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成果が上がるマニュアルの作り方①

1マニュアル作成の基本 1 マニュアルに求められるもの (1)良いマニュアルとは何か その仕事をはじめてする人にとって必要な内容が過不足なく、具体的に分かりやすく書かれていなければ、マニュアルだけでその仕事を理解することはできません。

どう考えればよいのか判断できない抽象的な記述では困ってしまいます。

たとえば、次のような記述です。

合理的に判断する適切な対応をする目立つところに貼る取りやすいように置く これらは、ある会社の実際のマニュアルに書いてあった内容ですが、これを読んだ初心者は「適切な対応」や「目立つところ」が分からず、本当に困ったことでしょう。

「自分は、ここが目立つと思う」

「自分なら、 5番目ぐらいが取りやすいかな」 と自由に貼られたのでは、マニュアルの役割を果たしません。

良いマニュアルには条件があります。

《良いマニュアルの3つの条件》 ① 誰が読んでも、意味・内容が分かる ② 誰がやっても、同じようにできる ③ ほかの解釈ができない(理解が同じ) この3つは、マニュアルの品質チェックのポイントにもなります。

つまり、この条件を満たしているものが、良いマニュアルです。

マニュアルには、新人もその通りに実行すれば、先輩社員と同じようにできることが求められます。

言葉を換えれば、ある作業(行動)が同じようにできる、つまり、 マニュアルには、再現性が求められる この「再現性」が、マニュアルの重要なキーワードになります。

もしマニュアルを読んで同じようにできなかったら、それは本人の問題ではなく、マニュアルに問題があるということです。

マニュアルを理解するうえで、頭の良さ(偏差値の高さ)は関係ないのです。

たとえば、 「目立つように貼る」 という表現では、どこが目立つのかの判断が人によって分かれてしまいます。

「右上の角に、貼る」 と書くことで、理解はほぼ統一できます。

「再現性の高い」マニュアルは、ほかの解釈ができない表現であることが必要なのです。

(2)「再現性」を確実にする具体性 マニュアルの「再現性」をより確かなものにするためには、細部にこだわって具体的に示すことが必要になります。

前述した、「右上の角に、貼る」という表現を、 「右上の上から 3 ㎝、右から 3 ㎝の角に、貼る」 と、さらに具体的に書くことで、誰でも同じように貼ることができます。

つまり細部にこだわる具体性を重視する これが、「再現性」をより確実なものにするうえで、非常に重要です。

この「具体性」という言葉は、右手・左手、 ㎝・ ㎜、秒・分のレベルで捉えることまで意味しています。

言葉を換えれば、作業や行動を限りなく分解することで、「誰でも同じようにできる」ようになるわけです。

「これくらいは、できる(分かる)だろう」 という“自分の当たり前”を疑い、“具体性”を追求することでマニュアルの精度が上がり、同時に、成果を上げるマニュアルになっていきます。

しかし、このように具体的に規定すると、必ず反対意見や反発が出てきます。

「上から 5 ㎝のほうが良い」 「上からは良いが、右からは 5 ㎝のほうが良い」 「この貼り方は、目立つとは思えない」などなど。

こうした意見が出るのは、示した基準が「具体的」だからです。

「目立つように貼る」 「手で箱をつかむ」 「イスから立ち上がる」 といった表現・レベルでは、ほとんど出てくることはありません。

実は、具体的にすることで出てくるさまざまな意見ほど、貴重なものはないということです。

具体的な基準を示すことでヌケ・モレなどに気づくほかとの違いが見えてくるもっと良いやり方を工夫できるコツや知恵が出てくる見直しや改善がしやすくなる といった効果を生み、マニュアルの精度をさらにアップすることにつながります。

最も良いやり方を検討する上での、まさに貴重な情報・材料になると言えるでしょう。

つまり、マニュアルを現場に導入しても、反対意見や反発が何も出てこないというのは、見方を変えれば、マニュアルとしての「具体性」が不足している、「再現性」が劣るマニュアルということです。

ですから、 反対意見や反発を、歓迎する という積極的なスタンスが必要になります。

前述したように、マニュアルが果たす最大の役割は、「タタキ台」としての機能です。

余談ですが、以前お手伝いした会社では、マニュアルを現場に導入したところ、猛烈な反発の嵐が吹き荒れました。

「これは会社の仕事の基準です。

このやり方を厳守してください」 というメッセージを添えて出したわけですが、現場の反発は予想以上で、作成担当者から 「どうしましょうか?」 という困惑の連絡が入ったことがあります。

これは、本部の考えた「基準」と現場のそれとの乖離がかなりあったということです。

この対応としては、反対意見や反発を取材し、修正したほうが良いなら修正すれば良いだけです。

その担当者には、 「このマニュアルは非常に具体的だから、こうした意見や反発が出てくるんですよ」 と激励しました。

ただし、本音としては、反発を受けるのは正直嫌ですよね。

しかし、ここでぐっとこらえて様子を見ることが大切なのです。

後日談ですが、このマニュアルを1つの契機として、この会社の業績はまさにうなぎのぼりになりました。

(3)最も良いやり方に絞る これまで、再現性具体性細部にこだわる作業分解 などの重要性について述べてきました。

これらは「最も良いやり方」を求めるうえでの考え方・方法ですが、そこで出た「やり方」が、そのまま「最も良いやり方」になるとは限りません。

たとえば、 「確かに良いが、コストがかかりすぎる」 「誰でも同じようにできるが、時間が少しかかる」 「従来の延長線で、インパクトがない」 「こっちはいいけど、お客様(相手)にとってはどうだろう」 などの課題が出てきます。

言うまでもなく、会社の業務としては、こうした視点での検証が必要になります。

そこで、さまざまな「良いやり方」を「最も良いやり方」に絞り込む際には、次のような検討基準を設け、検証する必要があります。

《絞り込むときの検討基準》

それは、ムダ・ムラ・ムリの解消につながるのかそれは、安・正・早・楽(安全・正確・早い・楽に)の向上になるのかそれは、ミスやクレームの防止につながるのかそれは、お客様満足の向上につながるのかそれは、最も良いやり方になるのか こうした基準を設け、必要であれば実際に現場で検証して判断します。

そして、検討・検証した結果をもとに、「最も良いやり方」1つに絞ります。

これが会社としての基準、業務の基準になります。

このようなプロセスを踏むことで、「会社の基準」として、「全員が厳守すべきもの」としての価値が高まるのです。

さまざまなやり方 「最も良いやり方」に絞り込む 業務の基準 ということです。

会社(現場)には、さまざまな貴重な知恵が眠っています。

それが自己流であれ何であれ、これまでの経験のなかで培われてきたものです。

多くの人から集めた、さまざまな知恵・コツ・ノウハウを集め、集めたそれらを検討することで、「最も良いやり方」に絞り込んでいく。

こうして、これまでバラバラだった業務が、標準化できるようになります。

2 マニュアルの基本要件 (1)「 4・ 2・ 1」がマニュアルの骨格 みなさんが仕事を教える立場にいたとしたら、その対象者に何を期待しますか? たとえば、こんなことではないでしょうか。

その仕事の重要性をしっかり覚えてほしい正確に・丁寧に・確実にできるようになってほしいその仕事を早く覚えてほしい では、そのためには何が必要でしょうか。

その仕事の重要性をしっかり覚えてほしい →その仕事の目的・目標・役割などが明確になっている →その仕事をするうえでの心構えや注意点などが必要正確に・丁寧に・確実にできるようになってほしい →その仕事の手順・ポイント、所要時間が必要 →準備物や画像やイラストなどが必要 →チェックポイントやゴール(達成基準)が必要

その仕事を早く覚えてほしい →覚えやすい(教えやすい)量、方法で整理されている →見やすいレイアウトでまとめられている →繰り返し使いやすく整理されている これらの要素がすべて網羅されていると、期待に応えられる確率がぐんと上がることになります。

知識やノウハウを“形式知”にする、と言っても、何でもかんでもただ書けばよいというわけではありません。

習得しやすい(教えやすい)ものにするためには、必要な要件・ルールが必要です。

言葉を換えれば、情報整理の基本ということでしょうか。

マニュアルには、基本的な3つの要件があります。

①4つの基本要素 ②2つの視点 ③1つのフォーマット これが、マニュアルの骨格になります。

この「4つの要素、2つの視点、1つのフォーマット」が、成果が上がるマニュアルの骨格です(これらについては、第 4章でくわしく説明します)。

マニュアルづくりには、このように基本的な3つの要件と前述した再現性が必要です。

一般的な文章のテクニックや情報のまとめ方だけでできあがるものではないのです。

平たく言えば、“きれいにまとめない”ということになりますね。

(2)成果を上げる、基本サイクル マニュアルで成果を上げるためには、前述したように「作成 活用 改訂」の基本サイクルを回すことが、必須条件になります。

マニュアルを作成し、そのマニュアルを活用して業務を習得(指導)する。

そして、そのマニュアルを活用する中で気づいた修正点や追加項目などを検討して改訂する。

このサイクルを回す、回し続けることで、マニュアルの精度はどんどんアップしていきます。

その結果、マニュアルの権威は高まり、さらにマニュアルを進化させていくことになるのです。

このように、「基本サイクルを回す」ことが、マニュアルの成果を上げることになります。

つまり、マニュアルの導入とは、 作成・活用・改訂のサイクルを回すことを前提に始める ということです。

さらに言えば、マニュアルの導入とは、 作成・活用・改訂の「仕組み」を導入すること ですから、マニュアルを導入するときには、マニュアルを作成する仕組みマニュアルを使って学習や指導をする仕組みマニュアルに沿って評価する仕組みマニュアルを改訂する仕組み などの導入以降の「仕組み」についても検討しておくことが必要になります。

3 マニュアル作成 ~活用の基本 これまで述べてきたことを整理し、マニュアルづくりに関わる上での作成 ~活用についてまとめておきましょう。

《マニュアル作成 ~活用》 Ⅰ マニュアルを理解する マニュアルを作ることは目的ではないマニュアルの源泉は、企業理念マニュアルは成果を上げるためのツールであり、仕組みマニュアルは、現場の問題解決力を鍛える Ⅱ マニュアルを作成する マニュアルは文章テクニックではない目標・期待・基準を明確にする知識や情報は4つの要素と2つの視点で整理する

使いやすいフォーマットにする Ⅲ マニュアルを活用する マニュアルは決して一人歩きはしないマニュアル活用とは、「習得と徹底」によって、基準を「定着」させること習得のためのツールと仕組みを用意する徹底のために全員を巻き込んだ活動に取り組む Ⅳ マニュアルを改訂する マニュアルは改訂してこそ成果が上がるマニュアル改訂とは、定着した基準を、変化に合わせて「進化」させること改訂の仕組みを用意する業務改善活動と連動させる 4 推進体制・組織づくり (1)マニュアル導入の全体像 マニュアルを導入する場合、「何から、どのように」検討していけばよいのでしょうか。

一般的には、導入の担当者を任命して検討させていくことになります。

この担当者の任命から、広い意味での「マニュアル導入」が始まります。

「マニュアルの導入」の流れは、大きく4つに分けられます。

① 推進・構想段階 最初の仕事は、現状(実態)を調査し、問題・課題を把握することです。

アンケート調査や関係者へのヒアリングを通して、今何が問題なのか、どんな状態なのか何を改善しなければならないのか、どんな要望があるのかマニュアルの有無、活用されているのか などを把握し、整理します。

もちろん、トップの「こういう問題があるので、これを解決(マニュアル化)したい」という考えで進めていく場合もあります。

この場合でも、やはり現状の把握は必要です。

次に、現状把握をもとに、どのようなマニュアル(対象・種類・内容)をいつまでに(完成時期)作成すればよいのかを決めます。

この段階では、まだマニュアルのイメージは漠としたもので問題ありません。

そして、どのような組織とメンバーで取り組めばよいのかを検討します。

作成だけにとどまらず、その後の活用・改訂を考えて人選にあたることが必要です。

なお、外部のマニュアル専門会社を活用する場合は、この段階で打ち合わせや

見積書などを依頼するのがよいでしょう。

ここまでのことをまとめて、提案書としてトップに上申します。

《提案書の作成例》 (1)現状 ・人によって、作業のやり方がバラバラ ・ムダ・ムラ・ムリが発生している ・自己流(我流)で仕事が行われている (2)問題点 ・仕事のルールがない ・教える仕組みがない(習うより慣れよ) ・口頭での引き継ぎ・指導が中心 (3)方向性 ・会社としての仕事の基準づくりは、急務! ・テーマを絞って取り組むことが必要 ・ベテラン社員のノウハウの見える化が重要 ■ マニュアル化に向けて (1)作成するマニュアル(候補) ・レジ操作に関係するマニュアル ──対象者が多い、緊急性も高い ・お客様別の対応マニュアル ──ベテランのノウハウを会社で共有 (2)完成時期 ・ ○ ○年 ○月(スタートから 6カ月後) (3)組織・メンバー構成 ・ ○ ○部の課長 +ベテラン 3名 ・ ○ ○部のベテラン Aさん +ヒアリング・マニュアル化担当 Bさん (4)進め方 ・「マニュアル作成委員会(チーム)」を発足させて、取り組む ・ベテラン Aさんをヒアリングし、それをまとめてマニュアル化 (5)スケジュール ・ ○ ○年 ○月 ○日、社内告知後スタート (6)費用 ・外部専門会社の指導料──○ ○万円 組織の立ち上げと同時に、社内告知をします。

社内告知では、マニュアル化に至った背景を中心に説明し、マニュアル化の重要性や今後の作成活動等についての協力をお願いします。

これはマニュアルづくりに選出されたメンバーの責任と役割の重要性を自覚し

てもらううえでも、作成会議や作成時間の確保などメンバーの活動をしやすくするうえでも必要です。

実際、業務時間内での作成や活用勉強会など、他の社員に気兼ねを感じるような活動も多々あります。

会社が積極的に推進する活動・業務として、“お墨つき”を与えることは非常に重要です。

また、社内の関心を高めることによって、さまざまな提案・改善ニーズなどを集める、活用段階での協力を得られやすくするためにも、社内告知を必ず実施することが必要です。

② 作成準備段階 最初にすることは、作成委員会(チーム)の招集です。

この会合で、現状の調査結果などをくわしく説明し、全体の構想・完成までのスケジュールなどについて、メンバーとの共有化を図ります。

そして作成するマニュアルの種類・範囲、優先順位づけ、メンバーの活動・役割分担など、より具体的な内容・進め方などについて検討していきます。

外部のマニュアル専門会社を活用する場合は、この段階から参加してもらったほうが良いでしょう。

業務の体系化を図る、ということであれば、まず必要なマニュアルの洗い出しをします。

この段階では、マニュアルの体系は仮のもので問題ありません。

また、ベテラン Aさんのノウハウの見える化であれば、どんなノウハウを見える化するのか、その業務の大枠のフロー図などが整理できると、その後の活動がしやすくなります。

次に、マニュアルの形態(形状・大きさ)について検討します。

マニュアルの内容・用途によって、その形態はさまざまです。

業務マニュアルについては、 A 4判バインダー方式を推奨しています。

習得しやすい情報量が掲載でき、勉強会などでも活用しやすく、さらに、修正ページの差し替えが簡単にできる。

つまり、改訂がしやすいのがその理由です。

会社の理念・ビジネスマナーなどは、携帯型のほうが使いやすいでしょう。

いずれにせよ、その用途・活用方法によって「バインダー方式」か「小冊子方式」のどちらかを選ぶことになります。

全体は A 4判で作成し、頻度の高いものをあとで「携帯型」で編集し直す、ということもよくあります。

作成メンバーが、「マニュアル」の完成形のイメージを持って作業に取りかかるようにすることが必要です。

③ 作成・チェック段階 以降については、第 4章でくわしく説明します。

(2)作成委員会(チーム)の立ち上げ マニュアル作成に当たっては、まずどのような組織を作るかを検討することが必要になります。

作成する(したい)マニュアルの目的・種類・内容などによっても自ずと変わってきます。

会社全体に関わるものであれば、「マニュアル作成委員会」的な名称の組織を作り、関係する部門の代表メンバーを集めて発足させます。

事務局は、人事部門が担当します。

ただし、人数が多くなると、事務局の仕事も膨大で煩雑になるので、かなり強い権限と強制力を持たせなければ、運営は難しいものになります。

ある部門のマニュアル、たとえば「営業マニュアル」を作るのであれば、ハイパフォーマー(成績優秀者)を含むベテラン数名で「マニュアル作成チーム」を編成します。

また、幾つかの部門にまたがる場合も同様に、より現場・実務にくわしい優秀な人を選ぶことが必要です。

優秀な人は優れた知識やスキルを持っていますから、それをマニュアルに反映させることは「会社全体のレベルを底上げする」「会社のノウハウを蓄積する」うえでも非常に重要になります。

現場のある作業をマニュアル化する場合、その作業を主に担当しているのがパート&アルバイトだとすれば、パート&アルバイト中心の「チーム」を作ります。

そして、彼らの上司にあたる社員が必ず「チーム」の一員として参加します。

「会社の基準」としての視点が必要になるからです。

ベテラン社員やハイパフォーマーのノウハウを見える化する場合には、マニュアル化を担当する部門の人間がヒアリングしてまとめるという方法をとります。

この方法は、クリエイティブな業務や職人の技の見える化なども同様です。

この人たちは「自分がやっていることは、そんな大したことではない」という照れとも謙遜とでも言えるもの、また、「自分が長年にわたり培ってきたノウハウは、マニュアルにはならない」くらいといった意識が根底にありますから、第三者が「聞き出す」ことが重要です。

「自分がしていることを、ちょっとまとめてください」では、往々にして薄っぺらなものになってしまいますので注意してください。

《代表的なマニュアルの種類》 ① 全社的なマニュアル(多くの部門が関わって作成) 店舗運営マニュアル、販売業務マニュアル etc ② 部門独自で作成するマニュアル 総務部門業務マニュアル、 ○ ○操作マニュアル etc ③ クリエイティブなノウハウのマニュアル化 ○ ○職人の技マニュアル、 ○ ○の達人マニュアル etc 次に、「作成委員会(チーム)」の構成は、基本的には「 3名以上」が必要です。

「会社の基準を作る」わけですから、一人のやり方をそのまま「基準」にするわけにはいきません。

相互にチェック・検討し、このやり方が「基準としてふさわしいか」を判断することが必要になるからです。

人数を集めることが無理な場合は、担当者が作成したマニュアル案を、まさにタタキ台として関係者に配付し、それをもとにヒアリングをしてマニュアル化を進めることになります。

活動は、普通月 1 ~ 2回のペースで行います。

スタート時や作成の終盤などでは毎週会合を持つこともあります。

また、メンバーの中からリーダーを 1名選出します。

リーダーと事務局が協力しながら活動していくことになりますが、リーダーが事務局を兼任しても問題ありません。

この「マニュアル作成委員会(チーム)」によって、「マニュアル」の全体構想・作成実務・進捗管理・活用・改訂などが検討され実行されていくことになります。

外部のマニュアル専門会社との連携なども、この組織の重要な役割です。

メンバーの活動は長期間にわたりますが、ここに参加することで得られる経験、スキルなどは本当に貴重なものです。

「マニュアル作成」のプロセスだけでも、以下の効果が得られます。

① 日頃の業務の見直し・振り返りができる ② 新しい知識・スキル習得の機会になる ③ 論理的思考の訓練になる ④ 分かりやすいビジネス文書の書き方訓練になる ⑤ 問題解決・改善のキッカケづくり、意識の醸成になる ⑥ 周囲とのコミュニケーションの活性化につながる 重要なのは、できるだけ多くの人たちに「マニュアルづくり」に関わってもらうことです。

「自分たちが作ったマニュアル」ということで、責任も生まれますし、その後の活用、教育・訓練などにも大きく影響してきます。

「マニュアル導入」の成功は、この“組織づくり”が期待するような形でできるかどうかにかかっています。

役割・責任を明確にし、そして、権限と強制力を持たせることで活動を遅滞なく進めることができます。

(3)メンバーに対する教育 委員会(チーム)のメンバーに対する教育は、非常に重要です。

「マニュアル」に対する理解の共有化はもちろん、これによって「マニュアル」自体の品質・精度にも大きく影響してきます。

マニュアルによる成果を上げていくためには、メンバーのしっかりとした理解なしでは達成できないからです。

教育の主な内容は、 ① 「マニュアル」の捉え方(重要性・必要性) ② 「会社の基準」について ③ 業務の見直しの視点について ④ 作成方法について ⑤ 活用・改訂について などを中心に説明します。

「作成方法」については、これから詳しく説明していきますが、「業務の見直しの視点」について、次の 2点を確認しておきましょう。

① 一歩先の基準を作る ② 例外を作らない

① 一歩先の基準を作る 現状をただまとめるのではなく、一歩先の基準を作ることを強調します。

「今やっていること(やり方)が一番良い」と考えている人が大多数です。

この人たちに対して、主旨をきちんと理解してもらい、「より良いやり方・基準づくり」、つまり、業務の見直し・改善に協力してもらうことが必要です。

ただし、「とりあえず、現在やっていることをまとめる」こともあります。

これはある業務に携わっている人がその人以外いない場合、まずその人の業務を見える化する必要があるからです。

② 例外を作らない 「これは特殊(特別)だから……」「これは人によって違うから……」 「これはケースバイケースで考えるべきだ」 などと言って、マニュアル化から外すことがよくあります。

確かに、何でも「マニュアル」にできるものではありませんが、簡単に結論を出さないことです。

いかにしたら、「誰でもできる」ようになるのか、このアプローチ・姿勢が非常に大事です。

暗黙知を形式知にするのが、マニュアルの役割です。

再現性・具体性を追求することが、「会社のノウハウ」の蓄積や新しい「基準づくり」につながります。

業務の見直し・新しい基準づくりは、改善の出発点であり、 仮説 ── 実践 ── 検証 ── 修正 のサイクルを回すことの重要性を強調し確認することが必要です。

マニュアル導入に取り組む中で、さまざまな問題が次から次へと発生してきます。

メンバーに対する教育は、動機づけを含めて、必要に応じて随時行うことが大切です。

メンバーが納得して活動に意欲的に取り組んでもらうことを、第一に考えておかなければなりません。

メンバーの「やる気」が成果を左右する、と言っても過言ではないからです。

では次に、マニュアル作成の具体的な進め方について、見ていきましょう。

2テーマの選定と目標の設定 マニュアル作成の基本ステップを整理してみます。

《マニュアル作成の基本ステップ》 1 目的・狙いの明確化 2 テーマの選定 3 目標の設定 4 業務(作業)の洗い出しと整理 5 各要素の書き方の統一 6 フォーマットへの落とし込み(原稿作成) 7 チェック・検討 8 完成・配付 このマニュアル作成の全体像とステップを、まずつかんでおきましょう。

1 目的・狙いの明確化 (1)なぜ、マニュアルを導入するのか いきなり個々のマニュアル作成に入るのではなく、会社が抱える問題や仕事全体を俯瞰して、どのような問題を解決したいのか、どんな成果(効果)を上げたいのかを検討することから始めることが必要です。

「とりあえず、今やっている仕事を書き出す」という方法では、あとでマニュアルを仕組みとして大きく動かしていく際に、マニュアル全体の構成(組み立て)を検討することからやり直さなければならなくなることもあります。

また、マニュアル作成には複数の人間が関わりますので、 「フォーマットや表記方法がバラバラ」 「マニュアルのできあがりが違う」 というようなことになりかねません。

「急がば回れ」という言葉があるように、一つひとつのステップをしっかり積み重ねていくことで、効率的で効果的なマニュアルを作成できるようになります。

(2)目的・ゴール(目標)を明確にする どんな仕事を始めるにしても、その目的とゴール(目標)を明確にすることが、はじめの一歩といえます。

何のために、なぜマニュアルを作成するのかを明らかにすることは、非常に重要なことです。

【目的の例】バラバラなやり方を統一したい属人化しているノウハウを見える化したい業務の見直しをしたい(ムダ・ムラ・ムリをなくしたい)新しい機械・設備に対応したい今あるマニュアルが古い(使われていない)から会社のノウハウを整備したい引き継ぎ用のマニュアルが必要だから 目的によって、自ずとゴール(目標)は違ってきます。

「必要だから……」「上から言われたから……」では、作成メンバーの士気は上がりづらいでしょう。

これを機会に、「会社の最新のノウハウをまとめたい」というくらいの積極的な理由・意義を打ち出すことが必要です。

「目的」が明確になれば、ゴール(目標)もそれなりに見えてきます。

「目標」は、言うまでもなく、達成すべきもの、目指すべきところです。

ここでは、「何を作るか」がそれに当たります。

2 テーマの選定 (1)解決したい課題──会社(職場)の現状 先に述べたように、会社(職場)の現状を考えると、いろいろなテーマが浮かんできます。

ここでは、「どんなマニュアルを作るか」を考えてみたいと思います。

会社や職場でよくある問題として、次のようなことが挙げられます。

同じ仕事なのに、みんなやり方がバラバラ非常に効率の悪い作業の進め方をしている具体的な数値などの基準がなく、みんな自己流で仕事をしている属人化しているノウハウが多い(仕事が見えない)ミスやクレームが多い初心者とベテランとの成果(生産性、品質)のギャップが大きいその作業を覚えるのに時間がかかる引き継ぎに時間がかかり、うまく引き継ぎができない出来上がり(完成品、コスト)にバラつきが多い職場全体として仕事のスキルが未熟会社としてのノウハウの蓄積がない etc… こうした多くの問題をすべて解決するために、幾つものマニュアルを同時に作ることは物理的にも難しいことです。

そこで、目的を踏まえ、成果を考えて、実際に作るマニュアルのテーマを絞り込むことが必要です。

(2)テーマを絞り込む──「テーマ選定シート」の作成 テーマの選定は、そのマニュアル(作業)に関わる人が多いことも1つの条件にはなりますが、目的・成果を考えて選定します。

テーマの選定は、以下のステップで進めます《テーマ選定のステップ》 ① 関係者全員で、テーマをリストアップする ② 選定基準に沿って、テーマを評価し絞り込む ③ 選定したテーマに沿って、マニュアルのタイトルを決定する ④ 範囲・条件を設定する ① 関係者全員で、テーマをリストアップする まず、テーマのリストアップです。

「テーマ選定シート」を使い、関係者全員で各人が必要だと考えるテーマをリストアップします。

その際、「現在の状況、問題」を書くのではなく、どの仕事の何(業務・作業スキル)を、「今後どうしたいのか(目標・成果)」という視点で、「テーマ選定シート」の「テーマ」の欄に書きます。

たとえば、目的が「バラバラな仕事のやり方を統一したい」なら、テーマは、「 ○ ○の操作が人によってバラバラ」ではなく、 → 「 ○ ○の操作方法の統一」 目的が「属人化しているノウハウの見える化」なら、 テーマは、「 ○ ○の仕事が分からない」ではなく、 → 「 ○ ○作業の標準化(見える化)」 目的が、「作業の効率化」なら、 テーマは、「非常に効率の悪い作業をしている人がいる」ではなく、 → 「 ○ ○(作業)の均質化と向上」 などと書き出します。

これら4つの分類は、別々のものではなく、何をより重視(優先)するのかという判断材料となるものです。

たとえば、社内でマニュアルを作成し、現場に導入したとき、 「マニュアルって、効果があるな」 「マニュアルができて、助かるよ」 といった従業員の声が上がることは、非常に重要なことです。

また、 「マニュアルを作って良かった」 という関係者の体験・理解は、今後の作成・活用にも大きな影響があります。

「作って良かった」という体験・理解のためには、マニュアルの効果を明確にできる、 Cの「結果(成果)が、よく目に見える(分かりやすい)」を重視します。

結果がよく目に見える、たとえば数値的に明確になるということは、マニュアルの価値や活用の説得力を向上させることに直結するからです。

一方、3つの軸(重要度・緊急度・成果度)は、相互に関係することが多いので、内容が重複することがあります。

ここでは、優先順位をつけることが目的で、分類することが目的ではありません。

ですから、重複することについては、あまり気にすることはありません。

リストアップしたテーマを、高い: 3、普通: 2、低い: 1で評価し、その合計を出します。

各人が評価し判断した優先順位の高い(合計点数が多い)テーマをもとに、関係者全員で話し合い、1つに絞り込みます。

③ 選定したテーマをもとに、マニュアルのタイトルを決定する 次に、選定したテーマから、作成するマニュアルのタイトルを決めます。

たとえば、次のようになります。

テーマ:レジ操作の均質化と向上タイトル:レジ操作マニュアルテーマ:棚卸し業務の効率化タイトル:棚卸し(業務)マニュアル マニュアルのタイトルは、簡単に決められそうですが、テーマを踏まえて決めないと、あとで 「どんなマニュアルにするのでしたっけ?」 などと混乱することにもなりかねません。

また、「お客様満足の向上」など、抽象的で大きなテーマにしないことです。

これでは、あとで必要な項目を絞り込むことが難しくなります。

関係者全員で評価し絞り込むという選定のプロセスをしっかり踏まえてテーマやタイトルを決定する ことが重要です。

④ 範囲・条件を設定する テーマ・タイトルが決定したら、次は「範囲・条件」の設定をします。

マニュアル全体の一貫性(つながり、ストーリー)を保つうえで、また、マニュアルに引用する商品やさまざまな画像などを統一するうえで、必要な「枠組み」を決めます。

言葉を換えれば、「作成モデル」を設定するということです。

<例 > 「 ○ ○商品、価格 ○ ○円の場合」 「期間 ○年、受注額 ○ ○円のケース」 「 ○ ○を購入したいお客様のケース」 「定期レギュラー商品の開発の場合」 この設定に基づいて、業務作業の洗い出し、業務フローの整理、原稿内容(例や画像など)の検討などをしていきます。

これを決めておかないと、 「展開の仕方が違ってくる」 「やり方の選択に迷う」 「準備するものが変わってくる」 といったことが多々起こります。

あらかじめ決めておくことで無用な混乱が避けられます。

「範囲・条件」を設定するということは、マニュアルの進む(書く)方向を決める

決めることです。

ただし、この設定が必要でないテーマもあります。

ビジネスマナーや商品知識といったマニュアルには、あえて設定することはないでしょう。

これで、「テーマ選定シート」の項目がすべて決まりました。

このシートは、マニュアルづくりの前提、土台ともなるべきものです。

作成の途中で何か問題が起きたら、このシートに戻って、再確認することが必要です。

(3)選定プロセスの重要性 「どんなマニュアルを作るか」を決める選定のプロセスは、その後の作成や活用段階においても大きく影響してきます。

① 選定した「テーマ」の意義・重要性が明確になる ② テーマ(目的、目標)の達成による、成果(効果)が明確になる ③ 作成の方向性・方針が一本化される ④ 業務・作業が洗い出しやすくなる ⑤ 構成(目次)が立てやすくなる ⑥ 「活用」の方針・計画が明確になる このように、選定のプロセスをしっかり踏まえることで、作成メンバーの意思統一ができ、作成時のブレやミスなども防ぐことができます。

また、「活用」段階へもスムーズに移行できるのです。

結論から言えば、最初は取り組みやすい(量が少ない)テーマから始め、徐々にハードルを上げていくという取り組み方をするほうが良いでしょう。

繰り返しますが、簡単に決めやすいテーマやタイトルだからこそ、しっかり検討して決めることが何より重要なことです。

3 目標の設定 (1)目標(期待レベル)の明確化 目標の設定は、そのマニュアルを使うことで、どのようになってほしいのかを明確にすることです。

業務マニュアルの場合は、特定の業務や作業をできるようにすることが目的なので、その観点から整理します。

テーマとタイトルから、習得する業務スキルの目標を設定していきます。

つまり、習得(到達)する目標を決めるということです。

この習得目標は、4つの要素で整理します。

これらを整理することで、マニュアルの骨格と内容づくりが明確になります。

ただし、 ③の習得期限や ④の期待レベルは、この時点では仮のものでも大丈夫です。

実際にマニュアルづくりをしていく中で、「これは 6カ月では難しそうだ」「期待レベルが高すぎないか」などの検討、修正をすることになるからです。

です。

(2)目標シートの作成 最初に、「テーマ選定シート」をもとに、テーマ、マニュアル名、範囲・条件を記入します。

これらを踏まえて、目標などを設定していきます。

まず、期待レベル、つまり、ゴールするまでのステップ(習得ステップ)を検討します。

なんでもそうだと思いますが、一足飛びにゴールにたどり着けるものではありません。

ある業務を初心者ができるようになるためには、一般的にある一定の段階を踏んでいくことが必要です。

最終的な目標(ゴール)だけが挙げられていては、具体的にどのようにしたらよいのか見当がつきません。

そこで、「目標シート」には、最終的な目標(ゴール)を習得ステップの最後の期待レベルに記入します。

そして、それに達する前段階では、どのレベルであってほしいか、また、その前は、というように習得のステップをさかのぼって作成していきます。

このとき、テーマ、マニュアル名、範囲・条件をその都度確認し、そこから逸脱していないかをチェックしながら進めることが必要です。

このように、習得ステップを見える化することで、最終的な目標(ゴール)までのプロセスがはっきりします。

「目標シート」の内容は、現時点では仮のものとして捉えます。

後述する業務の洗い出しをする中で、習得ステップの期待レベルや習得期限、さらに習得ステップの数さえも変更になることがあります。

その場合は、その都度書き直していきます。

(3)「目標シート」作成時の注意点 「目標シート」を作成する上で注意しなければならないことは、幾つかあります。

まず、習得ステップ数は、あまり多くしないようにします。

目安としては、 3 ~ 5ステップ程度。

習得期限は、長くても 1年以内です。

それ以上の時間がかかるものは、テーマや目標設定そのものが高すぎる(大きすぎる)と考えられます。

各習得期限は、マニュアル活用(トレーニング)開始日からの必要な期間を設定します。

また、期待レベルが高すぎたり、習得期限が短すぎる、といったこともよくあります。

「このぐらいまでには、できてもらわなければ……」 「この期間で習得は大丈夫だろう」 などと、過度の期待をしたり、自分の尺度で期間を判断したりすることは、避けたほうがいいでしょう。

“当たり前”の単純な作業でも、初心者にとっては習得が難しいこともあります。

ここでも、「対象者」の視点で考えなければなりません。

一つひとつのステップを踏んで、しっかり習得してもらうということが大切です。

この「目標シート」は、後述する「業務作業分類表」とともに、マニュアル作成の骨格を決める重要なシートです。

また、この「目標シート」はその後の育成・教育の仕組みづくりにも活用しますので、無理のない「目標シート」の作成が重要になります。

《「目標シート」作成時の注意点 まとめ》テーマ、マニュアル名、範囲・条件を確認しながら作成習得ステップ数は、あまり多くしない( 3 ~ 5程度)習得期限は、長くても 1年以内習得期限は、マニュアル活用(トレーニング)開始日からの必要な期間期待レベル・習得期限は、対象者に合わせる

3業務の洗い出しと整理 1 洗い出しの手順 (1)「目標シート」をもとに、実際の業務(作業)を書き出す 「目標シート」を踏まえて、選定したテーマの具体的な業務(作業)を書き出していきます。

このとき、「目標シート」にある「範囲・条件」(モデル)を確認しながら書き出すことが必要です。

なぜなら、「範囲・条件」によっては、必要のない業務(作業)もあるからです。

また、直接的な作業ではないけれど、その作業をするうえで必要な基礎知識、心構え、基本用語、注意点などがあれば、それもリストアップします。

ポストイット 1枚に1つの作業を、どんどん書き出していきます。

(2)業務(作業)をまとめる 書き出した作業(ポストイット)を大まかな業務の固まりにまとめ、それにタイトルをつけます。

このような洗い出しの仕方は、機能的なアプローチといえます。

現実の細かな一つひとつの作業を洗い出し、共通しているものをまとめるという方法です。

もう1つの方法としては、演繹的なアプローチがあります。

日常的にしている作業であれば、大まかな業務の固まりが分かります。

それに名前をつける、つまり、仮にタイトルをつけて、そこから小さな作業を洗い出していくという進め方です。

どちらのアプローチで進めてもよいのですが、重要なのは「目標シート」を踏まえて、作業のヌケやモレがないようにすることです。

演繹的アプローチ →機能的アプローチ →演繹的アプローチ この流れで進めることが一番効率的だとは言えるでしょう。

(3)業務フローを作る 大まかな業務の固まりができたら、今度はそれを時系列に並べます。

つまり、業務フローを作ることになります。

時系列にならない場合は、習得しやすい(簡単なレベル)順、目標シートの「習得ステップ」の順に並べるなどして、業務の流れを整理してまとめます。

1)時系列に並べる 2)習得する順番に並べる (4)業務内容を細分化する 業務の流れを整理したら、次に一つひとつの業務内容をロジックツリーを使っ

てさらに細分化していきます。

細分化する際には、モレやヌケ・ダブリがないか同じ階層で情報のレベルがそろっているか上位層と下位層の因果関係はあるか などを注意点としてチェックします。

たとえば、 業務を洗い出し、整理していくということは、業務を体系的に整理していく作業でもあり、業務の見える化ともいえる作業です。

整理していく中で、本来すべき業務なのに割愛されていたり、属人化している業務なども洗い出しておくことが必要です。

《洗い出しの手順》 ① 「目標シート」を踏まえて、実際の業務(作業)を書き出す ② 業務(作業)をまとめる ③ 業務フローを作る ④ 業務内容を細分化する この「洗い出し」の作業は、実際にどんな業務があるのかを見える化することがポイントです。

見える化することで、不足している項目や新しく追加する作業なども浮き彫り

になります。

「洗い出し」は、マニュアルづくりのはじめの一歩と言えるでしょう。

2 「業務作業分類表」の作成 業務の洗い出しができたら、次に「業務作業分類表」の作成に進みます。

「業務作業分類表」は、先に説明した「目標シート」とともに、業務や作成するマニュアルの全体像を俯瞰できる一覧表です。

この表は、マニュアルづくりの土台ともなる、非常に重要なシートです。

検討を重ねていく中で、項目が増えたり、項目の入れ替えなども頻繁に起こったりするので、表計算ソフトで作成すると良いでしょう。

マニュアルづくりは、この表に従って作成していくことになるので、この表の精度いかんによっては作成が迷走する、作成がストップするといった事態も起こります。

この表の精度が、まさにマニュアルの精度を左右することにもなります。

以前マニュアル作成をお手伝いした会社では、項目の半分ほどを作成したところで、「何かおかしい、この構成で良いのか」といった疑問が出て、再度この表

を全面的に見直しました。

《「業務作業分類表」づくりのステップ》 ① テーマ、マニュアル名などを記入する ② 洗い出した業務(作業)を、大・中・小項目で整理する ③ 習得する順番(時系列、優先度)に、大・中・小項目を並べ替える ④ 業務の基本(概要、心構え、用語など)を項目として追加する ⑤ 中項目ごとに、小項目の頭に番号を記入する ⑥ 通し番号と担当者名を記入する ① テーマ、マニュアル名などを記入する 「目標シート」をもとに、テーマ、マニュアル名、目標、範囲・条件、習得期限をまず記入します。

今後の作業において、常にこれらを意識して、表(項目)を検証していくことが必要になります。

時に、方向違いの項目や目標以上に難易度が高い項目が追加される、あるいは項目の選定に悩むことが起こります。

そうしたときには、これらを再確認して、その項目は適切なのかを判断しながら進めることが大切です。

次に、作成日の記入です。

この表を作成し始めた日から、実際にマニュアルの作成中に至るまで、何度もこの表は修正することになります。

作成日はその都度必ず記入し、更新ごとにデータが混乱しないように十分注意して扱います。

表計算ソフトを利用する場合、更新するたびにシートを増やしていくようにすると良いでしょう。

② 洗い出した業務(作業)を、大・中・小項目で整理する 業務の洗い出し、細分化したものを、大・中・小項目に落とし込んでいきます。

この大・中・小項目の内容は、前述したようにマニュアルを作成していく中

で、入れ替えるなどの変更が出てきます。

ロジックツリー作成の注意点で説明したように、一覧表として俯瞰して見れば、モレ・ヌケ・ダブリや情報レベルのバラつきなどが見えてくるときもあります。

たとえば、「掃除」は常に大項目ではなく、内容が少ないようであれば、中項目になることもあります。

逆に、「玄関」という中項目の量が多いようであれば、大項目に格上げすることもあります。

また、 Aという項目と Bという項目は、一緒に説明したほうが分かりやすければ、2つを1つにすることも起こります。

こうした入れ替わりなどは、内容を掘り下げ、俯瞰して見ることで気づくことが多いものです。

③ 習得する順番(時系列、優先度)に、大・中・小項目を並べ替える 「目標シート」と照らし合わせ、業務の全体を俯瞰して、業務の優先度を検討したり、習得する順番を並び替えたり、追加・削除を繰り返しながら、「業務作業分類表」を変更していきます。

ところで、項目を検討していると、 「これは覚えてもらわなければ困る」 「これは絶対に必要な項目だ」 などと、あれもこれもと盛り込みたくなります。

しかし、マニュアルを作成する側と受ける側とでは、当たり前ですが、その業務の理解度は違います。

作成する側の必要条件と受ける側の十分条件、つまり、必要十分条件で内容や習得期限を検討することが重要になります。

マニュアルの基本要件のひとつである「2つの視点」、お客様の視点と対象者の視点(初心者や新人などでその作業をする人)を踏まえて、内容を検討しなければなりません。

自分が新人のときを思い出しながら、考えることが大切ですね。

●マニュアルに盛り込む内容は、「目標シート」を踏まえて、必要十分条件で検討する ①業務の習得必要性(優先順位) 習得期限内に習得する必要があるのか 習得するタイミングは、どの時期がよいのか ②業務の習得可能性 習得期限内に習得できるのか 難易度は高すぎないか ③習得業務(項目)の量

絶対量として多すぎないか こうした視点で検討することで、大・中・小項目やその順番などが大きく変わることもあります。

しかし、対象者の習得度合いを向上させ、成果が上がるマニュアルを作る上で、これは重要な作業だと言えるでしょう。

「業務作業分類表」の作成で、よくある問題例を紹介します。

大・中・小の整理ができていない、項目が大きすぎるなど、図で紹介した問題は、業務の洗い出しや細分化をしっかり実行していれば解決できることばかりです。

「マニュアルの原稿を早く書き出したい」という気持ちも分かりますが、ここは焦らずに、「急がば回れ!」ではないですが、まずは「洗い出しの手順」通りに確実に進めることが何よりも重要です。

④ 業務の基本(概要、心構え、用語など)を項目として追加する ここまでのプロセスで、具体的な作業はおおむねリストアップされたはずです。

しかし、マニュアルとしては、それだけでは不十分です。

業務の初心者にとっては、作業の羅列だけでは分からないことがあります。

たとえば、その作業をするうえでの心構えなどです。

つまり、業務や作業を洗い出した後、その作業の重要性、担当する上での心構え、その作業が業務全体のどの部分に位置するのかなどを補足していく必要があります。

また、必要な基本知識、特に基本用語などは説明しておいたほうが、その後の作業が習得しやすくなります。

具体的には、大項目ごとに、中項目に「 ○ ○(業務名)の基本」と記入し、その小項目に業務の概要、心得、基本用語などの項目を追加します。

これらが加わることで、いわゆる「機械的な作業マニュアル」ではなく、その作業の目的や重要性などが初心者にも理解できるようになります。

また、1つの大項目で、中項目の数が多く( 5項目超)なった場合には、その業務(大項目の業務)全体が一目で分かるように、小項目に業務フローという項目を追加します。

⑤ 中項目ごとに、小項目の頭に番号を記入する 次に、中項目ごとに、小項目の頭に番号をつけます。

番号は、 ①から始めますが、 10個を超えた場合には、新しく中項目を立てたほうがよいかどうかを検討します。

また、この番号は、小項目の習得順の確認などにも使います。

実際のマニュアル原稿は、この小項目ごとに作成していきます。

その意味でも、非常に重要な番号だと言えます。

⑥ 通し番号と担当者名を記入する 「業務作業分類表」の大・中・小項目が固まったところで、通し番号と担当者名を記入します。

通し番号は、全体のボリュームを把握する……習得期限内での習得の可否の検討実際の原稿の「作業名」に記入して、「業務作業分類表」との連動を図り、

図り、間違いがないか、モレがないかなどを確認する原稿の中で使用する写真や図表などを指定する際には、この通し番号に枝番をつけて使う など、非常に重要な番号です。

通し番号は、大項目の順番に沿って、小項目の一つひとつに振ります。

この小項目の通し番号が、マニュアルの最小単位になります。

この通し番号は、大項目の 1に連なる小項目は 001 ~ 099、大項目の 2に連なる小項目は 100 ~ 199と決めます。

つまり、大項目ごとに百の単位で番号を振っていくことになります。

なお、一度振った通し番号は、原則として最後まで変えません。

前述したように、この「業務作業分類表」は、原稿作成中にも何度も修正・変更が入ります。

画像などに振った番号をそのたびに修正していては、間違いや混乱が生じてしまいます。

ですから、小項目が追加された場合には、大項目の最後の番号以降の番号をつけます。

また、ある小項目をカットする場合にも、その番号を欠番扱いにして、その旨を備考に記入します。

そうすることで追加や欠番が一目で分かります。

次に、担当者名ですが、実際に最初に原稿を作成する人(担当者)の氏名を記入します。

マニュアルは会社(職場)の仕事の基準ですから、担当者が書いた原稿をそのまま「仕事の基準」にすることはできません。

複数の人によるチェックや修正、承認のプロセスを経る必要があります。

つまり、担当者は、原稿を作成するだけではなく、その原稿を複数の人にチェックしてもらい、修正が入ったものをさらにまとめて原稿にしていくという役割も担っています。

原稿を作成する担当者が、その原稿に関する責任者となります。

これまで、「業務作業分類表」づくりについて見てきました。

ここで、再度「作成のステップ」をまとめておきましょう。

3 「業務作業分類表」の更新 次に、「業務作業分類表」を更新する際の注意点をあげます。

項目の増減や並び順の変更などがあった場合には、これまで説明してきたルールに従って、その都度、「業務作業分類表」を更新します。

更新は、既存のデータに追加して行います。

その際、表計算ソフトを使っている場合は、既存データに上書きするのではなく、「業務作業分類表」のシートをコピー&ペーストして新しいシートを増やし、それに加筆・修正をして更新していきます。

そして、新しいシートには、最新の日付を入れます。

最新の日付のシートが、常に最新の「業務作業分類表」になるように、シートを更新していきます。

シートのコピーと更新日の記入は、ともすれば忘れがちになり、それが混乱の元になります。

更新時には必ずシートをコピーして更新日を記入しましょう。

《「業務作業分類表」の更新の際の注意点》上書きして修正せずに、コピーしたシートのほうで修正する「業務作業分類表」には、必ず作成日(更新日)を記入する最新の日付のシートが、最新の「業務作業分類表」になるように更新する

する 4 「業務作業分類表」で確認できること これまで何度も「業務作業分類表」の重要性については説明してきましたが、「業務作業分類表」で確認できることを、ここで整理しておきましょう。

《業務作業分類表で確認できること》 ① 業務・作業の全体像俯瞰して見ることで、ヌケやモレなどに気づくことができる。

全体像が見え、マニュアルの完成イメージがはっきりする。

業務と作業の区分が明確になり、全体量(項目数)が確認できる。

② 作業の優先順位や習得順「目標シート」との連動により、期待レベルに必要な項目がはっきりする。

「目標シート」との連動により、習得項目数や習得期限の適切性が検証できる。

③ 原稿作成作業の担当者原稿責任者が明確になり、チェック・修正の対応がしやすくなる。

原稿の図表・添付資料の確認などがスムーズにできる。

④ 作成状況の確認作成の進行状況がはっきり分かる。

作成日を確認することによって、最新の作成状況が掴める。

⑤ マニュアルの目次大項目は「章」、中項目は「節」、小項目は「項」になる。

目次のタイトルが明確になる。

「業務作業分類表」は、マニュアル作成において必要不可欠です。

何度も修正を繰り返す中で、マニュアルの骨格がしっかりして、マニュアルの全体像をはっきり掴むことができるようになります。

ひいてはマニュアルの精度が高いものになり、マニュアルの完成度が上がります。

何度も繰り返しますが、「急がば回れ!」。

まずはこの「業務作業分類表」によって、マニュアルづくりの土台を固めましょう。

コラムマニュアルは簡単に作れる、できる? 「ちょっと今のやり方をまとめてくれない? 君が一番仕事を知っているわけだから……」 こんな感じでマニュアルづくりを頼まれるケースが意外に多いようです。

確かにベテランであれば知識や経験は持っていますが、「話すのは得意だが、書くのは苦手」という人がいるように、業務に精通している人 =マニュアル作成者、と単純にはいきません。

もちろん、知識や経験をマニュアルにしていくわけですが、それは持っている当事者が直接書くのではなく、取材やインタビューなどで当事者の知識や経験を聞き出す方法もあるわけです。

ところが往々にして、書き手になってしまいます。

「マニュアルって、どう書けばいいんですか?」 「今の仕事を順番に、できれば箇条書きで分かりやすく書いてね。

頼んだよ。

」 「分かりやすくって……どう書くんだ?」 こんな場面が想像できます。

自分が当たり前にやっている毎日の仕事

を、他人が読んでも分かるようにまとめるということは、なかなか大変なことです。

結局、ズラズラと文章だけの「マニュアル」になったりします。

もちろん、なかにはフローチャートや図などを利用して、精一杯“分かりやすい”ようにまとめる人もいることでしょう。

ただ、その“分かりやすさ”が読み手の“分かりやすさ”になっているのかどうかが問題です。

「マニュアル」を書くという作業は、自分の頭の中を整理するうえで、非常に役立つ。

それはその通りです。

ここで問題にしたいのは、その整理、つまり、「マニュアルは、簡単にできる」という思い込みです。

「ないより、あったほうが良い」 「これをもとに、改良していけばいいから」 などとは確かに言えますが、スタートの時点できちんとした「マニュアル」に対する認識、少なくても「マニュアルにする」作業の大変さは理解しておいてもらわないと、作成する側はたまったものじゃありません。

「何がちょっとだ。

こんなにしんどいのに……」と泣きが入ります。

書きっぱなしで終わってしまったり、書いた本人しか分からないものができたりしては、もともこもありませんね。

「マニュアル」は、使う相手のことを意識して作らなければなりません。

相手が使いやすい(理解しやすい)ように工夫することが必要になります。

その認識がないものは、日記の類であり、まさに自己満足の産物だといえます。

くわしいこと =良いもの、では決してありません。

また、くわしいこと =具体的なもの、でもないのです。

このあたりのところを錯覚している人が、意外に多いように思います。

「マニュアルは、簡単に作れる」。

まずこの思い込みを捨てることが大切です。

そう簡単には「マニュアル」は作れない、のです。

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