01後輩に自信をもたせる
フィードバックされることで、後輩は自信をつける
上司・先輩は、後輩に自信をもって仕事に取り組んでほしいと願っています。そのために、トレーニングしているといっても過言ではないでしょう。
しかし、必要なマインドやスキルをトレーニングで伝えれば、すぐに後輩が自信をもって仕事に取り組めるようになるかというと、そういうわけにもいかないようです。
後輩たちが自信をもって仕事に取り組めるようにするには、トレーニングを行うこと以外に、何が必要なのでしょうか。その答えのひとつとして、私は「フィードバック」をあげたいと思います。
たとえば、ディズニーの場合であれば、パークで、自分の行動に対して、ゲストから笑顔が返されたとき、あるいは「ありがとう」とお礼を言われることによって、「私のやったことで、ゲストに喜んでいただくことができた。私は正しかったんだ」と、自分の仕事に対して自信をもつことができます。
これは、ゲストからのフィードバックによる効果です。
つまり、自分の仕事に対してよい反応が返ってきたとき、自分の仕事の正しさを実感することができたとき、後輩たちは自信をもつことができます。
それが、後輩のさらなる成長につながることはいうまでもありません。
上司・先輩、同僚も、フィードバックすることが大切!
一方、ゲストと接することのないキャストの場合はどうでしょうか。
たとえば、コスチュームを保管し、貸し出すキャストは、バックステージが仕事場です。整備部のキャストがボートなどの点検をするのは、閉園後ですから、ゲストからの反応はありません。夜間清掃を担当するナイト・カストーディアルのキャストも、同様です。
いずれもゲストと接する機会はなく、ゲストの反応に期待することはできません。では、彼らは、どうして自信を得ることができるのでしょうか。
それは、上司や先輩、あるいはオンステージで働くキャストたちが、フィードバックしてくれるからです。
「コスチュームをきれいにしてくれて、ありがとう」「おまえ、最近頑張ってるね。すごいよ」こういう反応を返してもらうことで、バックステージのキャストも自信をもつようになっていきます。
もちろん、フィードバックが、いつも「ほめ讃える」ような内容のものばかりとは限りません。
しかし、上司・先輩が、「頑張ってるね。でも、ここはもう少し改善しよう。それができればバッチリだよ」とフォローすれば、「見てくれている」という気持ちが働くので、後輩のモチベーションが下がることはありません。
自信をつけるのが少し先になるだけの話です。とにかくマメにフィードバックすることが後輩の自信につながります。
02後輩に「スモールステップ」をもたせる
大きな目標を立てても、失敗の可能性大!
たとえば、子ども時代に、「イチローみたいになるんだ」というように高い目標をもつことは、とてもよいことです。はじめから無理と決め込んでしまえば、可能性の芽を摘むことになります。
しかし、後輩たちが現にいま取り組んでいる仕事の場合は、あまり高い目標を立てても、「目標倒れ」に終わる公算が大です。
もちろん、高い目標や理想は必要でしょうが、「それを実現するためには、いま何を目標にして頑張ればよいのか」を考えることが大切です。
第3章でもふれましたが、実現可能な小さな目標、つまり「スモールステップ」を立て、それを達成していく――それを積み重ねていくことこそ、後輩を成長させる〝近道〟にほかなりません。
身近な上司・先輩こそ、最適のサポート役
たとえば、はるかに高い地位の上司、あるいは抜きんでた実力をもつ先輩から、何かを教えられても、「ちょっと理解しづらいなあ……この人だからできるんだろうな」という思いが先に立つ可能性があります。
その人を超えてやろうなどという気には、とうていなれません。また、そういう存在が、はたして教えられる側のことをどれだけ理解しているかも疑問です。
その点、身近な先輩や上司は、後輩自身のことも、後輩が取り組んでいる仕事のこともよく理解しています。ですから、後輩たちも教えられることがスムーズに頭に入ってきます。
「この人のようになりたい」という気も起こります。ディズニーのトレーナーのほとんどがアルバイトという理由のひとつは、そういうところにあります。
職場の上司・先輩のアドバイスは、後輩にとって説得力があるものです。後輩が目標を立てて仕事に取り組むときは、積極的に後輩をサポートしましょう。
ただ、後輩の自立を妨げるような行動は慎まなければなりません。ときには、あたたかく見守るという姿勢も必要になるでしょう。
ですから、サポートが必要かどうか、事前に確認することも大切です。
スモールステップに挑むディズニーのキャストたち
ディズニーのキャストたちは、職場のなかでユニークなスモールステップをつくってチャレンジしています。
▼たとえば、かつて、カヌー探険のキャストたちは、アメリカ河をどれだけ速く回ることができるかを競う「カヌーレース」を行っていました。
それで自分たちの操舵技術を高めていました。
▼劇場型のアトラクションのキャストは、いかに滑舌よく時間どおりにナレーションを入れることができるかを競い合っています。
▼カストーディアルのキャストたちは、ゴミをとるという単純作業でも、より安全性を高め、美しく、速くという技術を進化させるためのステップアップにチャレンジしています。
驚きなのは、これらのスモールステップは、いずれも、トレーナーをはじめとするアルバイトのキャストたちによってつくられたものだということです。
彼らの高いモチベーションが、自発的な〝しかけ〟をつくることにつながっているのです。
03後輩に自立のチャンスを与える
ディズニーの後輩を自立させる「しくみ」
後輩に向かって「早く自立してくれよ」と切望する上司・先輩も多いことでしょう。
ところが、そういう上司・先輩に限って、後輩にあれこれと口出しをして、自ら後輩の自立の芽を摘みとっているケースもあるようです。
後輩を自立させるには、上司・先輩が後輩の自主性を尊重する姿勢・器量をもつことが必要です。
ディズニーでは、前述したように、現場の先輩アルバイトが、後輩アルバイトの研修やトレーニング、指導にあたるというしくみがあります。
このしくみがつくられた理由として、次の2つをあげることができます。
ひとつは、先輩アルバイトは、現場の仕事についてはもちろん、後輩についても、よく知っているということです。
ですから、現場のいろいろな「生の情報」を後輩に伝えることができます。
また、後輩にしても、同じ現場の先輩ということもあり、より真実みをもって話を聞くことができます。
もうひとつは、ディズニーには、トレーナーなどの仕事をしてみたいという人材が多い、ということです。
以上の点をふまえて、会社も、アルバイトがアルバイトを指導するという、ほかではあまり見られないユニークなしくみを採用しています。
特に、導入研修――新人研修を、現場の先輩キャスト、それもアルバイトが担当するようなしくみは、ほかでは見られないのではないでしょうか。
この導入研修を担当する現場のキャストを「ユニバーシティ・リーダー」と呼びますが、その自立している先輩を見て、「先輩のようにユニバーシティ・リーダーになりたい」と思う後輩も少なくありません。
つまり、このしくみが後輩の自立をうながす面でも、効果を発揮しているわけです。
ディズニーの後輩の自主性を尊重する「風土」
トレーナーの自立、主体性に関して、もうひとつ例をあげてみましょう。
トレーナーの大きな役割として、後輩キャストのトレーニングがあります。トレーニングを行うには、当然きちんとトレーニング・カリキュラムを組んで行う必要があります。
実は、このカリキュラムを組んでいるのも、トレーナーなのです。自分たちでパソコンを活用して、カリキュラムをつくって、それに従ってトレーニングを行っているのです。
また、トレーニングを行う際には、補助教材としてマニュアルを用います。このマニュアルにも、トレーナーの意見が反映されています。
つまり、「ここは、こう変えたほうがいい」というトレーナーの意見によって、マニュアルも改訂されていきます。
なぜ、このようなことが可能かというと、会社はもちろん、上司や先輩が、トレーナーたちの自主性を尊重し、自由に考え行動できる裁量を与えているからです。
もちろん、採用されない、認められないケースもありますが、細かいことにいちいち口を出すことはほとんどありません。実際のところ、このような風土でなければ、社員も自立し、成長することはできないでしょう。
ただ、上司・先輩も、基本的な方向性やルールについては、しっかり見ています。
たとえば、行動方針や行動指針を守っていないようだと、カミナリを落とします。その後、すぐにまた、やさしい上司・先輩に戻るのですが……。
いずれにしても、ディズニーの強み・素晴らしさは、アルバイト1人ひとりに至るまで、リーダーシップをもち、自主的・主体的に仕事に取り組んでいることにあります。
そして、それは、会社や上司・先輩が、ホスピタリティ・マインドをもち、後輩を上手に指導し育てたからこそ、実現したということができるでしょう。
上司・先輩が、この本でご紹介したように後輩に対応すれば、間違いなく「後輩は変わる。後輩は育つ」のです。
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