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「共通の言語」「共通の認識」「共通の道具」を持つ

目次

企業文化とは会社の取り組みの積み重ね

本章では、強い企業文化をつくるための3つの共通化についてご説明します。企業文化とは、創業以来積み重ねてきたあらゆる取り組みの結果です。

序章の樹木の話を思い出してください。会社の評価を決める業績は、樹木でいえば、もっとも目立つ「花」「実」に当たりました。きれいな花や、実がたわわになるには、樹木が大地にしっかり根を下ろし、太い幹から四方に枝が伸びて葉がたくさん茂っていることが条件です。

この「枝」「葉」に当たる要素が、会社の文化です。強い企業文化という枝や葉があってこそ、美しい花や美味しい果実がなるのです。強い文化の会社が、花や実を採れるのは、リーダーが正しい判断ができるからです。

マーケットには、お客様とライバルしかいません。近年、お客様のご要望、ライフスタイルは実に複雑化しました。ライバルも、日々変化します。このような状況の中で正しい判断をするためには、「現場」を見、「現場」の社員に話を聞かなくてはいけません。自分が現場にいた頃の感覚で判断をしては、誤った判断をしてしまう可能性が高いのです。

わが社の社員は、半期に一度開催されるアセスメントの場で、小山に進言します。進言前に、ドキドキしている社員と、このような会話をすることがあります。

「あなたの意見は、お客様の声と日々の現場での仕事がもとになって生まれたよね」「はい」「あなたと小山さんでは、今のお客様、最新の現場の情報を持っているのはどっち?」「わたしです」「じゃあ、自信を持って正しい小山さん孝行をしてらっしゃい!」そうすると彼らの発言の迫力や説得力が明らかに違ってきます。

結果として小山も、「うーん」と言いながら、「今はこんな風になっているのか」と決済するのです。多くの経営者やベテラン幹部の方々が根本的な過ちをおかして盲進してしまうのは、この原理原則を無視または軽視するからです。

社長の小山や武蔵野をご存じの方は、強烈なトップダウンの印象が強いと思います。しかし、小山が強烈なトップダウンができるのは、強靭なボトムアップがあるからなのです。

では、このような強い企業文化をつくるためには何が必要なのか。それが、共通化です。

会社の文化を構成する3つの共通化

企業文化の強さを左右するのが「共通化」です。リーダーがどれほど素晴らしい方針を立てても、社員の心がばらばらで向いている方向が違うのでは話になりません。

共通化を図ることでリーダーの方針が正しく伝わり、適切に実施されていきます。強い文化をつくりだすために共通化するのは、次の3つです。

①共通の言語

②共通の認識

③共通の道具

この原理原則を教えてくださったのが、私や小山が学び、そして、わが社の創業者である藤本とも深いご縁があった、渥美俊一先生です。

共通の言語を持つ

まずは「共通の言語」です。リーダーは決定した方針を言語で発表します。つまり、言語についての共通化が図られていないと、社員一人ひとりで受け止め方が変わってしまいます。

一人ひとりが違う解釈で行動しますので、ひいては社員の心が分散し、成果を挙げることができません。言語の共通化が進むと、会社の質が変わったことに気づくはずです。

それまでいちいち確認しなければならなかったことが少なくなり、仕事の効率化が進みます。クレームも残業も減り、社員の顔はどんどん明るくなります。

こういった事実を実感すれば、積極的に言語の共通化を図ろう、という文化が生まれるのです。言語の共通化とはどのようなものか、例を挙げて、解説しましょう。

たとえば、あなたにとって「愛」とは何であるかを考えてみてください。私が、セミナーなどでこの質問をすると、返ってくる答えは「思いやり」「慈しみ合い」「ひたすら耐えること」と、人によってまちまちです。セミナーであれば、それでも構いません。しかし、これが会社になると少々やっかいです。

たとえば、社長が「これからは愛の経営をするぞ」と宣言したとしましょう。AさんはAさんなりに愛を解釈して、ひたすらお客様の罵声に耐える営業をする。Bさんは同僚を思いやる仕事をする――。そうすると、社内のリソースが分散して、虻蜂取らずの結果に終わってしまいます。つまり「愛」をキーワードに経営をするのなら、大前提として愛の何たるかを定義し、周知徹底しなくては意味がないのです。言語の共通化なくしては、どれほど立派な方針が立てられても会社は強くなりません。その都度、言葉の意味を説明していたのでは効率が悪すぎます。

したがって、日頃からあらゆる機会を利用して言語の共通化を徹底する必要があります。武蔵野では、毎朝「早朝勉強会」という会を実施して言語の共通化を図っています。使用するテキストは、社長の小山の著作である『仕事ができる人の心得』(阪急コミュニケーションズ)です。これは武蔵野で使うビジネス用語のうち1277ワードを抜き出して、小山の解説を加えたものです。ちなみに『仕事ができる人の心得』では、「愛とは、関心を持つこと」と定義されています。共通化された言語をたくさん持つほど、会社には強い文化が形成されるのです。

頻度が高く、誰でも知っている言葉から始める

言語の共通化が必要だと言っても、すべての言語を共通化することはできません。言語の共通化を図るには、まず社内で使う頻度の高い言葉から始めるのが現実的です。そして、一見、誰でも知っている言葉から始めることです。自社の現場を見て、必要最低限の言葉から共通化していきましょう。たとえ1語でも構いません。ゼロはいくら足してもゼロのままです。1つでも始めた会社は、理想ばかり追って何もしない会社に対して確実に差をつけていきます。たとえば、「整理」「整頓」の2語を例に考えてみましょう。子どもの頃から、耳にタコができるほど聞かされてきた言葉だと思います。ところが、「整理」「整頓」それぞれの意味となると案外知られていないのが現実です。「整理・整頓と言っても、整頓・整理と言わないのはなぜか」という問いに答えられる人はそれほど多くありません。「整理」とは、捨てることです。必要な物と不必要な物とを分け、徹底的に捨てることです。一方「整頓」とは、いつでも、誰でも使える状態を保つことです。物の置き場を決め、向きをそろえ、仕事がやりやすい環境を整え備えることです。必要な物とそうでない物が混在しているのでは、仕事がしやすい環境を整えることなどできるはずがありません。つまり、まずは整理ありきなのです。だから「整頓・整理」ではなく、「整理・整頓」と言うのです。このような言葉の意味を共通化せずに、「整理・整頓をしましょう」といくら言っても、結果は出ません。成果につながらないことはやがて形骸化し、誰もやらなくなるのが普通です。整理・整頓のように、一見誰でも意味を知っていそうな言葉ほど、理解に温度差が出がちです。リーダーの言葉が社員に伝わらない、上司の指示を部下が守らない、それは言語の共通化が徹底されていないことに起因しているケースが意外に多くあります。長年連れ添った夫婦の会話が、「おい、あれ取ってくれ」で通じるのは、言語の共通化の完成形とも言えます。しかし会社は定期的に人が入れ替わりますから、意識的に言語の共通化を進める必要があります。

「これくらいはわかっているだろう」「もう覚えただろう」は大変危険です。人は忘れる生き物です。しかも、その忘れ方には、個人差があります。となると、対策は1つしかありません。徹底しコツコツ続けることです。全社員が「もうわかりました」と声をそろえても、徹底的に共通化を図らなければなりません。武蔵野では、先述のように早朝勉強会などで、『仕事ができる人の心得』といったテキストを活用して、絶えず言語の共通化を図っているのです。▼頻度が高く、誰でも知っている言葉から徹底的に共通化する

共通の認識を持つ

次は、強い企業文化をつくるための「共通の認識」についてお話しします。目の前で起きた事実をどのように認識するかには、大きな個人差が出ます。事実の認識の仕方が異なるのは、人間なので当たり前です。しかし、会社でそれは許されません。武蔵野ではクレームがあったら、とにかく一刻も早くお客様のところに顔を出さなければいけない、という共通認識があります。経営計画書には、次のように書かれています。「お客様への第一報は30分以内とする。スピードで当事者と上司がお詫びと事実確認に行く。当日中にお客様の前に顔を出すことが大事です。対策は後でよい。」多くの会社では、クレームが発生すると、まず対策から考えるようです。「こう謝罪しよう」「同じ失敗をしないためにはどうしたらいいだろうか」といった具合に、です。ですが、クレームとは、「こういうことをしてはいけない」というお客様からの教えです。ですから、武蔵野は「こういうクレームがあった」という情報をボイスメールで全社員が共有します。そして、近くにいる社員が飛んでいきます。その上で初めて「同じ失敗はしないようにしよう」という認識も共有しているのです。対策はそれからで十分です。さらに言えば、そのお客様から対策を教えていただくのが最上の対応です。かつて私は信州のホテル経営に携わっていました。ホテルは、武蔵野のような物販業・サービス業とは比較にならないくらい大量のクレームが発生する業種です。このときの共通認識は、「大部分のお客様は金銭的な慰謝がほしいのではなく、こちらの不手際で傷ついた心を癒してほしいと願っているだけである」ということです。この共通認識を持っていれば、たとえ、クレームが起こっても、従業員の対応によって、お客様の心は満たされ、継続してご利用いただけるのです。クレームという非常事態に対し、このような共通認識を持っている会社は強い企業文化を持っていると言えるでしょう。クレームに対する認識が共通化されているか否かで、貴重なお客様を失うかどうかが決

まるのです。認識の共有化も、原理原則に即していないものでは、企業文化を加速度的に弱くします。最悪なのは「クレームは隠すもの・ごまかすもの」という認識です。その結果、クレームをないがしろにする文化ができあがります。隠蔽の文化も一朝一夕に形成されるものではありません。創業以来、長い年月をかけてでき上がったものです。その末路がどうなるかは、近年の「偽装」「隠蔽」の結果を見れば明らかです。第1章で、我々社会人は、お客様によって生かされていると述べました。生殺与奪の権を握っているのはお客様なのです。この原理原則に即してない共通認識ができると、企業文化はどんどん弱くなっていきます。強い企業文化をつくるために、共通の認識を持ちましょう。そして、その認識は、第1章で紹介した原理原則に即したものになっているか、常に確認することが大切です。▼原理原則に即した共通の認識を持つ

共通の道具を持つ

ここまでお読みいただいた方は、お気づきでしょう。武蔵野では、共通の言語を持つために、「早朝勉強会」『仕事ができる人の心得』が、共通の認識を持つために、「経営計画書」や「ボイスメール」が活用されていました。言語や認識の共通化を図るには、「道具」が必要です。そして道具自体も共通なものになっていなければ意味がありません。全員が共通の道具を持っているから、言語と認識の共通化が簡単に図れるのです。「整理・整頓」の意味を共有化するために、おのおのが自分の好きな道具にメモをしていたら、ある社員は「手帳のどこにメモしたかわかりません」と探すのに手間どったり、別の社員は「メモしたノートは、ロッカーに置いてきました」と手元になかったり、ということがありえます。これでは、スムーズに共通化することはできません。武蔵野の早朝勉強会では、「はい、今日は、経営計画書35ページ」と始まります。だから、全員が共通の言語・共通の認識を持てるようになるのです。また、ボイスメールを持っている人と、持っていない人がいたらどうなるでしょうか。全社員に急ぎの情報を届けるためには、一斉同報でボイスメールを送ったあと、ボイスメールを持たない人の携帯電話にいちいちかけるか、連絡網で分担しなければなりません。それでは、手間がかかり、億劫になってしまいます。「これくらいはいいか」という気持ちが出て、共有化できるものが減ってしまう可能性があります。さらに、重要な情報を全員が聞いたかどうかの確認も、同じ道具を使っていれば簡単です。武蔵野が使っている共通の道具をいくつかご紹介しましょう。私が、小山と出会ったのは1987年9月、一倉定先生の経営計画書作成ノウハウのセミナーでした。私がホテル経営に携わっていた頃のことです。経営、現場の仕事、従業員教育……当時、私が心配していたこと、不安に思っていたことを、小山はたった3つの道具で解決していました。それが、手帳サイズの経営計画書、行動予定表、そして経営用語解説集(現『仕事ができる人の心得』)です。

そのうちの1つ、年間行動予定表は、多くの会社にあります。しかし、通常のそれは、月ごとに予定を記入するものに対し、小山の予定表は4週を1セットにして組んでいました。一般の予定表は1カ月単位です。しかし、会社の業務は週単位で進んでいきます。であれば予定表も週単位になっているのが合理的です。特に私が働いていたレジャー産業の場合、週末が5回ある月と4回ある月とでは売上も大きく違ってきてしまいます。経理作業をはじめとする各種業務にもかなりの波が出ます。しかし、4週単位にしておけば、そんな面倒なことにはなりません。4週単位の年間予定表という道具の共有化によって、現場の仕事も経営管理も劇的に楽になりました。先述の『仕事ができる人の心得』(阪急コミュニケーションズ)は、一〇万部を大きく越えるベストセラーになりました。当時、私の勤務していたホテルは長野県内ではそれなりの規模にはなっていました。しかし、しょせんは叩き上げの中小企業です。世には一流とされる有名ホテルがたくさんある。そういうホテルが近隣に進出してきたらどうなるか。そんな危機感を、私は常に抱えていました。中小企業が大資本に拮抗して勝ち残るためには、全従業員が心を1つにして業務に当たるより他はありません。ですが、部下に「頑張りなさい」と鼓舞したところで、「頑張るとはどういうことか」という定義が共有されていなければ、彼らはどう頑張ったらいいのかわからないでしょう。結果、めいめいが勝手な解釈で頑張ることになり、戦力が分散してしまいます。これでは強力なライバルが現れたら到底勝ち残れません。このように用語集をつくって内容を定義し、そしてそれを基にきちんと社員教育を施せば、そんな心配は大きく減らすことができます。こうして私は、駆け出しの経営者だった頃、小山に見せてもらった道具にとても救われました。現在の武蔵野では、他にも、「ボイスメール」や「サンクスカード」、あるいは大和信春先生や南後浩先生の教えを基につくった「未来対応問題解決シート」「実行計画書」など、さまざまな道具があり、全社員共通のものを使用しています。詳しくお知りになりたい方は、『経営の見える化』(中経出版)など、小山の著書を参

考になさってください。▼「共通の言語、認識」をより共通化させるために「共通の道具」を持とう

道具を持つことを目的にしてはいけない

ここまで、強い企業文化をつくるために、共通の言語と認識を持ち、そのために共通の道具を持つ必要性を述べてきました。道具を揃えるにあたっては、少々注意が必要です。多くの方が、道具と目的を混同してしまうのです。たとえば、わが社の代表的な道具に「経営計画書」があり、「経営計画発表会」があります。経営計画発表会は、社長以下全社員に、文化を支える言語と認識を、より共通化させるための大変重要なイベントです。しかし、経営計画書という道具を持つことは、目的ではありません。経営計画発表会というのは、企業文化をより強くするための手段、方法の1つです。道具はあくまでも道具です。道具をつくると、目に見えるので達成感があります。しかし、経営計画発表会を開いたから会社は大丈夫、などと考えてはいけません。繰り返しますが、会社の存亡を決定されるのはお客様です。お客様が判断の根拠とするものは、あくまでも「現実」「現場」「現物」です。「この会社は経営計画発表会を開いたから大丈夫」「経営計画書が充実しているから安心」と考えるお客様はいらっしゃいません。どれほど感動的な経営計画発表会を開催したとしても、薄汚れた店舗といった「現場」で、くたびれた商品といった「現物」や、ろくに挨拶もしない現場の社員の「現実」を露呈している会社をお客様は選びません。そのまま素通りしてライバルのもとへ行ってしまいます。豊かな企業文化の醸成は必要不可欠です。そのために、共通の道具はなくてはなりません。しかし、お客様の判断材料になるのは、直接感じることのできる「現実」「現場」「現物」なのです。道具をつくることを目的にしないでください。共通の道具によって、最終的にお客様が判断の根拠とされる「三現」という事実を充実させることに意義があるのです。道具をつくって安心してしまうのは、大変危険です。ことさら「道具」は勘違いを引き起こしがちです。

道具は道具であることを意識していただくために、もう1つ例を出したいと思います。武蔵野の経営計画書です。小山と私が経営計画書の作成を学んだ一倉定先生は「経営計画書は会社の魂のようなものだから、きちんとした装丁でつくりなさい」と指導されていました。小山の経営計画書は手帳サイズです。この手帳サイズの経営計画書は、携帯性に優れ、気軽に読み返すことができます。経営計画書は自社を良くするための道具であり、そして道具は使わなくては意味がありません。道具をつくることが目的になっていたら、この工夫は生まれなかったでしょう。小山のセミナーに出席されたことのある方の中には、「オリジナリティを加えようとするな。なにも考えずにそのまま真似しなさい」というのをお聞きになったことがあると思います。誤解のないように補足すると、小山は一倉先生の教えを5年以上も真似した上で、自己流の工夫を加えました。ハンディになりましたが、中身は20年以上たった今でも一倉先生の教えに基づいて作成されています。道具と目的を混同しないよう気をつけましょう。道具は、あくまでも、「現実」「現場」「現物」の三現を充実させるためにあるのです。▼道具は、「現実」「現場」「現物」の三現を充実させるためにある

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