私の知り合いに仕事もプライベートも充実していて輝かしい女性がいます。いつも明るく笑顔を絶やさない彼女ですが、そこにたどり着くまでは並々ならぬ努力をしているのです。
ところがその努力を知らない人の中には、ただ単に彼女がうらやましくて、ちょっとしたジェラシーが否定的な言葉として出てしまうことがあるのです。
久しぶりに集まった会食の場で彼女が笑顔で近況を話していると、ある人が真顔で「なんでいつもそんなに元気なの?」と言いました。
それを聞いた彼女は一瞬だけ困った顔をしました。すると、それに気がついた別の女性が「いつも元気でいられる秘訣を教えてほしい」と、前向きなひと言を言ったのです。
人は、誰かをうらやましいと思ったとき、二つのパターンに分かれます。
一つは「自分もあの人のようになれるようにがんばろう」と、うらやましい気持ちをよい刺激に前向きに変換させていく人です。
前向きに変換できる人は、いつも元気で明るい人を前に「なんでいつもそんなに元気なの?」とは言いません。
二つ目は、いつも明るくて元気な人をうらやましいと思いながらも「自分には到底できない」と、後ろ向きになる人です。
気持ちが後ろ向きだと、「うらやましい」が「うらめしい」という感情に変換してしまうのです。リクルートでお世話になった取引先の社長はゴルフでよいスコアが出ると、「この間、たまたまゴルフのスコアがよくてね」と、メールがきます。
「さすが〇〇社長です!」と返信をすると、「たまたまだよ〜」とうれしさを隠しきれないメールが戻ってきます。
大先輩のビジネスコンサルタントの男性はウォーキングにはまっていて、リモート上で顔を合わせると、「昨日は〇分で高尾山を登ったんです。いっひっひ」と、笑わせながらプチ自慢します。
「それはすごいです!」と誰かが言うと、「たまたまですよ。でもこのままいくと自己ベストタイムが世界レベルに到達するかも」と、自画自賛がすごいことになります(笑)。
心の底からうれしそうに話すからなのでしょう。嫌みがなくてかわいい自慢に感じるから、そこから競歩やマラソンの話へと会話が広がっていくことがあります。
「たまたま」というひと言が、単なる自画自賛を謙虚でかわいいプチ自慢に変えて、周りの印象をよくしているのですね。
ゴルフやウォーキングなど、日ごろのちょっとした自慢をしたいときには、「たまたま」という言葉を使うと、一気に謙虚さが感じられるのです。
たったひと言、「たまたま」を添えるだけでいいのです。
第1章で、言葉のリアクションについて説明しました(SCENE013)。
言葉のリアクションの代表は感嘆詞で、感想を伝えるときに、「いや〜」「うわ〜」「おお!」などを最初に添えると、後にくる感想を強調して相手に思いが届くということでしたね。
今回は、感嘆詞以外の言葉のリアクションについてです。感嘆詞を使わないときは、反応が薄くならないように心がけることが大切です。
たとえば友人や知人から、小さな子どもやペットなど大切な家族の写真を見せてもらうことがあると思います。
そんなとき、皆さんはどのような反応を見せますか?「かわいいですね」「あ、かわいい〜」という言葉が出る人は、言葉のリアクションが上手な人です。
安心して自信を持ってくださいね。
家族やペットの写真を見せる人は、「かわいい」とか「大きくなったね」とか、何らかの言葉のリアクションを期待しているのです。そのような心理こそかわいいものなのです。
たとえば「お子さん、かわいいですね」「いま何歳ですか?」と言えたら、そこから少しでも会話が続いていくのだと思います。
旅行に行ったときの写真を見せてもらったときも、薄いリアクションは避けましょう。
実は旅行の写真を見たときこそ、楽しい会話を弾ませるチャンスです!なぜなら旅行は多くの人がワクワクして、おしゃべりになりやすい話題だからです。
リクルートの営業部でも、旅行に行ってきた人が各デスクを周り、一人ひとりに声をかけながらお土産を渡す姿が、大型連休後の恒例の景色になっていました。
「お土産のクッキーです。もしよかったらどうぞ」「どうもありがとう。どこに行ってきたのですか?」「伊豆に行ってきました」「伊豆ですか。お天気はどうでしたか?」「それが着いたら雨で」と言ってスマホで撮影した画像を見せてくれます。
「うわ〜本当だ、雨ですね。それからどうなったの?」「仕方ないから旅館の温泉にずっと入ってたわ」温泉の写真を見ながら、ますます会話が盛り上がっていくのです。
写真を見せている人はとてもうれしそうです。写真を見ている人も楽しそうです。
そして言葉のリアクションが上手な人は、最後に次のように言って、写真を見せてくれた人の気持ちを満足させるのです。「写真、見せてくれてありがとう」
昨今は、リモートで会話をすることが増えてきました。
リモートで雑談を自然に始めるための大切なポイントは二つあります。
一つめは、雑談のスタート内容はハードルを下げることです。まずは、相手が答えやすいことから始めるといいでしょう。
二つめは、最初に自分のことを伝えてから相手のことを聞くのです。リモートはお互いの目の動きや顔全体の表情がはっきりしません。タイムラグも発生します。
そこが対面と違うため、いきなり聞くと相手が身構えてしまう可能性があるからです。
たとえばオンラインセミナーなどで、私が「○○さん、ご出身はどちらですか?」と突然聞くよりも「私は東京出身なのですが、○○さんはどちらのご出身ですか?」と聞くと、ホッとしたようにやわらいだ言い方で「自分は〇〇県です」と答えてくれます。
チャットでも、「私はいま東京にいます。皆さんは?」と聞いたほうが、ものすごいスピードでチャットの画面が動き出します。
もうおわかりですね。
相手が答えやすい出身地や現在いる場所について、最初に自分のことを伝えてから聞くと、相手は自分のことが話しやすくなるのです。
そして、その土地の美味しい食べ物や名物について、雑談がスムーズに進んでいくのです。雑談が進んでくると、相手の話を切り返したくなるときがあります。
どんなときに切り返したくなるかというと、自分が好まない話題になったときです。たとえば野球を好きな人が「今年の〇〇選手の活躍ぶりはすごいね」と言ったとします。
ところが、野球に興味がない人にとっては野球の話がつまらなく感じ、話を切り返したくなります。このとき、雑談の切り返しが下手な人は「野球は嫌いです」と言ってしまいます。
ダイレクトに否定するから、切り返すどころかそこで雑談が終わってしまうのです。雑談の切り返しが上手な人は、決して否定はしません。
「野球って人気がありますよね」と言って、肯定して共感します。または「あまり詳しくないので、今度よかったら教えてください」と寄り添います。
このように切り返されたら「よろこんで教えましょう」と相手は笑顔になるでしょう。笑顔といえば、少し話はそれますが、リモートで雑談をするときは思いっきり笑顔になりましょう。
画面というフィルターが本来の表情を伝えにくくするだけに、対面のときの3倍は口角を上げて、目にも微笑みを入れることを忘れずに。
そして、話すときも、対面より大きな声でハキハキと話をしましょう。自慢話のネタで多いのはやはり自分や家族のことでしょう。人が自慢する心理は、すごいと思われたいからです。ある意味、子どもと一緒なのです。
子どものように可愛いものだと受けとめれば、気持ちは楽になります。
そして「本当にすごいなあ」と素直に思える話には、可愛いを通り越して、相手を敬う気持ちになるものです。それでは、どのような言葉を相手にかければよいのでしょうか。答えは、前にあります。そうです。
「それはすごいです!」「さすが○○さんです!」と言い切るのです。これは、ただほめているのとはニュアンスがちょっと異なります。「あなたは本当にすごいです!」と、心から絶賛する感じです。
たとえば、箱根駅伝やホノルルマラソンなどの話になったとしましょう。
「そういえば、学生時代に市のマラソン大会で優勝したことがあった」「リレーの選手ではいつもアンカーだった」「うちの長男、短距離では学年でいつも1番らしくてね」など、素直にすごいと感じる話なら、「それはすごいです!」「さすが○○さんのお子さんです!」と絶賛するのです。
「それはすごい」「さすが」は、絶賛言葉です。
絶賛された相手は、「それほどでもないですよ」「たまたまの話です」と謙遜しつつも、内心はうれしくて仕方がないのです。
私は、求人を出す企業の社長や取締役にインタビューをするとき、「ここまでくるのに、どんな苦労がありましたか?」という質問をしてきました。
ほとんどの人が「苦労を苦労と思ったことがない」と答えるのです。ですが、是非とも教えてほしいと懇願すると、「ずいぶん前の話だけどね」と言って話してくれます。
その話は決して自慢ではなく、心から感動するものばかりでした。それゆえ、素直に「そうだったんですね。大変な思いをされてきたのですね」という言葉が出たものです。
すると社長たちは、「ずいぶん前のことなのに、そんなふうに言ってもらえるとうれしいものだね」と笑顔になります。偉い人は本当に謙虚なのです。
私ごとで恐縮ですが、リクルートの仕事を卒業するとき、今までの感謝の気持ちに加えて今後の活動について簡単にまとめたメールを、営業部と関係部署に一斉に送りました。
いただいた多くの返信の中で、ある先輩の言葉が心に優しく響きました。それは、「今まで、人知れず努力してきたんだね」というひと言でした。
この言葉が、今までの私を肯定してくれたような気がして、肩の荷が下りたような安堵感を覚えたのです。人は、過去を肯定してもらえると、安心して未来に力を注いでいかれるのです。
情報産業の大手企業で働く女性は平成生まれの26歳です。仮にS子さんとします。
忙しい月末が近づくと直属上司の武勇伝が始まり、職場の空気が重い雲におおわれるといいます。それは誰かが自分より早く帰ったときに発生するのだそうです。
「いいよなぁ、8時に帰れて。俺が20代のころはいつも終電帰りだったよ」「夜中2時まで会社に残ってタクシーで帰ったことなんてしょっちゅうでさ………」近くにいる20代のスタッフたちは、また始まったと苦笑いをしながら「そうだったんですね」と肯定をするのですが、武勇伝は止まる所を知りません。
そこでS子さんは次のように言ってみました。すると、直属上司は満足したような顔になり、武勇伝が止まったのだそうです。
「大変だったんですね。今の時代は自分も含め忍耐力がありません。到底自分には真似できません」「上司は大変だったんですね」と最初に共感をしてから「でも今は忍耐が美学の時代ではありません」という否定を加えていますね。
そして最後にまた「自分にはない忍耐力がある上司はすごいです」と肯定をしています。
「肯定」+「否定」+「肯定」のサンドイッチ方式で上司を満足させ、武勇伝を止めた20代のS子さん、あっぱれです。
小学校6年生のとき、私は母に友だちへの言葉使いについて叱られました。
「〇〇ちゃんから電話よ」という母の声に、少女コミックに夢中になっていた私は、重い腰を上げて電話口まで行くと、開口一番「なに?」と言ってしまったのです。「そういうときは『どうしたの?』と、優しく言うのよ」
そう教えてくれた母は言葉使いにとても厳しくて、当時はうるさいなあと思ったこともあったけれど、大人になればなるほど感謝の気持ちがあふれてきました。
そんな経験から、電話に出られるときは「○○さん、どうしたの?」とできるだけ優しく言うようにして、出られないときは「いま出られない状況でごめんなさい。どうしたの?」と、取り急ぎラインやメールを送るようにしています。
逆に、自分が誰かと電話で話したいときは、事前にメールやラインで「これから電話しても大丈夫?」「電話で話したいことがあるのだけど、何時ごろならかけても大丈夫?」と確認すると、相手は安心して電話を受けることができると思います。
これは友人だけでなく、兄弟や親に対しても、同じことがいえそうです。仲がよくても普通でも、突然かかってきた電話には優しく対応できたらいいですね。
リクルートの上司は、「〝はい〟は1回でいい」とよく部下に突っ込んでいました。
キャリアのある女性部下が、上司の説明に大きく納得するように「はいはいはいはい」と4回言ったときは、「連打しなくていい」と笑いながら突っ込んでいました。
敏腕上司いわく「〝あ〜はいはい〟や、〝はい〟の連打は決して感じいいものではない。私の前だからいいけど、お客さまの前でうっかり使っては失礼です」とのこと。
相手の話を真剣に聞いていますよ、という姿勢を伝えるためにも「はい」は1回を意識するとよいでしょう。
とはいえ、親しい友人や家族など距離感が近い相手には、「はいはい」「あ〜はいはい」と連続ハイ相槌を打つことがあると思います。
もちろん相手の感じ方にもよりますが、親しい人へ連続で相槌を打つなら「はいはい」より「うんうん」のほうが温かみが伝わるような気がするのは私だけでしょうか。
「この間、こんなことがあってね」「はいはい」「この間、こんなことがあってね」「うんうん」皆さんは、どう感じますか?
「その話、前にも言ってたよね」「その話、何回も聞いた」と言われると、発言自体を否定されたようで、悲しい気持ちになりませんか?意外とグサッとくるものです。
行きつけの接骨院の院長は、「そうですよね」「僕もそう思います」とさわやかに答えながら施術をしてくれます。
治療中、患者さんと院長の会話が聞こえてくることがあるのですが、話終わった患者さんが「あれ?この話前にもしたっけ?」と言ったときも院長は「はじめて聞くお話ですよ」と優しく答えます。
私自身、院長と話している途中で「あ!この話は先週もしていた」と思い出して、「この話は先週しましたね。失礼しました」と謝ると、「そういえば、そう言っていましたね」と、優しく言ってくれるのです。
「最近忘れっぽくて」と言うと、「僕もです」と答えてくれます。「先生は若いんだから、そんなことはないでしょう」と言うと、「それがけっこう忘れるんです。この間なんて……」と、院長自身の楽しいエピソードへと会話が続いていきます。
子どもには「宿題が大変だってこの間言ってたけど、終わった?」と、過去にその人が話していた話を出して優しく会話を進めていきます。
どんなときでも、何度でも、相手の承認欲求を否定することのない院長は、患者さんの身体も心もほぐしてくれるのです。
仕事でもプライベートでも、親しい人に話しかけるときには「いま、話しかけても大丈夫?」と、ひと言聞いてから話すと、思いやりが感じられ好感を持たれます。
「いちいち確認するなんて、面倒くさい」と感じる人は多くいると思います。確かに、気さくな間柄ならそんな堅苦しいことは抜きでもいいと思いますよね。
ここでちょっとだけ、逆の立場になってイメージしてみてくださいね。
たとえば自分が何かに集中しているとき、いきなり「〇〇の件なんだけど」と話しかけられたらどうでしょう。
その前に「いま、話しかけても大丈夫?」と聞かれたほうが、いったん手を止めて相手の話に耳を傾けようとするのではないでしょうか。
私の友人は、自宅に友人を招いたとき、キッチンから顔をのぞかせながら、「○○さん、いまちょっといい?」と、声をかけます。
すると、声をかけられた人はおしゃべりをやめて「はーい、ちょっと待って」と言ってキッチンに向かいます。友人は、自分の家族がテレビを観ているときも、「いま話しかけてもいい?」と、ひと言聞くのだそうです。
「いま話しかけて大丈夫?」「いまちょっといい?」というひと言が思いやりのクッションとなり、声をかけられた人に、相手と向き合おうという心理が働くのですね。
ある寡黙な男性が言っていたことを思い出しました。
「黙っていると、彼女に『なに怒ってるの?』って言われる。怒っていないのにそう言われるのが嫌なんだよね」5分くらい沈黙すると、「なに怒ってるの?」と恋人に必ず言われるのだそうです。
このような感じで険悪なムードに発展してしまうことが多く、最終的には別れる別れないの話になってしまうといいます。
この話を男性本人から聞いたとき、彼女の気持ちはとてもよくわかるけれど、最初から怒っていると決めつけてしまうような発言にも問題があると思いました。
そんなときは、「間違っていたらごめんね」と最初にひと言添えてから「何か怒ってる?」と聞くと、自分の発言には自信がないけれど、という気持ちが相手に伝わります。
相手から話してもらうほうが楽な人もいます。そのことを考慮して、相手の好きそうなことを話してみたり、沈黙も心地よいと思うようにするとよいでしょう。
それでも相手が不機嫌そうだと感じたら、「間違っていたらごめんね」を添えてから「何か怒っている?」と聞けば、「怒ってないよ」という返事が柔らかく感じられると思います。
「間違っていたらごめんね」という言葉は、その後のネガティブ発言をフォローしてくれるのです。
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