50プロ秘書は浅くてもキレイな「お辞儀」をする 社内で同僚とすれ違う際の軽い挨拶から、初対面の相手との名刺交換まで、秘書の日常にはお辞儀がつきものです。とはいえ、自分がお辞儀をしている姿はなかなか自分で見ることはできません。改めて「お辞儀」と言われると、キレイにできている自信がない人も多いのではないでしょうか。プロの秘書は、自然に美しいお辞儀をします。 一般にお辞儀には、頭を下げる角度で一五度、四五度、九〇度の三種類があるとされています。一五度のお辞儀は「会釈」と呼ばれるもので、同僚との軽い挨拶や、お客様とすれ違う際などに使います。四五度は「敬礼」と言って、深々とお辞儀をした状態です。お詫びをする際や相手に感謝の気持ちを伝えたいときに使います。九〇度のお辞儀は「最敬礼」です。一般にはあまり使いませんが、皇室の方など非常に身分の高い相手に対して、敬意を込めて行います。 このなかには含まれませんが、仕事中によく使うお辞儀は、三〇度の「中礼」です。実際にお辞儀をしている姿を鏡に映して確認してみるとわかりますが、仕事中に行うお辞儀はこの角度が多いのです。あまり深々と頭を下げられても、相手も恐縮してしまいます。ただし、メリハリをつけることは大事です。「頭を下げる」という表現はしていますが、実際には頭だけを下げるのではなく、背筋を伸ばした状態でゆっくりと腰を折るのです。そして、頭を下げきったらピタリと止める。そしてまた、ゆっくりと頭を元の位置に戻し、目線も相手に向けます。この「止め」と「アイコンタクト」があることで、メリハリのついた美しいお辞儀になるのです。 角度だけを聞くと少し浅いように感じるかもしれませんが、作業をしながらの挨拶は、「会釈」よりも簡単な「目礼」になっていることが多いものです。頭を下げる角度は一〇度くらいで、一瞬目線を下げるだけ。意識しないとなかなか下がらないのが私たちの頭です。お客様に対しても、忙しさのあまり、ながら動作になってしまい、うっかり「目礼」で済ませている可能性もあります。「自分は大丈夫かな」と心配になった人は、ぜひ一度鏡の前で自分の姿を確認してみてください。背筋が伸びていなかったり、顎を前に突き出すようにしたりして、相手に失礼な印象を与えるお辞儀をしているかもしれません。 名刺交換の際は、お辞儀だけでなく、その後のアイコンタクトも重要です。名刺を受け取ると、頭を下げた状態で名刺ばかりを気にしてしまい、相手の顔を見ていない人も多いのです。しかし、名刺はあくまでもネームカード。相手の分身で大切なものではありますが、主役は名刺を渡した本人です。名刺を受け取ってサッと名前を確認したら、相手の顔を見ましょう。相手の視線が戻ってくる瞬間を逃さずに目を合わせ、そのままの状態で「 ○ ○様ですね。よろしくお願いします」と言うことができれば、心理的には相手をお迎えしたこととなり、一歩リードといえます。相手に感じがよい印象を残すことができるでしょう。 名刺交換は、秘書にとってある意味戦いの場ともいえます。というのも、お客様がどのような方か、名刺交換をしながら判断する場合もあるからです。名刺をやりとりする一瞬で相手を理解し、判断して、次の瞬間には「あいにくですが、不在にしておりまして……」とお断りしなければならないこともあるでしょう。だからこそ、名刺交換の場で心理的に相手を迎え入れる余裕が必要となるのです。 場面に合わせた美しいお辞儀とアイコンタクトで、相手の心をグッとつかんでください。 □名刺交換は、秘書にとってある意味戦いの場である
51プロ秘書は自分の個性を消せる 秘書になると、どんな服装をすればいいのか、どんなメイクがいいのか、髪型は……と、男性よりも身だしなみの選択肢に広がりがあるぶん、女性のほうが迷うことも多いでしょう。簡単なのは、外見の印象を残さないよう努めることです。プロの秘書は、自分の個性を消す方法を知っています。 これまで何度も、「相手に良い印象を残す方法」についてお話ししてきたので、「印象を残さないことが大事」と言われると、不思議な感じがするかもしれません。もちろん、「笑顔がステキだった」「話していて楽しかった」「気持ちのいい対応をしてくれる人だった」という、自分の本質に対しての良い印象を残すことは大切です。一方、「お洒落な服を着ていた」「凝ったネイルだった」「派手なメイクだった」という感想は、メイクや服装など見た目に強い印象が残ったということです。その状態はすでに、着飾った個性が前に出すぎているということ。もう少しメイクをナチュラルにしたり、服装を落ち着いたテイストのものに変えるなど、第三者の目を意識して着飾った個性を消していかなくてはなりません。 基本的に、ビジネスシーンでは会社のルールに則り、その範囲で身だしなみを整えます。身だしなみを整えるといっても、お洒落をするという意味ではありません。お洒落はある意味個性であり、一種の自己主張。ビジネスシーンではある程度イメージングをして、違和感なく周囲に溶けこむように「身だしなみを整える」のです。たとえば、壱番屋は飲食業なので、ネイルは厳禁。男性に関して言えば、ヒゲも厳禁です。髪の色は黒か自然なダークブラウンで、長ければまとめる。メイクはナチュラルメイクと決まっています。そして、何より大切なのは、清潔感のある健康的な見た目であること。飲食業だからこそ特に気になる部分ではありますが、これはどんな業界にも共通する理想像でしょう。 勘違いしてほしくないのですが、お洒落をしないということは、手抜きをするという意味ではありません。疲れているように見えるほどメイクが薄かったり、余裕がないように見えるほどいい加減な服装をしていたりしては、先ほどとは逆の意味で違和感が残ってしまいます。特に秘書は、他社の重要なポストの方にもお会いする立場なので、外見的にもメンテナンスの行き届いた状態であることが望まれます。そこで一番強く意識してもらいたいのが、手先、毛先、足先。人が一番気にするのは「先」なのです。清潔感のある爪、キレイにまとめられた髪の毛、きちんと手入れされた靴。服装よりもメイクよりも先に、この三点だけはきちんとメンテナンスをしましょう。 最大の褒め言葉は、お客様から「笑顔がステキな人だったね」と言われることです。本質の印象が残るようなイメージングに努めてください。 □メイクよりも先に、手先、毛先、足先を意識する
52プロ秘書は「メイク」を引き算で考える ビジネスシーンで理想的なのは、清潔感があり、健康的であることです。メイクや髪型、ネイルは、それらを演出する助けになります。 基本的に、メイクはどこまでもナチュラルに。徹夜明けなど疲れの見える日は、いつもより少し明るい色の口紅を塗ったり、チークを足したりして、元気で健康的な印象を演出するといいでしょう。最近の若い方はメイクに慣れていて、高い技術を持っているので、どちらかと言えば「やりすぎた部分をマイナスにする」作業が必要です。たとえば、マスカラを塗りすぎない、長いボリュームのあるつけまつげを付けない、上下のまぶたにアイラインを塗りすぎないなど。流行りのメイクの影響だと思いますが、特にアイメイクが濃すぎる場合が多いように感じます。とはいえ、今のメイクに見慣れていると、そのなかのひとつでも取ることで、「地味になりすぎてしまうのではないか」と不安に思うかもしれません。自分の顔には本来どんなメイクが必要で、一番健康的に見えるのはどのようなメイクなのか。それを知るためにも、基礎的なメイク講座を受けて、参考にしてもいいかもしれません。 髪型に関しては、企業によって色も長さもルールがあるので、一概には言えませんが、秘書は年配のお客様とお会いする機会も多いので、いろいろな世代の方にも受け入れられるように、明るすぎず、ナチュラルな髪色で整えたいものです。カラーリングをしている場合は、髪がのびて生え際が目立つ状態になることがないよう、定期的に美容院へ行ってメンテナンスをしましょう。また、秘書にはお客様にお茶をお出しするという仕事があります。清潔感を保つためにも、ボブよりも長ければまとめたり、お辞儀するときに顔にかかって邪魔にならないよう、前髪をピンでとめたりする必要があるでしょう。 どこの企業にもあまり明確なルールがなく、一番気になるのがネイルです。お客様にお茶をお出ししたり、書類を差し出したりする動作では、常に指先を見られています。爪を清潔感のある長さに整えるのはもちろんのこと、カラーリングをするのであれば、手がキレイに見える色を選んでください。一般的に、肌の色がオークル系の人にはオレンジ系の色が似合い、色白の人にはピンク系の色が似合うとされています。ネイルサロンに行けば、色合いの相談にも乗ってくれるのでしょう。個人的には、フレンチネイルかおとなしい色にしておくのが、秘書のネイルの許容範囲だと思っています。ここでもやはり、主張しないデザインを選ぶようにしてください。 メイクや髪型、ネイルにおいて、「感じよく見えるもの」と「流行りのお洒落なもの」は一致しません。オンとオフを切り替えるくらいの気持ちで、ビジネスシーンにふさわしい身だしなみを整えましょう。 □「感じよく見える」と「流行りのお洒落」は一致しない
53プロ秘書は社風に合った「ワードローブ」をつくる 秘書としてどんな服装をすべきなのか。制服がないならば、毎日同じ服を着るわけにもいかないので、一度テイストを定めたら、それに従って買い揃えていかなくてはなりません。ある程度お金のかかることでもあるため、メイクやネイル以上に考える人も多いようです。 服装に関しては、「秘書として」という視点より、社風や業界に合わせていくのが正しいと思います。たとえば、テレビ関係や出版関係など華やかな職場なら、流行りのファッショナブルな服装でもいいでしょう。ゲームや映像を作るような職場なら、動きやすさや快適性を重視して、かなりラフな服装をしていても問題ないと思います。逆に、役所関係や金融機関などいわゆる堅い職場なら、お客様に安心感を与えるためにもあまり派手な格好は望ましくありませんし、スーツを着る場合も三つボタンを選ぶべきだと思います。要するに、職場の雰囲気に違和感なく溶けこめる服装をすることが大切なのです。 ただし、カジュアル、セミフォーマル、フォーマルの違いなど、ファッションに関する基本的なマナーは知識として押さえて、いざというときマナー違反を犯すことのないように準備しておきます。秘書がパーティの席で浮いてしまったりすると、上司や、ひいては企業の信用にも関わるからです。 また、服の色や形を選ぶ際には、謙虚に自分の体型や顔立ちを見つめ直します。たとえば、ぽっちゃり体型の人は、タイトなシルエットの服を着るより、体型をカバーできるワンピースを着たほうがよいかもしれません。窮屈な服は、動きにくいうえに、第三者から見てもとても苦しそうに見えてしまいます。自分のイメージに合う色や体型に合ったデザインを勉強するのもおすすめです。本来の顔立ちや肌の色によって人に与えるイメージがありますが、選び方によっては服装がその補完的な役割を果たしてくれるのです。たとえば、寂しげな顔立ちの人が無地で淡い寒色系の服を着ていると、相手には積極性に欠けるおとなしい印象を与えます。しかし、人に与えたいイメージに合った淡い明るい色合いの服を着ると、少し明るく華やかな印象を加えることもできるのです。 アクセサリーに関しても、基本的には服装と同じ考え方で、職場のルールと雰囲気に合わせます。ただし、イヤリングとピアスは、受話器に当たるとカチカチという不快な音を立てるので、耳たぶの中に収まる小ぶりなデザインのものを選びます。秘書にかぎらず、電話対応が多い職場では、気をつけたほうがいいでしょう。 自分の好きなテイストと違う服装をしなくてはならないことに、不満を感じる人もいるかもしれません。しかし、それはスムーズに仕事を進めるために必要なことなのです。仕事中だけ着なくてはいけない制服のようなものだと思えば、いい意味で諦めがつくでしょう。また、服装はアクセサリーひとつでガラリと印象が変わります。アフターファイブに予定がある日は、華やかなアクセサリーやスカーフを職場に持参して、就業時間後にプラスすればいいのです。仕事から離れた時間は、ひと工夫して個性を発揮し、お洒落を楽しんでください。 □服の色や形を選ぶには、謙虚に体型や顔立ちを見つめ直す
54プロ秘書は視線を「肩のライン」に外す 目というのは、口ほどに物を言います。「アイコンタクト」という言葉があるくらいで、目を見れば「何か話したいことがあるのだな」とわかったり、「今、怒っているな」と相手の胸の内を察したりすることができるのではないでしょうか。そのため、目の動きを意識することは、コミュニケーションをとるうえで重要なポイントなのです。 そもそも、目の動きが脳の動きと連動していることは、脳生理学で明らかになっています。意識しなければ、生理的な反射として自然と動いてしまうものなのです。たとえば、右利きの場合、過去の記憶を手繰り寄せようとして、脳が何かを「思い出す」作業をしている場合、視線は左に動きます。逆に、何かをクリエイティブに考えて、脳が「創造する」作業をしている場合、視線は右に動きます。ただし、脳の機能が逆になる左利きの人は、視線の動きも真逆になります。 面接や商談、プレゼンなど、緊張する場面ではどうしても視線が泳いでしまい、一点に定まらないという人もいるでしょう。これは脳が活発に動いている証拠なのですが、視線が右へ左へと泳いでいると、焦って考えている状況をさらしているようなもの。落ち着きのない印象を与えないためにも、人と話すときはできるだけ視線を動かさないよう努めたほうがいいでしょう。さらに緊張状態が高まると、人は上を向いて視線を外そうとします。しかし、視線を上に外すとどうしても顎が上がり、「うん?」と疑問を感じているように見えるのです。また、視線を下に落として外す人もいますが、上下に動く目線は落ち着きなく自信なさげに見えるので、ビジネスの場では控えたほうがいいでしょう。 とはいえ、話をする際の基本のように言われる「相手の目をじっと見て話す」という状態は、見つめられすぎると思いのほか居心地の悪いものです。実際、自己主張の激しい、押し出しの強い性格だと思われてしまうようです。そこで、普通に話すときはほんの少し目線を外すのですが、自然に見えるのは相手の肩のラインまで。ネクタイの結び目、という表現もあります。そのラインであれば、「だいたい顔を見ている」ように映り、失礼にはなりません。また、何かを考えて視線が泳ぎそうになっても、肩のラインでグッと踏みとどまれば、焦りを悟られることも少ないのです。商談をするとき、説明の最中は書類や商品に視線を外し、「いかがでしょうか」とアピールするポイントではグイッと相手の表情、目を見ます。視線を合わせるタイミングと外すタイミングでメリハリをつければ、「目で語る」ことができるのです。 視線の動きをコントロールできるようになれば、話していて「感じがいいな」という印象になり、商談中に「この提案に自信があるのだな」と思わせることもできます。特に、目の印象が強い人であるならば、なおさら心をこめて相手に目線を送り、心にコンタクトしていきましょう。 □視線をコントロールして、心にコンタクトする
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