起きていると言えます。

つまり、優秀な人材の定着には、「採用」以前の問題として、会社としての「人材を育てる」ための取り組み、環境などが整備されているのかが重要になります。こうした受け皿がしっかりできていなければ、新人採用どころか、元々いる社員にも退職されてしまいます。 社員の育成を再優先 定着率をアップさせる 自分も育てられた 新人も育てる という善循環を回すことが求められているのです。

社員と新人の定着率は、基本的には比例します。 社員の定着率がアップ = 新人の定着率もアップ 社員を育てることが、まず優先的に取り組むべきことなのです。また、社員の定着率が高いところには、新人も集まりやすくなります。 「あの会社は、人を育てる風土があるので、安心して入社できそう」 「みんな楽しそうに仕事をしている」 といった評判が広がれば、最高です。さらに、先輩社員が、 「うちの会社は、いい会社だよ」

「いろんなことを教えてくれるし、いつも勉強になっている」 などと新人に話をしてくれたら、定着率は確実にアップします。 そのためには、繰り返しになりますが、「育てる」環境、教育ツールなどの整備、仕組みが必要になります。 その最高の教育ツールが、マニュアルです。

マニュアルは、会社にとって最も良い仕事のやり方がまとめられたものです。その仕事に必要な項目と内容が網羅されています。ですから、それを学ぶことが仕事を覚える一番の近道になります。 昨今の若者は、居酒屋やコンビニなどでのアルバイトの経験が豊富です。そこでは、仕事はまずマニュアルで覚えます。

仕事を覚える = マニュアルで覚える これが当たり前の図式なのです。 数年前、ある新聞の調査で、「社会人になって、一番驚いたことは何か」という質問に対する回答のベスト 3に、「マニュアルがないこと」が入っていました。 今の若い人たちにとって、それほどマニュアルは身近な存在なのです。

それなのに、「マニュアルもなく、教えてもくれない」という状況は、若い人にはまさに「信じられない」の一言でしょう。「育てる気があるのか」と疑われてもしょうがありません。 また、マニュアルがないと、たまたま教えてくれた先輩のやり方を真似することになります。その先輩が「良い仕事のやり方」をしていればよいのですが……。 採用 ── 育成 ── 定着 ── 戦力化 人材を採用したならば、育成、つまり、教育しなければなりません。

これをしっかりやることによって、次の「定着」のステップに進みます。採用 =定着ではないのです。ここを勘違いしている経営者が多いことに驚かされます。 「育成(教育)」をしっかりすることによって、定着率はアップします。 これは会社の規模を問わずに言えることです。ですから、 採用投資より教育投資にお金をかける ことが大切なのです。 また、育成(教育)をしっかりすれば、定着率は必ずアップします。

そして、 定着率がアップするということは、採用コストが大幅にダウンする ということです。 マニュアルを核にした教育の仕組みができると、自分の成長、将来像が描きやすくなります。 つまり、自分のキャリアがデザインしやすくなるということです。これは、定着を促します。

若い人材が定着し始めると、面白いことに先輩たちの定着もさらに高まります。新しい仲間が増えることでの良い刺激があるからでしょう。逆の言い方をすれば、先輩たちが定着している会社は若い人材も定着しやすいということが言えます。これは、会社として「人を育てる文化・風土」が根づいているかどうかにかかっています。

つまり、 「人を育てる文化・風土」を作ることによって、採用もしやすくなる =好循環が生まれるということです。 これは、パートやアルバイトを多く雇用している会社でも、同じことが言えます。 私がお手伝いをした会社からも次のような声が届いています。

成果報告 3人採用したけど、誰も辞めていない(サービス業 フロント業務)採用コストが、 3割ダウンした(飲食業 人事・採用担当)先輩たちが積極的に教えてくれるようになった(接客販売 フロント業務)新人の早期受注につながった(住宅販売 営業)一番良いやり方が身についた(サービス業 接客係) マニュアルで得られる成果の2つ目は、 優秀な人材の流出が防げる──定着率のアップ、採用コストの大幅ダウン です。

人材の受け皿としての会社の基盤づくり・土台づくりに威力を発揮します。 働く人の意識が多様化しているからこそ、「誰が見ても分かる」ツールとしてのマニュアルの役割はますます拡がっていきます。

3リーダーがみるみる育つリーダーシップが発揮しやすくなる

ケース 3 ある会社の先輩社員が言うには、 「うちの社長、新人を育てろ、きちんと教えろと言うけど、何を教えればいいんだ。自分だって教えられたことがないのに、教え方が分かんないよ。この間、新人に教えたら、 Aさんと違うって言うんだ。この忙しいときに仕事も増えて、どうすりゃいいんだよ」 前述した、「仕事の基準」が明確になっていなければ、こうした問題が起こります。

「仕事の基準」が整備されていないことによる、指導する側の問題点をあげてみましょう。《指導・評価する際の問題点》何を基準にして教えていいか、分からない教える人によって、教えることが違う

教えることに、ヌケ・モレ・ダブリが出る教える準備に、手間と時間がかかる仕事の指示や評価が、抽象的になる(具体性に欠ける)仕事の評価が、主観的になる(好き嫌いで判断) また、教えられる側も、周囲の先輩たちのバラバラな仕事のやり方を見ていると、 「教えてもらった方法よりも、こっちのほうが簡単そうだ」 「結局、どの方法が最も良いやり方なのか分からない」 と不安になってしまいます。

その結果、たまたま指導してくれた先輩のやり方を真似たり、見よう見まねでやっているうちに身についた、自己流のやり方で仕事をしてしまうようになります。 さらに問題なのは、「教えてくれない」という事実、「自分でなんとか覚えた」という自負が、先輩に対する敬意を損ねかねないことです。

先輩から仕事の指示を受けても、何かの評価をされても、「自分には自分のやり方があるから」という理由で無視してしまう。平たく言えば、先輩を先輩として思わなくなる。 この先輩が管理者だとしても、同じようなことが起こります。 これでは、組織の指示命令系統は機能しなくなって、組織力が低下してしまいます。 それを防ぐには、どうすれば良いのでしょうか。 「教育担当者」「指導者」としての役割と責任を果たせるツールを与える これが1つの方法です。

「教育」を考えるうえで必要な項目とは、 ① 期待レベル(目標) ② 何を (教える項目) ③ いつまでに(教育期間) ④ どのように(教育・訓練方法) の4つです。この「何を」の役割を担うのが、マニュアルになります。 「ヒトを効果的・効率的に活用(育成)」するためには、「最も良いやり方」を教えることが、その近道になります。

つまり、「マニュアル」は最適な人材育成のツールの1つになるということです。マニュアル = マネジメントツール こういう捉え方が必要です。 これをもう少し詳しく説明すると、マニュアルによって

① 最も良いやり方を、モレなく教えられる

② 最も良いやり方を、最も良い形で教えられる

③ 最も良いやり方を、最も短時間で教えられる

④ 最も良いやり方を、最も徹底して(繰り返して)教えられる

ということです。

人材育成の成果を、最も効果的・効率的に上げられるわけです。 マニュアルを使って教育するということは、言うまでもなく、指導が具体的になる、論理的になる、さらに言えば、体系的に教えられるということを意味します。

また指導も評価も、マニュアルに基づいて実施するわけですから、何を求められているかや評価基準が明白なので、新人の納得度も高くなり、先輩や上司への信頼も高くなります。

私がお手伝いをした会社では、次のような成果が見られました。成果報告トレーナーとしての自覚が出てきた(サービス業 営業主任)指導が分かりやすくなった(販売業 サービス係長)リーダーとしての自信が出てきた(サービス業 主任)仕事の指示や評価が具体的になった(製造業 現場主任)新人との信頼関係が深まった(飲食業 チームリーダー) マニュアルで得られる成果の3つ目は、 リーダーがみるみる育つ──リーダーシップが発揮しやすくなる ということです。 マニュアルは、マネジメントツールとしてリーダーの育成に大きな威力を発揮します。

4ノウハウの共有化・蓄積ができる

属人化したノウハウは、会社の貴重な財産ケース

4 ある会社の社長が言うには、 「彼女はいつも遅くまで仕事をしてるんだけど、そんなに遅くまでかかる仕事なのか、よく分からないんです。彼女に聞かなければ分からないことも多くて、休まれるとホント困ってしまいます」 また、ある社長が言うには、 「いやぁ ー、まいりました。営業が辞めたら、顧客をごっそり持っていかれました。彼に任せて安心していたんですが、それが裏目に出ちゃって。大事なお客さんを盗られてしまいました」 さらに続けて、 「彼は非常に優秀なんです。そのやり方をみんなに真似させたいんですが、『あいつはホントすごい!』で終わってしまう。確かに、彼のやり方は独特だとは思うんだけど……」 「ノウハウが、人につく」。これはある意味で仕方がないことかもしれません。 ではなぜ、ノウハウは属人化するのでしょうか。 ① 何も教えてくれなかったので、自分で勉強した ② 「仕事」の担当範囲・役割が不明確なので、依頼された仕事は何でもした ③ 代わりがいなかったので、ずーっと同じ仕事を続けていた つまり、結果的に自分にしかできない・自分しか知らない仕事が増えていった。だから、「ノウハウが属人化」したと考えるほうが自然でしょう。 ですから、彼らを一方的に非難することはできません。 しかし、その「属人化したノウハウ」が、退職といっしょに消失したり、ほかの人には見えない状態になることは、会社にとって大きな損失です。小さな会社にとっては、それこそ経営を左右する大事件になったり、大打撃を会社に与えたりすることにもなります。 また、「属人化したノウハウ」が、ほかの人には“見えない”ということも大きな問題です。 「いつも遅くまで仕事をしている Bさんは、仕事熱心で頑張り屋さん」と思われていたとしても、何をどのようにしているのか、本当に必要な仕事なのか、誰もアドバイスも評価もできないからです。 この“見えない状態(ブラックボックス)”を放置していると、さまざまな問題

が起こります。《属人化したノウハウがもたらす問題》仕事やノウハウを囲い込む…苦労して身につけたもの、他人には教えたくないその仕事やノウハウが会社に残らない…会社の“ノウハウ”にならないノウハウの改良・改善は、その人頼み…誰もアドバイスできない、肩代わりできない仕事の評価ができない…見えないから、その仕事を誰も検証できない人事異動に障害が出る…別の人に引き継ぎができない そして、このことは、当の本人にとっても、実はあまり得することはないのです。 「属人化したノウハウ」は、言い換えれば「自己流(我流)のやり方」ということになります。 つまり、自己満足の域を出ないといってもよいでしょう。 このノウハウをさらに磨くためには、本人の頑張りや努力が必要です。壁に突き当たっても一人で解決しなければなりません。乗り越えられればよいのですが、ともすれば壁を越える前に挫折してしまい、そこでノウハウの成長はストップしてしまいます。そうすると、誰もアドバイスなどはできないので、結局これまでのやり方を繰り返すということになってしまいます。 「属人化したノウハウ」の存在は、会社にとっても個人にとっても、不利益をもたらすことのほうが多いのです。 多くの会社が抱えるノウハウの消失とブラックボックス化という2つの問題を解決するには、 属人化したノウハウを「見える化」し、みんなができるように「共有化」することが必要です。 このための最適なツールが、「マニュアル」です。マニュアルで「見える化」することによって、これが可能になるのです(「見える化」「マニュアル化」の方法については、第 3章以降で詳しく説明します)。 「属人化したノウハウ」の最高峰と言えば、いわゆるハイパフォーマー(成績優秀者)のノウハウです。 このノウハウが、「最も良い仕事のやり方」だともいえます。 「あの人は本当にすごい! あの人は別格!」 「あの人は、営業の達人だ!」 「どんなやり方をしているんだろう?」 「あのセンスは、真似できない」

やり方やスキルを学びたいけれども自分には無理だろう、というあきらめにも似た思いを持っている人も多いと思います。 「別格だ。ものが違う」と言ってしまえば、それで終わりです。 しかし、このハイパフォーマーの成功の秘訣、成果を上げるコツなどを「見える化」して、会社全体で「共有化」できれば、会社のレベルが大幅にアップします。 「なるほど、こんな方法があったのか」 「確かに、このやり方だとうまくいく」 こうした気づきや仕事の振り返りは、とても重要です。 また、仕事のやり方の「見える化」をマニュアルにまとめることによって、全員が共有化できるのはもちろん、 会社として「ノウハウの蓄積」につながる のです。 こうすることで、仮に「仕事ができる人」が退職したとしても、誰もが同じ対応ができるので、少なくても「顧客をごっそり」と持っていかれることは防げます。また、仕事のムダ・ムラ・ムリの発見・改善にも役立てることができ、「ノウハウの見える化・共有化」は、会社全体のレベルを押し上げることにもつながっています。 私がお手伝いをした会社では、成果報告困ったとき、とても役に立った(販売業 営業担当) 3人でやっていた仕事が 2人でできるようになった(不動産業 総務)良いお手本があるから、ありがたい(飲食業 接客担当)めざす目標(レベル)がはっきりした(不動産業 営業担当)スキルのレベルが上がった(サービス業 フロント) などといった声が寄せられています。 マニュアルで得られる成果の4つ目は、 ノウハウの共有化・蓄積ができる──属人化したノウハウは、会社の貴重な財産になる ということです。 小さな会社にとって、自社の「ノウハウ」をどのように見える化し共有していくか、どのように継承・発展させるかは、経営上の大きな課題だと言えます。

5全社員の理念・価値観・ベクトルがそろう

会社に一体感・統一感が生まれるケース

5 ある社長が言うには、 「うちの社員は、どこを向いて仕事をしているのか、さっぱり分からん。朝礼で理念を唱和しているけど、それが仕事に活きていない。報連相が大事だと口を酸っぱくして言っているのに、できない。ホントに大事なことが分かっていない」 かなりのご立腹である。

どんな会社にも「理念」があります。理念には、会社のトップとしての熱い思いが込められています。そして、会社が大事にする考え方や行動の規範、さらに、会社が目指す方向性などがまとめられているものです。 本来、その会社の一員になった以上は必ず覚えておかなければならないこと、日常業務の中で遂行しなければならないことです。

それが、実践できない、勝手に、自分に都合よく解釈して仕事をしている、というのは、社長としては本当に困った問題です。

なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。 それは、理念と日常業務との間が乖離している。言い換えれば、理念がお題目になっているということです。 平たく言えば、社長は「富士山に登るぞ ー!」と言っているのに、社員は「私は南アルプスに登りたい」「いや、どこかの高原のほうがいいよ」「疲れるから、登山は勘弁して」などと勝手に叫んでいるようなものです。

富士山とほかの山では、登るための装備も違いますし、心構えも違ってくるでしょう。 そもそも山に登りたくないなどというのは、スタートラインにさえ立っていないということになります。 こんなバラバラな意見が出るようでは、会社としての目標を達成することなど到底できるはずがありません。

こうした問題を放置していると、どんなことが起きるのでしょうか。会社としての一体感・統一感が失われていくまとまりがなくなり、会社としての「力」が弱まる考え方・行動・評価などの判断基準が、人によってバラバラになる商品・製品などの開発方針に一貫性がなくなる社員にとって、将来の不安が増すお客様の不信感が増大する 会社という組織は、一艘の船のようなものです。

船長の下で船員はそれぞれの役割をしっかり果たさなければ、船は進むことはできません。大きな船ならまだしも、小さな船では、嵐にでもあえば、すぐに転覆してしまいます。 つまり、船長が示す目的地を全員が理解し、目的地にたどり着くために一致団結して各自の責任を果たすことが求められているのです。

ここで大事なことは、理念と日常業務を結びつける仕組みづくりです。人は頭では分かっていても、現実の仕事の中では、忘れがちになるものです。そうさせないために理念と日常業務をつなぎ続ける仕組みが必要になります。 この仕組みには、いろいろな方法があります。経営計画づくりや人事評価制度もその仕組みの1つでしょう。

そして、「マニュアル」があります。 会社のさまざまな活動は、本来「理念」の実現・達成のために行うものです。つまり、社員全員に一丸となって「理念」の実現・達成に向かってもらうためには、「理念」を具体的な行動に落としたものが必要になります。 マニュアルは、理念を出発点として、それを実現するための具体的な行動を明確にしたもの だということができます(これについては、第 2章でくわしく説明します)。 マニュアルが、理念を具体的な行動にしたものである以上、それを学び実践する

することは、社員としての義務であり責任です。果たさなければならない役割になります。 この点を経営者はまずしっかり押さえておくことが重要です。 そして先ほども書いたように、マニュアルには、最も良い仕事のやり方がまとめられています。

たとえば、「営業マニュアル」には、お客様とのやりとりが出てきます。そして、会社の姿勢・考え方を踏まえたセリフが用意されています。このセリフを覚えることで、自然に会社の価値観が身についていくのです。行動の規範も同様です。 だから、マニュアルには、全員が必ず習得しなければならないという「強制力」が必要なのです。

マニュアル = 理念と日常業務を結びつける仕組み マニュアルには仕事に必要なことがまとめられているので、否応なく使わざるを得ない。つまり、仕組みとして、マニュアルは機能するのです。 では、理念や価値観、ベクトルがそろうことで、どんなことが起きるのでしょうか。

前述した例とは、逆の結果が出てきます。考え方・行動・判断のブレない軸ができる一体感・統一感が生まれるまとまることで、組織力が高まる商品・製品の開発に一貫性が出る会社としてのブランドイメージが伝わりやすくなる社員の仕事のキャリアビジョンが描きやすくなる一人ひとりの力、現場力が鍛えられる そして、最も重要なことは、「会社の DNAが継承される」ということでしょう。 理念のもとにまとまることは、非常に重要で、小さな会社だからこそ、特に必要だともいえます。

「まとまる」ことで、大きな力が発揮できるからです。逆の言い方をすれば、理念が不一致だと戦えないとも言えます。 私がお手伝いをした会社では、次のような声が寄せられました。成果報告多店舗化ができるようになった(サービス業)ブランドイメージが明確になった(飲食業)商品開発がしやすくなった(製造・販売業)外注化がしやすくなった(製造業)

現場力が強くなった(サービス業) マニュアルで得られる成果の5つ目は、 全社員の理念・価値観・ベクトルがそろう──会社に一体感・統一感が生まれる 「マニュアル」という仕組みの効果で、社員の一体感を生み、業務を円滑に進めることが可能になるのです。 小さな会社にとって、まずは土台づくりともいうべきことになるのではないでしょうか。

コラム小さな会社の事業承継──どう引き継ぐか── 小さな会社にとって、事業の承継は大きな問題です。代々受け継がれてきた会社でも一代で築き上げた会社でも、きちんと「相続する」ことは本当に難しいことです。

「相続」の心配事として一般的に言われることは、

①相続税をどう支払うか

②資産をどう分けるか

③資産をどう有効に残すか

、ということですが、会社経営においては、まさに「事業」の承継がもっとも重要で難しい問題です。

あるカリスマオーナーは、会社をまさに一代で優良企業に育てました。しかし、トップの高齢化は待ったなし。息子である後継者は、自分のようなカリスマ性や経営のセンスが乏しい。そこで彼が考えた方法は、「すべての業務のマニュアル化」でした。 これまで会社のさまざまなことは、すべてトップダウン。朝令暮改は、日常茶飯事。いつしか社員は、上だけを見て仕事をする、指示待ち型の人間ばかり。当然、教育制度や人事評価制度などもありません。

「人を育てる」「働きやすい環境を作る」といった発想は、正直皆無に近いので、言うまでもなく定着率は異常に低い。給料を高くすることで人をつなぎ留めておくという、まさに綱渡り的状態が続いていました。もちろん、トップの人間的魅力、経営手腕は、ずば抜けていましたので、それに心酔する人たちが頑張って会社を支えていたということになります。

オーナー企業にはよくあることですが、ビジネス人生の終わりが見えてきたとき、 「このままでいいのか」 「確かに、今は会社の業績は良い。しかし、自分が引退した後はどうなる……」 こうした不安が、一気に彼に押し寄せました。 ところが、ここからが凄い。 ヘッドハンティングしかり、さまざまな制度づくりしかり、そして、マニュアル化へと着手しました。 矢継ぎ早に、手を打ち始めたのです。

「自分がこれまでやってきたことを少しでもマニュアルにして、みんなに理解してもらおう」 この挑戦は現在も続いており、本当にさまざまな成果が出始めています。 小さな会社の事業承継は、どのようなカタチで引き継ぐのか、ということが大切です。 現状の仕事のやり方を、具体的な形にして引き継ぐ という方法がその1つです。

ここに、マニュアルは大きな力を発揮します。これによって事業の、会社の基盤が整備されることになります。マニュアル化ができれば、それをタタキ台にして、さらに改善も進めることができます。 事業承継の第一歩は、業務のマニュアル化 一度ご検討してはいかがでしょうか。

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