相手の意見に反対の際、すぐに否定したくなる気持ちもわかります。ですが、まず相手の承認欲求を満たしてから反対意見を言うようにしたいものです。
「リモートミーティングが主流となったら、議論がケンカに発展することが多くなった」そう話すのは、メーカーの戦略マーケティング部でチームリーダーとして働く友人です。
全体の空気感を掴みづらいリモートのデメリットが出てしまったのでしょう。そこで友人は、ケンカになりそうになったとき次のように言いました。
「Aさんのおっしゃることよくわかります。Bさんのおっしゃっていることもわかります。でも、私はこう思います」リーダーの友人が話し出すと、場は静まったそうです。
そして、こう続けました。
「皆さん、会社でミーティングをしていたときのことを思い出してください。人と違う意見を言うときは『○○さんの言っていることわかります』『確かにそれもありですよね』と、相手の意見に共感してから言っていましたよね」ミーティングではさまざまな意見が飛び交うものですが、反対意見を言うときは、最初に相手の意見に共感するひと言を添えると、相手の承認欲求を満たします。
「〇〇さんのおっしゃることよくわかります」というひと言は、その後に伝える反対意見をオブラートに包んで相手に届けてくれるのです。
なかなか盛り上がらず空気がシーンとしてしまうミーティングもありますよね。
参加者が緊張していたり、モチベーションが下がっていたり、または、自分なんかが意見を言っていいものかと、変な不安と戦っている場合もあるのです。私自身も、数々の場を体験してきました。
その中で、とても印象に残っているミーティングがあります。
それは、四半期ごとに行われる大ミーティングでテーマは「どうやってスランプを抜け出すか」だったと記憶しています。
その日に限って手が挙がらなかったのはテーマのごとく多くの営業マンがスランプだったからかもしれません。
「〇〇さんいかがですか?」と、指名をする司会者の声も弱々しくなっていきました。
すると、隣に座っていた私の同期が手を挙げてこう言ったのです。
「キャリアの長い○○さんや○○さんの意見が聞きたいです」この発言をきっかけに、一気にミーティングは盛り上がっていきました。
ミーティング後、指名された先輩たちはうれしそうに私の同期にこう言いました。
「実は意見を言おうか迷っていたのよ。キャリアがあるからって押し付けに聞こえたらいけないしね。発言しやすくしてくれてありがとう」キャリアの長さを尊重する言葉で先輩を立て、意見を聞いた同期、あっぱれです。
世の中のIT化が急速に進み、エンジニアの採用のニーズが増えてきたとき、求人に向けて某IT企業からさまざまなデータの依頼を受けたことがありました。
当時私はITに対して恥ずかしいほど無知で、「○○エンジニア」という呼び方の数の多さに気が遠くなるほどでした。
そんなIT音痴の私に、ある日お客さまから無理難題なメールが届きました。メールを読んで青ざめた私は上司に依頼内容を伝え相談しました。そして、さらに上司の言葉に青ざめてしまったのです。
「『○○社さまのためなら、お安いご用ですよ』って返信するといいよ」と言うではありませんか。
上司いわく「難しくて面倒くさい依頼のときこそ『お客さまのためならお安いご用です』って言うとお客さまは安心するよ。
頼りがいがある営業マンだと思ってもらえる。
それだけでなく『○○社さまのためなら』と言われたら、特別な感じがしてうれしい気持ちになるもんだよね」「これを機にITエンジニアについて猛勉強します。
提出する資料を作成するときは、お力添えいただけると助かります」と切願する私に、上司は嫌な顔をひとつも見せずにこう答えてくれました。
「森さんのためなら、お安いご用ですよ」
頼み事をするときは、押しつけがましくならないことが大切です。
「この資料をエクセルに入力しておいてくれる?」「企画書を明日までにお願い」このようなお願いの仕方は、ちょっとした押しつけです。
相手が部下でも、命令的な言い方をすると、やらされ感だけを与えてしまいます。お願い上手な人は、相手のスキルとモチベーションのバランスを崩しません。
「○○さんだからこそお願いしたいんです」という「あなたは特別」という気持ちを言葉に添えて、お願いをします。
「この資料、エクセルが得意な〇〇さんにやってもらえたら助かります」「〇〇さんだからこそお願いするのだけど、得意先に出す企画書を明日までに作ってもらえたら助かります」というような感じです。
人は頼られると、自分の価値を認めてもらえた気がしてうれしく思うものです。
それゆえ「あなただからこそお願いしたい」というひと言が、特別感として伝わり、仕事のスキルとモチベーションを維持したまま、首を縦に振るのです。
リクルートのお願い上手な上司は、新人や部下に仕事を振るとき、「〇〇さんならできるよ。しっかりサポートするからやってみてほしい」と言って安心させていました。過度なプレッシャーを与えないように、モチベーションを維持させていたのです。
上司に同行を依頼するとき、皆さんはどのような言葉でお願いをしますか?「同行お願いします」という言い方は、少し強引に感じます。
上司との距離が近く、会話の流れでフランクにお願いできる空気であれば、これでもよいでしょう。
ですが、あなたから上司に「同行してほしい」とお願いするのですから、距離感が近くても、ていねいな言葉を使いたいものです。
「できましたら、ご同行をお願いしたいのですが」「ご同行していただけたら幸いです」という言い方であれば、押しつけがましさや強引さもなく、ていねいです。
実は、ここからさらにワンランクアップした印象を与えるひと言があります。
「部長(課長)に同行していただけたら、心強いです」つまり、。、「自分にとって頼りがいのある特別な存在の部長(課長)にそばにいてほしい」という気持ちを投げかけているのです。
よっしゃ、任せなさと!、モチベーションが上がり元気になるのです。
部下から「部長(課長)に同行していただけたら、心強いです」と言われることは、上司冥利につきるのです。依頼した仕事を早くやってほしいときも、相手の立場や年齢に関係なく、思いやりのある言葉を使いたいものです。
相手が部下や後輩でも、「早くやってね」だけではストレートすぎて、少々乱暴です。繰り返しますが、命令的な言い方をするとやらされ感だけを与えてしまいます。
プレッシャーを与えて相手を不安な気持ちにさせないようにしましょう。
そのためには、頭に「なるべく」というニュアンスの言葉を添えると、相手の立場に立ってお願いしていることが伝わり、お願いされた人は気持ちが楽になります。
以前は「なるはや」という言葉が流行っていました。
「なるべく早く」という意味を略した言葉ですが、同じ意味なのに「なるはやで」と言われると、それほど急かされ感がなく、やんわり感じるから不思議です。
そして、相手に不快感を与えないよう最後に「助かります」を添えると、謙虚さが伝わり、依頼された通りなるべく早く仕事をしてくれるでしょう。
「なるべく早くやってね」「なるべく早くやってもらえると助かります」急ぎの仕事をお願いするときに、「助かります」のひと言があるとないのとでは、受け取る人にとっては、感じ方が雲泥の差なのです。
仕事のみならず友人や恋人、家族間でも、同じことがいえそうです。
相手のために何かを手伝おうと思ったときでも、「手伝ってあげようか」と言ってしまうと上から目線に受けとめられる場合がありそうです。この話を20代の娘にしてみたところ、なんと「私は小学生のときから感じていたよ」と言うのです。
掃除の時間や運動会の準備をするときに、「手伝ってあげようか?」が口癖の男の子がいて、なぜ「手伝うよ」とは言わないのだろうと思ったそうです。
その男の子は、クラスメイトの女の子にしょっちゅう「手伝ってあげようか」と声をかけていたそうで、ある日気の強い女の子に「あげなくてけっこうです!」とピシャリと断られてしまったのだそうです。
きっとこの男の子は、純粋に親切にしたい一心だったのだと思います。まさか「あげようか」という言葉が上から目線に捉えられるとは思ってもみなかったでしょう。
手伝いたいときは「手伝います」「手伝いましょうか」と言って、自らの意思が相手に伝わるようにすると好感が持たれます。
そしてそこに謙虚さを感じる言葉、「私でよければ」をプラスすると、さらに印象がよくなり、相手は気持ちよく手伝わせてくれることでしょう。
たとえば、具合の悪そうな人を見かけたとき、思わず「大丈夫ですか?」と声をかけると思います。体調を気にかけてもらえるのはうれしいものです。
声をかけられた人は「ちょっとめまいがして」「実は歯が痛くて」など、答えやすくなるでしょう。ところが、「大丈夫?」という言葉だけでは、相手に伝わりにくい時があるのです。
私の友人は職場でいきなり「大丈夫?」と声をかけられ、思わず「何が?」と言ってしまったといいます。パソコンに向かい集中していた友人は、誰かに声をかけられたような気がして振り向くと、同僚が立っていました。
仕事に集中していたからか、とっさに言葉が出ませんでした。
友人いわく「同僚はお昼の時間が過ぎても、パソコンとにらめっこをしている私の健康を心配して声をかけてくれたのね。でもいったい何が大丈夫なのかわからなくて『何が?』と聞き返してしまった」とのこと。
友人を擁護するわけではなく、もし「体調は大丈夫?」と言われていたら、友人はきっと「大丈夫」と答えていたと思うのです。
誰かに「大丈夫?」と声をかけるときは、何が大丈夫なのか、体調なのか、時間なのか、仕事量なのか、相手が具体的なイメージを持てる言葉を添えるようにすると、相手は戸惑うことなく答えてくれるでしょう。
会社の飲み会や勉強会などのお誘いに、参加の意思を伝えるときは、「よろこんで」を添えて「参加します」と言うと、誘った相手はうれしい気持ちになりよろこびます。
では、断るときはどうでしょう。「参加できません」「出席できません」これだけだと、相手の気持ちを遮断するような感じで角が立ちます。
断るときも、思いやりのある言葉を添えてからにしましょう。
「誘ってくれてありがとう。この日はどうしても都合が悪くて」「誘ってくれてうれしいです。でもこの日は先約があって行かれないのです」最初に、誘ってくれたことへの御礼を添えていますね。
これなら、相手への思いやりが感じられ角が立ちません。さらに、相手が安心感を抱くようなひと言を添えると、相手はうれしくなります。
まさか!断るのに相手が安心感を抱いてうれしくなるなんて、そんな言葉があるのかと思いますよね。それがあるのです。
「今回は残念ですが」というひと言です。
「今回は残念ですが、出席できません」このように言われれば、次回への期待を相手に感じてもらえそうですよね。
誘った相手は、「また気持ちよくお誘いの声をかけられそう」と、ホッとするとともに、次回への楽しみができてうれしくなるのです。
今度も、断りかたのお話です。上司や先輩は、できれば部下や後輩からの質問にはいつでも快く応えたいと思っています。
ですが、やることだらけのときには心に余裕がなくて、「いまちょっと無理」と冷たい返事をしてしまうこともあるでしょう。リクルートでも、時々耳に飛び込んできた言葉です。
私も上司に言われたことがあります。
一瞬、突き放されたように感じる言葉ですが、日頃の円滑なコミュニケーションのおかげで、「あ、上司はいま余裕がないだけなんだ」と思うことができました。
ですが、新入社員やキャリアの浅い人だったらどうでしょう。いくら風通しのよい職場でも、いきなり上司から「いまちょっと無理」と言われたらグサッときてしまいますよね。
そこで登場するのが、新人を育てるのが得意な上司です。育成上手な上司のチームにはキャリアの浅い人が集まっていました。
「いまよろしいですか?」と声をかける新人に対して、「いまちょっと無理だから、手が空いたら声かけるね」と優しい言葉を添えていました。
このように言われたら、安心して上司からの声かけを待つことができます。手が離せないときは一度断りつつも、バサッと切ってしまうのではなく次に繋がるようなひと言を添えましょう。
大手鉄鋼会社で営業事務をしている20代後半の女性から聞いた話をしましょう。その女性は、入社当初から優しい先輩に恵まれています。
業務に対して、彼女が途中で質問をしにいくと、30代後半のその先輩は、きまって次のように言ってくれるのだそうです。
「最初は誰だってわからないよね。私も最初はわからなかったのよ」このようなひと言が、どれだけ彼女を安心させたかは、容易に想像ができます。
ご縁があり、彼女を通してその先輩とランチをする機会がありました。後輩に寄り添って温かい言葉をかける先輩のことを聞き大変感動したことを伝えると、その先輩はきっかけを教えてくれました。
「入社当初、私は先輩が怖くてね。質問しにいくと『そんなこともわからないの?』って言われる。それでもめげずにまた質問しにいくと、今度は『そんなことも知らないでよくうちの会社に入ったね』と言われる。わからないから聞いているのにね。結果、委縮して質問できなくなるからミスが多くなる。
悪循環の新人時代だったから、自分に後輩ができたときは、安心して質問ができるような言葉をかけたいと思ったの」どんなに忙しくても、自分が新人だったときの先輩を反面教師として後輩に寄り添い、優しい言葉をかけ続けているその先輩は、本当に優しくて素敵な人でした。
リクルートの上司からは多くの名言を耳にしてきましたが、頼りがいを感じた、最も印象に残っている言葉があります。
それは、「そのための上司なんだから」というひと言です。お恥ずかしいことに、私は大切な商談がある日に高熱を出してしまったことがありました。
私は、電話で上司に体調のことを告げてから、アポを延期していただけるか提案する旨を伝えました。すると、上司は「その時間なら僕が行ってくるから、書類だけメールで転送しておいて」と言うではありませんか。
驚くことに、私の代わりに上司はお客さまの所へ足を運んでくれたのです。大事なときに熱を出して申し訳ない気持ちを抱え、数日後に出社すると真っ先にお詫びと御礼を言いました。
すると上司は、こう言って私の心を軽くしてくれました。
「気にしなくていいから。そのための上司なんだから」なんてカッコいい上司なのだろうと、このときの感動は一生忘れないと思います。
頼りがいのある上司は、部下のピンチを救ったあとに、部下に気をつかわせないように安心させてくれるのです。
「自ら率先して動いてくれて、柔軟性のある人になってほしい」これは、第二新卒層と呼ばれる20代後半くらいまでの若手を数名採用することができた外資系企業の人事部長に、「彼らにはどんな人に成長してもらいたいですか」と質問をしたときの答えです。
では、若手社員にどのようにして率先力と柔軟性をつけていくのでしょうか。
人事部長に聞いてみると、「入社して半年後くらいから、上司に質問をしてきたときには、自分で考えてもらうようにしている」というのです。
それはちょっと酷なのでは?と思いましたが、聞いてみると言い方には十分気をつけていることがわかりました。
「まずは、自分で考えてみて」と、「まずは」を添えるのだそうです。
確かに「自分で考えて」だけだと、突き放す感じになります。最初に「まずは」を添えることで、上司は自分が成長するために言ってくれているということが伝わるのですね。新人のときはわからないことや不安なことがあれば、真っ先に上司に相談したくなるものです。
そんなとき「まずは、自分で考えてみて」と言われれば、決して突き放しではなく、最後には上司が手を差し伸べてくれることを前提として言っていることが伝わります。だからこそ、不安な気持ちをコントロールしながら成長していけるのです。
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