Chapter1 9割の社長は、本当の仕事をしていない!!──ガーバー流「仕組み」経営の本質──
01社長が忙しい会社は、絶対に成長しない
多くの経営者が「経営者の仕事」をしていない
高橋さんはイタリアンレストランの経営者。
料理の専門学校を卒業し、大手ホテルのレストランなどで、8年間にわたり料理人としてのキャリアを積んできた。その後、知人の店を譲り受けるかたちで、28歳のとき独立。
現在、従業員8人を抱えてレストランを切り盛りするオーナーである。高橋さんの1日を見てみよう。
12時間以上の労働時間はもちろんのことだが、高橋さんの働き方には、経営者として大きな問題がある。
あなたはお気づきだろうか?そう、高橋さんには「経営者の仕事をしている時間」がほとんどないのだ。
あなたが必死に働いている限り、零細企業を抜け出せない
それでは経営者の仕事とは何だろうか?それは、大小にかかわらず、新しい事業を生み出すこと。または、そのための準備をすることだ。より具体的に言えば、紙と鉛筆を持って頭に汗をかいて、アイデアを絞り出すことである。
しかし、多くの経営者はその時間を取ろうとしない。目の前にある仕事をただやり続けるだけなのだ。
事実、高橋さんのイタリアンスレストランでは、1日でも高橋さんがいなければ店は回らないだろう。ほかの中小企業も同様である。
社長が必死に働き、目の前の仕事をバリバリとこなしている会社は、ある一定以上の成長を遂げることができない。また、業務の大半を社長が背負っているため、社長が倒れた瞬間に仕事が回らなくなる。
その結果、多くの零細企業が潰れていくのだ。これらはひとえに、社長が「社長本来の仕事」をしていないことに端を発している。
02マイケル・E・ガーバーを知っていますか?
ベンチャー企業は「5年以内に8割以上」が倒産する!?
「毎年100万以上の会社が生まれるにもかかわらず、1年以内に40%が、5年以内に80%以上が姿を消す」これはいまから25年以上前のアメリカのデータである。
しかし現在のアメリカはもちろんのこと、現代日本でもほとんど大差ないというのが現実だろう。
もっと正確にいうと、会社を潰すのにもコストや手続きが必要になるので、幽霊会社になる例も少なくない。「実際には1年で半分の会社が潰れている」とも言われる。
なぜこうしたことが起きてしまうのか?ここに大いに問題意識を持ち、世界中のスモールビジネスを救ってきた人物がいる。本書が紹介するマイケル・E・ガーバーだ。
「小さな会社」を世界で最も飛躍させてきた男
ガーバーは、日本での知名度はまだそれほどではないが、国際的には世界№1のスモールビジネスアドバイザーとして知られている。
スモールビジネス向けのコンサルティングを行う彼のE‐MythWorldwide社は1977年の創業以来、世界145カ国、7万社のビジネスを成長させてきたという驚異の実績を誇っている。
執筆した書籍「E‐Myth」シリーズは20カ国語に翻訳され、累計700万部のベストセラーだ。
なかでも、1995年に刊行された『TheE‐MythRevisited』は、アメリカで発行されるビジネス月刊誌「Inc.」で500社のCEOが推薦する図書ランキングが掲載された際に、あの『7つの習慣』『ビジョナリー・カンパニー』といった名著をおさえて第1位を獲得した超ロングセラーだ。
日本でも『はじめの一歩を踏み出そう──成功する人たちの起業術』(世界文化社)として翻訳されてベストセラーになっているので、手にとったことがある人もいるかもしれない。
「1つの神話」が企業の成長を阻んでいる
「スモールビジネスを世界的企業に変容させる」という夢と、「スモールビジネスコンサルティングのマクドナルドをつくる」というビジョンを持ったガーバーが、何よりも問題視したのが「起業家の神話」と呼ばれるものだ。
ガーバーによれば、テレビや雑誌などのメディアを通じ、起業家の華やかなサクセスストーリーが世の中に行きわたった結果、起業家のイメージがあまりにも美化されているのだという。
つまり、高い理想を胸に、ひたすら地道に努力を重ねる人物こそが最後に成功を勝ち取るという固定観念である。
ガーバーはこれを「起業家(Entrepreneur)の神話(Myth)」(E‐Myth)と名づけている。
「起業家の神話」に縛られた人物が経営する企業は、大半が失敗に終わる。
それに気づいたガーバーは、世の中の経営者を「起業家の神話」から解き放ち、真の成長企業へと転換させるためのプログラムを生み出していったのである。
03「実務家社長」が会社を潰す
9割の社長は「社長の仕事」をサボっている
ガーバーは、経営者の持つ人格を、以下の3つに分類している。
①起業家変化を好む理想主義者。新ビジネスにつながる活動を行う。
②マネジャー管理が得意な現実主義者。ビジネスに必要な仕事の管理を司る。
③職人手に職を持った個人主義者。実務を遂行する。
ほとんどの中小企業が失敗に終わってしまう理由は、この3つの人格のバランスが取れていない経営者があまりに多いからだ。
ガーバーは、9割方の経営者は「起業家」の人格を持っておらず、「職人」のままに留まっていると看破している。
ミュージシャンだからといって楽器店を経営できるわけではないし、一流シェフだからといってフランス料理店を成長させられるとは限らない。教師として有能な人が、塾経営に手腕を発揮できるかどうかは別の話である。
つまり、職務上の専門知識と会社経営のための知識は、まったく別であるにもかかわらず、ほとんどの経営者は経営についてまったく勉強していないのだ。
「任せるイメージ」をつねに持っているか?
もちろん、社長も実務ができるに越したことはない。だがそれは経営者に必須の条件ではない。
理想を言えば、1人の経営者が「3つの人格」を均等に3分の1ずつ持っていればいいのだが、そんな人はまずいないだろう。
現実的には経営者は「起業家」の人格に徹して、それ以外の「マネジャー」の人格と「職人」の人格はほかの人に委任するべきだ。
このように、ほかの人がマネジャーや職人として働ける場をつくることも、経営者の大切な役割である。
もちろん、起業したばかりだったり、規模が小さかったりする会社は、金銭的な理由からまだ人を雇うことができないので、経営者が1人ですべての役割をこなさなければならない。
しかし重要なのは、その時点から自分以外の人に仕事を委任するイメージをつねに持っているかどうかなのだ。
04社長のたった1つの仕事は「仕組み化」である
1日のうち「経営をしている時間」はどれくらいですか?
ここで、冒頭で触れたレストラン経営者の高橋さんの1日をもう一度振り返ってみよう。
彼の1日のうち、①起業家、②マネジャー、③職人、それぞれの人格が占める割合はどうなっているだろうか。
左の図を見ればわかるとおり、高橋さんが起業家の人格(①)になっている時間はまったくない。
実に全体の8割が職人の人格(③)である。そしてこれは、例としてあげた高橋さんに限ったことではない。
私はこれまで「マイケル・E・ガーバー認定ファシリテーター」として、ガーバーのプログラムをベースにした入門セミナー「社長が3カ月いなくても成長する会社を創る方法」を80回以上開催してきた。
そこに参加した経営者の方々に、1日の仕事内容を「タイムログシート」にまとめてもらっても、ほとんどの経営者は1日の8~9割を「職人」の人格として過ごしてしまっていることがわかる。
「職人」を脱するには、「仕組み」が不可欠だ
それでは、経営者が「職人」から抜け出して「起業家」になるためには何が必要なのだろうか?つまり、「起業家の神話」から解き放たれた社長になるためには、どうすればいいのだろうか?「人材志向」から「仕組み志向」に考えを転換することだ──そうガーバーは言う。
人材志向とは人中心で考えること。
「この仕事はAさんにはできるけど、Bさんにはできない」という考え方である。一方、仕組み志向とは人に依存せずに、誰がやっても同じ結果が出るような仕組みをつくる考え方だ。
AさんにもBさんにもできる状態をつくるわけである。私は現在、ガーバーの起業家育成プログラム「ドリーミングルーム」を開催している。
つまり、ガーバーの認定ファシリテーターの一人として、私自身も「ガーバーの仕組み」に組み込まれ、まさにガーバーの駒の1つになって活動している。
だからこそ、彼が語る「仕組み」というものがどんなものなのかを、身をもって体感することができている。
そこで本書では、世界7万社の仕組み化を支援してきたマイケル・E・ガーバーの仕組み化理論を、事例も交えながら、わかりやすくお伝えしていくことにしたい。
その「仕組み」とはいったい何なのか?それではいよいよ、「ガーバーの仕組み経営」の内実に入っていくことにしよう。
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