相手が誰であろうとも、よろこばしくないことをメールやラインでお願いするときに、いきなり本題に突入してしまうのは御法度です。
お互いに顔が見えない、声も聞けないメールやラインは、文章だけが頼りなのです。言いにくいことを送るときは、相手を大切に思う言葉を添えるようにしましょう。
例えば相手を思いやる営業マンは、代理店さんも大切にします。
そして、次のようにネガティブメールを代理店さんに送ります。
「○○です。○○さんにはいつも感謝しています。今日はどうしても聞いていただきたいことがあってメールしました。実は商品の値上げが決定し……」と、日ごろの感謝の気持ちに加えて「どうしても聞いてほしい」という言葉を添えます。それからネガティブな本題に入っていくのです。
すると、「こちらこそいつもありがとうございます。価格の件は仕方ないですよね、承知しました」と、決して不快感を持っていない返信が、代理店さんから届くのです。
そして代理店さんもまた、お客さまに「〇〇さまにはいつも感謝しています。今日はどうしても聞いていただきたいことがあってメールしました」と、ひと言書いてから、値上げについてお知らせするのだそうです。
文章だけの連絡は、相手を不愉快な気持ちにさせないような心配りが必要ですね。「メールで、お客さまとの距離感を縮めたい」というお悩みもよく聞きます。答えは簡単です。
仕事以外のことで、相手が好きなことを話題に出せばいいのです。「○○さんは、確か○○が好きだとおっしゃっていましたよね」と書くのです。ちょっと、シミュレーションをしてみましょう。
「確か、野球ではヤクルトが好きだとおっしゃっていましたよね」「確か、ワンちゃんが好きで飼っているとおっしゃっていましたよね」そうです。
その調子です!そうしたら次のような感じで話を繋げていきます。
「昨日テレビでヤクルト戦をやっていたので、○○さんのことを思い出しました」「ユーチューブでワンちゃんの動画を見ていたら、○○さんを思い出しました」自分の好きなことに触れられると、思わず人は笑みがこぼれて、うれしくなります。
セロトニンが増えて心が癒されるのですね。そしてなによりも、自分の好きなことを覚えていてくれたことに感動するものです。そのためには、過去の雑談の中で相手が興味を持っていたことを覚えておくことが大切です。
野球をはじめさまざまなスポーツ、音楽や美術、旅行、スイーツなど、忘れないように、私は名刺の裏やスマホのアドレス帳にこっそりメモをしていました。求人広告の価格サービスが、今後なくなるというときのことです。
既存のお客さまにその旨を伝えていくと、ある会社から「それなら他社で広告を出す」と、バッサリした返信をもらったのです。
まさかの返事にショックを受けた私は、「何とかお願いできませんか?」と、ダイレクトにお願いを重ねるメールを出しました。
しかし残念ながらそのお客さまからは二度と連絡が来ませんでした。このことを上司に報告すると、「ネガティブなお願いに、ネガティブな返事がくるのは当たり前。まずはその返事に対して、思いっきり共感をするメールを送ることが先決なの。そうすれば、お客さまの気持ちは一時的でも落ち着くものよ」と言われました。
その教え通り、次に届いた「それなら他社で出す」というお客さまの返事に対して、私は次のようにメールを送りました。
「確かにそうですよね。○○さまのお気持ちよくわかります。実は正直なところ、私も○○さまと同じように思っているのです」すると数カ月後、「やっぱり、またお願いします」といううれしいメールが飛び込んできたのです。
ネガティブなお願いに対して期待できない返事をもらったときは、ダイレクトにお願いを重ねるのではなく、思いっきり共感をすると、一時的にも相手の承認欲求が満たされることを学びました。
次のようなお悩みをよく聞きます。
「好印象を与えるメールを送りたい」「相手の文章にイラっとして、つい機械的な返信をしてしまう」相手に好感を持ってもらえて、イラっとしても返信が機械的にならない文章なんてあるの?と思いますよね。
それがあるのです。誰にもできる簡単なコツさえ知っていれば大丈夫です。語尾に「ね」をつけるのです。
たとえば冒頭の挨拶に「暖かくなってきましたね」「今日は風が強いですね」と、こんな感じで「ね」をつけるだけでいいのです。ね、簡単でしょう(笑)。
イラっときたときは、「そんなこと思わないでください」ではなくて「そんなこと思わないでくださいね」と書くのです。
前者より、だいぶ柔らかく感じませんか?相手に好感を持ってもらえて、イラっとしたときも相手とギクシャクしないために、語尾に「ね」をつけることを意識して、優しいイメージのメールを目指しましょう。
「ませ」を語尾につけるのもいいですね。「おからだには十分お気をつけてくださいませ」「どうぞご自愛くださいませ」特に目上の人に対しては、ていねいで優しい印象を与えてくれることでしょう。
「大変お世話になっております。
いつもありがとうございます」いつもの文章に、ちょっとした気づかいや思いやりを感じる言葉を添えると、送った相手に好感を持ってもらえます。
挨拶に、日ごろの感謝の気持ちを加えるのです。それだけで、グッと印象がよくなるから不思議です。
このことに気がついたのは、リクルートの仕事を始めて数年経ったころでした。
某飲料メーカーの専務からいただくメールには「いつもありがとうございます」が添えられていたのです。
「大変お世話になっています。いつもありがとうございます。○○会社の○○です。また求人をしたいので相談にのってください」なんて謙虚で思いやりのある人なのだろうと驚いたものです。
そして、自分も見習おうと思ったのです。
それからはお客さまだけでなく、仕事で関わる人へのメールには、「いつもありがとうございます」を添えるようにしていきました。
すると相手からも「こちらこそ、いつもありがとうございます」というひと言が添えられてくるようになったのです。感謝の言葉のキャッチボールは、お互いがうれしい気持ちになり、よりよい信頼関係へと繋がっていくのです。
「返信不要です」というひと言を添えるとき、私は二つのことに気をつけています。それは「相手を気づかう」こと、「メールの内容を事務的にしない」ことです。
冒頭から用件のみを書いた文章の最後に「返信不要です」は、いささか機械的です。
そうならないためには、おさらいになりますが冒頭の挨拶には感謝の気持ちを添え、それから用件を書いて、ときに相手の健康を気づかうひと言を添えます。
それから最後に「返信不要です」と書けば大丈夫です。
大変だと感じる人もいるかもしれませんが、失礼にならないようにするには、ひと手間やふた手間の心配りはしたいものです。
私が実際に書いているものと、受け取って印象がよかったものをお伝えしますね。
- ・返信は不要でございます
- ・お忙しいと思いますので、ご返信は不要です
- ・どうかご返信のお気づかいなく、お仕事を優先されてくださいね
- ・ご返信の心配をされませんようにいかがでしょうか。
お気に入りの表現がありましたらぜひ使ってみてくださいね。
よく使われている「夜分に失礼します」も、ワンランクアップさせると相手の心をぐっと掴むことができます。
ラインが普及しはじめた約10年前は、子どもの教育費を含め生活のために働くことに必死で、友人や知人への連絡や返信は、どうしても夜遅い時間帯になってしまったものです。
送信するのをためらうこともありましたが、「夜分にごめんなさい。お休みになっていたら起こしませんように」と書いて送っていました。
すると数人から、「起こしませんように」という言葉がとてもいい、素敵な言葉ですね、といううれしい反応をいただいたのです。
中には「私もこれから使ってみます」という人もいて、何気なく送った言葉がこんなにも相手の心に響いたことに驚いたものです。もう寝ているかもしれない遅い時間帯に、起こしたら申し訳ないという気持ちが、思いやりとなって相手に届いたのかもしれません。
早朝だとしたら「朝早くからごめんなさい。お休みになっていたら起こしませんように」となりますね。
お昼ごろだったら「お昼時に失礼します。お食事中だったらごめんなさい」でもいいでしょう。
送る時間帯をちょっと意識して、「今この時間に相手は何をしているだろう」と想像して、相手を気づかう言葉を添えて送ってみましょう。長い文章を相手に送るときには、長くなることを最初に伝えておくことで、相手は心してかかれる(読める)のです。
先に伝えておかないと、読む人は疲れます。
いつまでも続く巻物のような文章に、読むのが面倒くさくなり「後でいいや」と、ラインやメールを閉じてしまいます。
「平安時代じゃないんだから、どうして巻物みたいになるのだろう」苦笑しながらこう話す友人の女性は、知人男性からの長文ラインに、ほとほと疲れていました。
「返信しないと悪いと思いながら、最後まで読む気にもなれない」と言うほど悩んでもいたのです。
ところがある日その男性から「長いので、お時間あるときに読んでもらえれば大丈夫です」と、冒頭に書いてあったというのです。
誰かにアドバイスをもらったのかもしれませんし、ご自身で気づかれたのかもしれませんが、そのように書いてあったことで、友人は時間があるときにゆっくりラインに目を通そうと思ったそうです。
長い文章を送るときは、最初に「長くなること」を伝えておくと、相手に読む心構えができます。
そして「読んでもらうのは、お時間があるときで大丈夫です」という思いやる言葉をプラスすると、相手は「読もう」という気持ちになるのですね。
連絡をしなくてはならない相手から、自分が連絡をする前にメールやラインをもらったとき、「連絡するのを忘れていました」「うっかりしていました」と返信するのは、相手に失礼になることがあります。
ある20代の営業マンにアポを翌日に控えたお客さまから「明日のアポイントは予定通りですか?」と、メールが届きました。
すっかりリマインダーメールをし忘れた彼は、慌てて「ご連絡するのを忘れていました。明日は予定通りよろしくお願いします」と返事をしました。するとお客さまから、アポイントをキャンセルされてしまったのです。
彼の上司いわく「営業マンから『忘れていた』と言われていい気持ちになるお客さまはいないでしょう。
ミスの謝罪ではないのだからバカ正直に言っては逆効果。
そのようなときは『先にご連絡をいただいてしまい申し訳ありません』と、最初に書くのよ」この言葉は、返信するときの適切な言葉として、後に営業チームで共有されました。「ご連絡いただきありがとうございます」だけでは、言葉が足りないと思われる可能性があります。
本来なら自分から連絡をするべきところを、順番が逆になってしまったことを真っ先に冒頭でお詫びをすることで、相手に不快感を与えないのです。
追伸を上手に使うと、インパクトのある印象を相手に与えることができます。
追伸に入れた言葉は、甘さと優しさをかもし出して相手に届きます。恋人やパートナーへは、言うまでもないことですね。
「大好きだよ」「はやく会いたい」など、そのときの気持ちを書けばいいのです。
友人になら、「からだに気をつけてね」「がんばりすぎないでね」「少しでも早く休んでね」「元気出してね!」「また会おうね」など、健康を気づかうのもいいでしょう。
お客さまや仕事関係の人へは、ちょっとした営業トークを、本文ではなくあえて追伸に入れることで印象づけることができます。
たとえば次のような感じです。
「追伸:お仕事ご一緒できる日を楽しみにしています」「追伸:またお目にかかれる日を楽しみにしております」「最後にそうきたか」と印象づけることで相手の心を動かし、その後の取引に繋がったケースはたくさんあります。
ぜひ、一番伝えたいことこそ追伸に書いてみましょう。追伸には、最後の美味しいデザートと同じように、人を笑顔にする力があるのです。
森優子(もり・ゆうこ)コミュニケーション・アドバイザー。
マリアージュコンサルタント事務所代表。短大卒業後、西武ライオンズ・西武鉄道のチアリーダーに従事。
ゲラン化粧品主催「ミス日本ビューティフルコンテスト」にて、ビューティフルレッグ賞を受賞。その後転職し、㈱リクルート、㈱リクルートキャリアにて求人広告の企業営業を担当。
入社2年目には、通期(年間4クオータ―)を通して「売上、新規売上、新規社数」の目標を完全に達成した者だけに与えられる「グランドスラム賞」を取り表彰される。
ほかにも、営業グループ内における月間MVP賞や月間売上トップ賞をたびたび獲得。同社退職後、マリアージュコンサルタント事務所を開業。
クライアントのコミュニケーション力を向上させ、「人間関係がうまくいくようになった!」と絶大な支持を得ている。メディア出演、企業研修でも活躍中。
著書に『雑談が上手い人下手な人』『嫌なことを言われた時のとっさの返し言葉』『会話が上手い人下手な人』(以上、かんき出版)。
著者サイトhttps://www.mariagecommunication.jp
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