はじめに 2019年に出版した『最高の結果を出す KPIマネジメント』(フォレスト出版)は、おかげさまで 9刷を数え、すでにベトナム語版が出版され、 2020年には中国語版も出版の予定です。「この本を読むだけで KPIの本質が理解できた」「実践できた」という声をたくさんいただきました。 本当にありがとうございました。 また、 1年間で 30回ほどの企業、組織から KPIに関しての講演や KPI作成支援の依頼もいただきました。業種も規模もさまざまです。 IT、教育、旅行、流通、物流、人材ビジネス、化学メーカー、広告代理店、エンターテイメント、設備器機メーカー、サービス業、税理士の団体、公認会計士の団体、中小企業の支援団体、新聞系イベント、市役所などです。 規模もさまざまで、一部上場企業から従業員 100名以下の企業までありました。支援の対象も、会社全体の話もあれば、特定の事業や新規事業の立上げなどいろいろでした。「すでに KPIマネジメントをしているのだけれど、うまくいかないので何とかしたい」という会社もあれば、「今から KPIを本格導入したい」という話もあれば、「経営者は KPIを入れたいと考えているけれど、現場が反対しているので、説得してほしい」というかなり難易度の高いものまでありました。 変わり種は市役所です。市長、副市長、市の幹部の方々と「市の人口を増やす」をゴールに KPI設定の考え方を講義しました。幸い、同市は人口が増加し始めました。 この 1年の活動を通じて、 KPIマネジメントは、ほぼすべての組織で活用できる可能性が高いことを実感できました。 そして、さまざまな組織、団体と KPIについてディスカッションをする過程で、うまくいかないケースに共通する問題点も見えてきました。 大半は、想定通りのポイントでした。ですので、講演・ワークショップ、 KPI作成支援の中で、解決できる問題でした。そして、どこを深く説明し、よりシャープにすると分かりやすく、より実践的になるのかというポイントも分かってきました。 それらの学びを受けて、本書『最高の結果を出す KPI実践ノート』では、今から KPIマネジメントをスタートする、あるいは改善したい企業、個人の両方に対して、より実践的な内容に仕上げることができました。 最初の DAY 1から順番に読んでいけば、自社、自組織の KPIマネジメントがスタートできるような実践的な構成にしました。 DAY 1から DAY 5まで、ちょうど 1日ずつ読んで、 1週間で習得できるつくりになっています。 前作『最高の結果を出す KPIマネジメント』を読んでいない方向けに、 DAY 0に KPIマネジメントの概要もまとめました。 前作を読んでいただいた方は、復習として読んでください。 それでは、さっそく始めましょう。
contentsはじめに
Day 0 KPIマネジメントの勘どころ
KPIの定義をおさらい
Day 1 MC 4確認のためのワークショップ
やってみると分かる「 Goal」「 KGI」の不統一
Day 2 KPIマネジメントのステップ
事業シナリオを描く手順
Day 3 CSFの見つけ方とその事例
KPIマネジメントに応用できる「制約条件理論」
Day 4 ケーススタディから学ぶ KPIマネジメント事例集
事例 ❶ 成約課金型ビジネス
事例 ❷ グループの戦略 IT子会社
事例 ❸ サブスクリプション・モデルのビジネス
事例 ❹ 大手物流業
事例 ❺ 自動車販売会社
事例 ❻ 大手建設会社
Day 5 KPIマネジメントの体制と進め方
管理会計としての KPIマネジメント 共通理解と用語の統一 MC 4確認ワークショップで現状を把握する Goalと現状とのギャップで進め方を決める 進捗管理をグループコーチングで実施する 【付録】 KPIマネジメント実践シートよくある質問おわりに
KPIの定義をおさらい 「KPIとは何ですか?」 私が「 KPIマネジメントの講義」の冒頭で毎回する質問です。よくある典型的な回答は、以下のようなものです。 「KPIとは売上や利益のこと」 「KPIは数字で管理すること」 「KPIは事業を数字で見ること」 みなさんもこう思っているかもしれません。 しかし、残念なことに、全て不正解なのです。 KPIは Key Performance Indicatorの 3つの頭文字をとったものです。そして、 Key Performanceと Indicatorの 2つに分けると意味が分かりやすくなります。 Key Performanceは「事業成功の鍵」。そして Indicatorは「数値」あるいは「数値目標」です。 つまり、 KPIは「事業成功の鍵」の「数値目標」のこと。「事業成功の鍵」は何なのかを明確にして、それを「数値目標」として設定するのが KPIです。ちなみにこの「事業成功の鍵」を CSF( Critical Success Factor)と呼びます。 KFS( Key Factor for Success)、 KSF( Key Success Factor)と呼ぶ方もいますが、意味は同じです。 本書では CSFと呼ぶことにします。
重要な主役は 4つ KPIマネジメントを実行する際、 KPIと CSFに加えて、あと 2つ重要な主役がいます。それは Goalと KGIです。 Goalは、文字通り「事業のゴール」です。そして KGIは Key Goal Indicatorの 3つの頭文字をとったもの。つまり、「事業のゴールの数値目標」です。 一般的には、期末や 3年後に「利益〇億円」などという目標設定がされています。この「利益」にあたる部分が Goalです。そして、「〇億円」が KGIにあたります。つまり「 Goal」「 KGI」と「 CSF」「 KPI」という 2組、合計で 4つの主役( Main Character)がいるのです。 事業の最終ゴールの数値目標である KGIを達成するための成功の鍵が CSFであり、それを数値目標にしたものが KPIという関係になります。 つまり、 KPI目標を達成していれば、最終的に KGI(最終的な目標数値)も達成するということになります。そして、当たり前ですが、 KPI目標が未達成であれば、そのままでは KGIも未達成になります。 なぜわざわざ、こんな当たり前のことを書いているのか。 KPIマネジメントとは、 KPI数値から KGI(最終的な目標数値)の見込みを予想し、対策を講じることです。 KPI数値がよい時は問題ありません。しかし、 KPI数値が悪ければ、対策を講じる必要があります。そのためには、 KPIは KGIの「先行指標」である必要があります。 先行指標とは、事前に分かる指標ということです。 たとえば、 1年後の期末時点の利益が KGIである場合、期初数か月目の KPI数値で、期末時点の利益が予想できるとします。このように KGIの状況が早く分かれば分かるほど、よい KPIだということになります。なぜならば、早く分かれば分かるほど、対策が必要な場合、対策にあてる時間が多く残っているからです。
KPIは「信号」なので 「1つ」でなければならない 私は、よく KPIマネジメントを交差点の信号にたとえることがあります。自動車を運転しています。交差点に差し掛かります。信号を確認して、そのまま進むか、停車するか判断します。 赤信号なら停止、青信号ならそのまま進むという具合です。青信号は KPI数値がよい状況です。赤信号は悪い状況です。黄信号はよくない兆しだということを示しています。 当たり前ですが、信号は交差点に入る前に見えないと意味がありません。交差点に入ってから信号が見えて、それが赤信号だとわかっても交通事故になるかもしれません。つまり、 KPIの数値は信号と同じく事前に分かる必要があるのです。 信号のたとえは、他にも KPIマネジメントの特徴を表しています。信号は 1つですよね。交差点には自動車用、歩行者用など複数の信号がある場合もあります。しかし、自分がチェックすべき信号は 1つです。 KPIマネジメントでも同じです。
一番弱い箇所を強化するのが KPIマネジメント 後で詳しく説明しますが、これは重要なポイントです。 さわりだけ説明すると、 KPIマネジメントは制約条件理論に基づいて実施します。制約条件理論は、そのビジネス活動の最も弱い箇所に着目し、そこを強化するという考え方です。 そして、その弱い箇所が強くなれば、次に弱いところを強化し、順々に弱い箇所をなくしていくと、結果としてビジネス全体が強くなるという考え方です。 その時に一番弱い箇所こそが「 CSF(事業成功の鍵)」なのです。 交差点の信号のすごいところは、運転手も歩行者もすべての人がルールを知っていることです。 KPIマネジメントも同じです。 KPIを経営者だけ、あるいは経営企画メンバーだけが活用するのでは、その効能の一部しか使えていないと言えます。すべての従業員が KPIを意識し、定期的にチェックし、 KPIが悪化したら、いち早く対策を検討し、行動することが重要なのです。 さて、これで KPIマネジメントの概要についてお伝えすることができました。 それでは、まず 4つの主役( Main Character)について考える Day 1をスタートしましょう。
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