CHAPTER 4ぐっすりできる食習慣ハック普段の食生活が、体重や気分、心臓病や 2型糖尿病、さらには癌のリスクまで、さまざまな影響を与えることはよく知られています。でも、私たちが食べたり飲んだりするものが、眠りを妨げたり促進したりすることは、あまり知られていません。健康的な睡眠サイクルを維持するには、それを助ける役割を持つ脳の神経伝達物質生成に必要な栄養素を、毎日の食事から摂ることが大事です。眠りを妨げる特性のある食品もあれば、眠りを誘う特性のある食品もあります。また、「食べる時間」や「食べる量」が、眠りやすさに影響することもあります。あなたが口に入れたものは、眠りに役立っているでしょうか?この章で紹介する食生活のコツを、ぜひ、快眠のために役立ててみてください。
087 カフェイン摂取は午後 2時で終了!
カフェインを摂取すると、頭が冴えて元気になりますね。それはカフェインが、睡眠促進に関わると考えられている脳内化学物質アデノシンの効果をブロックするからです。 カフェインの効果が完全になくなるまでには 8時間かかることがあるので、夕方以降にコーヒーを飲むと、その夜の眠りに支障をきたす可能性があります。コーヒーのカフェイン摂取を午後 2時までに制限して、枕に頭を沈める頃には完全に体内からカフェインを追い出すようにしましょう。 カフェインを含むのはコーヒーだけではありません。お茶、コーラ、栄養ドリンク、風邪薬の一部にも含まれています。チョコレートにも微量ですが含まれています(カカオマスを多く含むチョコレートほどカフェインが多くなります)。夜中のおやつには適さないということですね。
088 夕食に辛いものは要注意
就寝前の辛い食事は、消化不良を引き起こす可能性があります。消化不良は、睡眠障害の原因になるので、気をつけたいところです。 研究から、唐辛子の辛味の元であるカプサイシンは、細胞がエネルギーを熱に変換するプロセス(熱発生)を引き起こし、体温を上昇させることがわかっています。体温の上昇もまた、眠りを妨げる原因のひとつです。 タスマニア大学の研究によって、この効果がはっきりと証明されました。被験者にタバスコソースとマスタードをかけた夕食を食べてもらったところ、体温が上昇し、通常よりも眠りにつくのに時間がかかり、深い眠りである徐波睡眠が少なく、通常よりも目覚めている時間が長くなったのです。 辛い食事を楽しみたいなら、ランチタイムにするか、就寝の数時間前までに食べ終えることをおすすめします。辛さとほてりが落ち着いてからベッドに入りましょう。
089 脂っこい食事は控えめに
高脂肪の食品を食べすぎると心臓病、肥満、癌のリスクが高まることは誰もが知っていますが、脂肪分の多い食べ物は、実は睡眠を妨げることがあります。 2016年に米国の『 Journal of Clinical Sleep Medicine』誌に掲載された研究によると、日中に飽和脂肪酸を大量に摂取すると、睡眠が浅くなり、回復力が低下し、夜中に目覚めることが多くなるのです。 加工肉、ペストリー(菓子パン、パイ、タルト)、ケーキ、クッキーなどの「飽和脂肪酸」を含む食品を控えめにして、ナッツ、種子、アボカド、オリーブオイルやひまわり油などの「不飽和脂肪酸」を含む食品を選ぶようにしましょう。飽和脂肪酸の摂取量が多すぎると、心臓疾患のリスクを高めることがわかっています。 飽和脂肪酸を減らす他の方法についてもお伝えします。飽和脂肪酸を摂りすぎない食事のコツ ❶肉を食べるときは、目に見える脂肪と皮を取り除く。 ❷牛乳は、低脂肪牛乳か無脂肪牛乳にする。 ❸バター、ラード、ココナッツオイルで焼いたり揚げたりするのではなく、茹でる、蒸す、グリルするという調理法にする。 ちょっとした心がけで、さっぱりヘルシーな食事になります。
090 糖分注意報、発令中!
米国のある研究は、糖分が多い食事をとると心地良く眠れなくなる可能性を指摘しています。甘い物を食べて血糖値が急上昇・急降下すると落ち着きがなくなり、睡眠が妨げられやすくなるのです。絶対に摂取を減らすべき食品をひとつ挙げましょう。それは、砂糖で甘くしたカフェイン入り炭酸飲料です。学術誌『スリープ・ヘルス』に掲載された研究によると、夜の睡眠時間が 5時間未満の成人は、 7 ~ 8時間の成人よりも、砂糖で甘くした飲み物を 21%多く消費していました。興味深いことに、甘い飲み物が睡眠の妨げになることに加えて、睡眠不足になるとそういったものが飲みたくなる傾向があると考えられています。 いずれにせよ、精製された砂糖の摂りすぎは身体によくありません。明らかに糖分が多いもの、市販のチョコレート菓子や甘いデザートなどの食べすぎには要注意です。加えて、より良い睡眠習慣のためには、パンやパスタは全粒粉のものを選んだり、白米ではなく玄米や雑穀を選んだりすることも検討してみてください。
091 就寝直前には食べない
夜遅くに食事をすると、寝つきが悪くなるだけではなく、眠り続けることが難しくなるのを知っていますか? 眠るためには、深部体温を下げる必要があります。しかし、食事をすると、消化器系に血液が集まるので、深部体温が上がってしまうのです。就寝の数時間前からは食事をとらないように心がけましょう。「時間制限食」( TRE)を試してみるのもおすすめです。 時間制限食とは、 1日のうち食事ができる時間枠を定める(通常は 6 ~ 12時間)食事法です。 ある研究によると、食事時間を 10時間(たとえば午前 8時 ~午後 6時)に制限した人は、眠りが改善されたそうです。
092 「アダプトゲン」を摂取する
アダプトゲンは植物に含まれる成分で、身体がプレッシャーと緊張に適応するのを助ける作用があると考えられています。ストレスホルモンの放出を調節してくれるらしいのです。 アダプトゲンは、何世紀にもわたって、アーユルヴェーダ医学で不安を和らげるために使用されてきました。生姜やアシュワガンダの根など、アダプトゲンを含む食品やハーブに関する研究から、ストレス解消の効用が確認されています。 アダプトゲンを含む他の食品には、イラクサ、リコリス、モリンガ、サジー(シーバックソーン)、ターメリック、マカ、チョウセンニンジン(高麗人参)などがあります。 寝室の明かりを消す前やストレスで押しつぶされそうになるのが怖いときはいつでも、こういった原料を含むハーブティーを試してみましょう。
093 睡眠の長さが気になるなら果物や野菜をプラス
健康的でバランスのとれた食生活のために、果物や野菜をたくさん食べましょう。心臓病、脳卒中、一部の癌のリスクを減らせるだけでなく、ほど良い長さの睡眠をとるのにも役立ちます。 学術誌『 BMJ Open』に掲載された英国の全国食事栄養調査のデータを使った横断的研究によると、健康に良いとされる一晩 7 ~ 8時間の睡眠をとる「ミディアムスリーパー」は、果物と野菜を食べる量が、一晩 7時間未満しか眠らない「ショートスリーパー」よりも 24 g多く、一晩 8時間以上眠る「ロングスリーパー」よりも 28 g多いそうです。研究は、長時間睡眠と死亡リスクの増加に関連性があることを示しています。 データから、少なくとも 3分の 2の人は、「 5 A DAY(ファイブ・ア・デイ)運動」が推奨する「 1日 5皿分の野菜と 200 gの果物を食べる」という目標を達成していないことがわかりました。果物と野菜の摂取量を増やして、一晩 7 ~ 8時間という最適な睡眠量を実現するために、「継続は力なり」の心構えで行動を始めましょう。 朝食のシリアルやヨーグルトに果物を加えることを習慣にしてもいいですね。そして、昼食のサンドイッチに野菜をプラス。夕食にも野菜を一皿加えましょう。にんじんやセロリのスティックをおやつ代わりにかじりましょう。 心臓の健康に良いとされる地中海料理は、快眠にも効果的です。たまにはギリシャ人になった気分で、野菜、全粒粉、マメ科の植物、ナッツなどの植物性食品をたっぷり料理に使ってみてください。バターの代わりにオリーブオイルを使うのもいいですね。赤肉や加工肉は控えめにしましょう。
094 プレバイオティクスを意識する
プレバイオティクスは食物繊維の一種で、アーティチョーク、生のニンニク、ネギ、タマネギなどの食品に含まれ、腸内の善玉菌の数に影響を与えます。 プレバイオティクスはお腹に良いだけではありません。米国の研究から、ストレスを感じた後の不眠を予防し、眠りを改善する可能性があることがわかっています。ラットを使った実験で、プレバイオティクスを含む食事を与えられたラットは、プレバイオティクスを含まない食事を与えられたラットに比べて、ノンレム睡眠(穏やかで回復効果のある睡眠)の時間が長いという結果が出ました。 また、プレバイオティクスを含む食事を与えられたラットは、ストレス要因にさらされた後に、ストレスから身を守るのに役立つと考えられているレム睡眠の時間が多くなりました。以前の研究から、ストレスが腸内細菌を変化させて睡眠を妨げる可能性があることがわかっていましたが、今回の実験で、プレバイオティクスを含む食事を与えたラットは、そういった変化から守られることが明らかになったのです。 プレバイオティクスが人間の睡眠に果たす役割については正確にはわかりませんが、プレバイオティクスを含む健康的な食品は、害にはならないことを覚えておきましょう。
095 健康な腸は睡眠の味方
胃腸の消化システムを健康に保つために、毎日 30 gの食物繊維を食べることが推奨されています。たっぷりと食物繊維を摂ることで、寝つきが良くなり、睡眠の質が上がることもわかってきました。 ニューヨークのコロンビア大学による研究で、成人の被験者に睡眠の監視を行い、 4日間定められた健康的な食事を食べてもらって、 5日目と 6日目は好きなものを食べてもらいました。すると、最後の 2日間に食物繊維が少ない食事をした人は、寝つくまでに時間がかかり、睡眠が浅くなったのです。 食物繊維の摂取量を増やすには、レンズ豆、玄米、全粒粉のシリアルやパスタ、それからりんご、ベリー類、セロリ、ブロッコリーなど、さまざまな種類の豆類、穀類、果物、野菜を食べると良いでしょう。
096 お酒はプラマイゼロ
寝酒は、寝つくのには役立つかもしれませんが、後にあなたの睡眠が妨げられるというしっぺ返しが待っています。 アルコールの影響に関する科学的研究をまとめた記事によると、アルコールは鎮静剤として作用し、夜の前半は寝つきが良くなり、深く眠るのに役立ちます。しかし、後半には眠りを乱すため、せっかくのメリットも帳消しになるそうです。 身体はアルコールを急速に分解するため、鎮静効果は数時間で消え、その反動(リバウンド効果)で、目が冴えたり気分がそわそわしたりするのです。 また、お酒を飲むといびきや汗をかきやすく、深夜にトイレに行く可能性が高くなります。 寝る前のお酒は控えたほうがよさそうです。
097 快眠フードのクルミ
お日様が西に傾いてきて、今日も 1日が終わるなあ……と感じる黄昏時には、クルミを食べることをおすすめします。 テキサス大学の研究で、クルミがメラトニンの供給源になることがわかりました。クルミを食べると血中のメラトニン(睡眠ホルモン)の量が増加するそうです。メラトニンはその名の通り、眠気をもたらす効果があります。 クルミだけで食べてもいいですし、サラダやシリアルに混ぜてもいいですね。
098 カリウムでもっと熟睡
夜中に目が覚める人は、食事にじゅうぶんなカリウムが含まれているか、ちょっとチェックしてみましょう。 カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究から、通常はカリウムが少ない食事をとる人が、カリウムのサプリメントを摂取することで睡眠時間が増え、夜中に目を覚ますことが少なくなることがわかりました。カリウムは血圧を下げて心拍を整えることに加えて、筋肉と骨の強度を上げるのにも役立ちます。 カリウムは、サツマイモやジャガイモ、バナナ、白いんげん豆、アボカド、トマトなどに多く含まれています。 こうした食品を意識して食事に加えれば、普段の食事からカリウムをじゅうぶんに摂ることができます。
099 ハーブティーならバレリアン
バレリアンというハーブは、さまざまな地域で「鎮静と安眠の薬」として古くから使われてきました。 複数の研究で、バレリアンを服用している人は、プラセボを服用している人に比べて、睡眠が改善する可能性が 80%高いという結果が示されています。 また、バレリアンが、リラックスを促進する脳内の神経伝達物質 GABA( γ-アミノ酪酸)の分解を止める働きがあることを示す研究データがあります。 比較的手に入りやすいバレリアンティーから、まずは試してみるのもいいでしょう。 ただし、バレリアンを服用する前に、生活習慣の改善などのさまざまな対策を講じることをおすすめします。また、かかりつけの医師に相談して、摂取が安全かどうか、服用している他の薬の作用に影響を与えないかどうかを必ず確かめてください。
100 トリプトファンの摂取を増やす
トリプトファンを多く含む食品──牛乳、鶏肉、卵など──を食べることも、睡眠の改善に効果があるようです。アミノ酸の一種であるトリプトファンは、体内でセロトニンに変わってから、催眠作用のあるメラトニンへと変化します。 ひとつ問題があります。これらの食品には、トリプトファンが血液から脳内に移動するのを阻害する他のアミノ酸が含まれているのです。ただし研究から、トリプトファンが豊富な食品に炭水化物を組み合わせることで、この阻害が軽減できることがわかっています。炭水化物を摂取した結果として放出されるインスリンが、血中の他のアミノ酸の量を減らしてくれるからです。競合が減ることで、トリプトファンが血液から脳内へと届きやすくなります。 トリプトファンの安眠効果を最大限に引き出すため、もしベッドに入る数時間前までに軽く食べるなら、牛乳に低糖質の全粒粉シリアルを合わせるのがおすすめです。
101 チェリーで乾杯!
『American Journal of Therapeutics』に掲載された記事によると、チェリーのジュースが快眠に役立つそうです。 小規模な研究で、慢性不眠症の 50歳以上の成人を 2つのグループに分けて、ひとつのグループにモンモランシーチェリー(すっぱい味のさくらんぼ)からつくられたタルトチェリージュースを 1日 2杯(朝と夕方に 1杯ずつ)、 2週間飲んでもらい、もうひとつのグループには、チェリー味のプラセボ(ポリフェノールなし)を 2週間飲んでもらいました。 すると、タルトチェリージュースを飲んだグループのほうが、睡眠時間が平均 84分長くなり、良質な眠りを得られたことがわかったのです。 さくらんぼに含まれるメラトニン、アミノ酸のトリプトファン、赤色素のプロアントシアニジンの組み合わせが、ぐっすりと眠ることに役立つと考えられています。 さくらんぼに乾杯!
102 スーパー睡眠フードはキウイ
ビタミン Cと食物繊維が豊富なことで知られるキウイフルーツは、睡眠に効くスーパーフードでもあります。台湾の台北医学大学が行った実験で、よく眠れない人に、就寝時刻の 1時間前にキウイフルーツを 2個、続けて 4週間食べてもらったところ、素晴らしい結果が出ました。 被験者は、寝つくまでの時間が短くなり、睡眠時間が長くなり、ぐっすりと眠ることができました。キウイフルーツに葉酸と抗酸化物質の含有量が多いことが、眠りの改善に役立つと考えられています。葉酸と抗酸化物質の不足は、不眠症を引き起こすと考えられており、葉酸不足はむずむず脚症候群と関連があるとも言われています。
103 コーヒーの代わりなら緑茶
日中にコーヒーの代わりに飲むものを探している人は、ぜひ緑茶を選びましょう。緑茶には、抗ストレス作用のあるアミノ酸のテアニンが含まれています。 ただし、低カフェインまたはカフェイン抜きの緑茶を選ぶようにしてください。カフェインが抗ストレス効果を抑制してしまいます。また、日中に摂取するカフェインが多すぎると、夜に目が冴えてしまう可能性があるからです( HACK 087参照)。 日本の複数の研究から、日中に低カフェインの緑茶を飲むと、ストレスが軽減されるだけでなく、睡眠の質が向上することがわかっています。
104 もっともっとマグネシウム
マグネシウムは、体内の GABA( γ-アミノ酪酸)の量を健康的に保つのに重要な役割を持つミネラルです。 HACK 099でも触れたように、 GABAはリラクセーションを促進する神経伝達物質です。 マグネシウム不足は、不安とストレスにつながります。ある研究から、マグネシウムの摂取量を増やすと寝つきが良くなり、一晩中、心地良く眠りやすくなることがわかりました。 また、マグネシウムは、むずむず脚症候群の症状を緩和するとも考えられています。 マグネシウムが摂取できる食品は、色の濃い葉物野菜、種子やナッツ類、魚、全粒粉のパンや玄米です。 夕食に、ほうれん草とカシューナッツとアーモンドを混ぜた玄米ピラフなんて、いかがでしょうか?
105 眠り誘うパッションフラワーティー
寝る前にホットドリンクを飲むとほっとします。 ココアやホットチョコレートもいいけれど、たまにはパッションフラワーティーを飲んでみてはいかがでしょうか。 オーストラリアの大学の研究から、軽い睡眠障害のある人がパッションフラワーティーを 7日間飲んだところ、パセリでつくったプラセボのお茶を飲んだときよりもはるかによく眠れたことがわかりました。 パッションフラワーのティーバッグや、乾燥させたパッションフラワー(お好みの濃さで飲める)は、多くの健康食品の店で入手することができます。
106 魚の脂肪分は睡眠にもいい
『Journal of Clinical Sleep Medicine』誌に掲載された研究によると、サーモンなどの脂肪分の多い魚を食べると、睡眠にプラスの影響を与えるそうです。脂肪分の多い魚には、ビタミン Dとオメガ 3脂肪酸が多く含まれ、心臓病予防に役立つとも考えられています。健康指針によると、魚は少なくとも 1週間に 2回食べるのがいいとされており、そのうち 1回はサーモン、サバ、イワシ、マスであることが推奨されています。 脂肪分の多い魚を食べるようにしましょう。いつものチキン(鶏肉)やポーク(豚肉)やビーフ(牛肉)をサーモンに替えたり、サラダに燻製のサバのフレークをかけたりといった工夫をしてみましょう。
コメント