MENU

「『ここでやめたら、負け犬』という思いが消えない」カフェ経営者   40代  福本良一さん(仮名)

新型コロナで、売上が限りなくゼロに!  お金に関する社長さんの悩みの事例。2つめは、いきなりディープな話で恐縮ですが、急激な売上の減少によって、会社の清算に踏み切った社長さんの事例です。  地方でカフェを経営する社長だった福本さん。  カフェの売上は 1店舗目から好調で、福本さんは銀行から多額の融資を受けて、店舗数を 5店舗まで増やしていました。  そんな、福本さんの足元をすくったのが、 2020年の新型コロナウイルスの襲来です。「まさに、急坂を転げ落ちるように売上が減りました。最初は、一時的なものだと思っていたんです」  この数字になったら危ない……と考えている数字よりも、はるかに少ない売上が毎日のように報告されてきて、「明細を見るのが恐怖でしかなかった」とか。   1日の来店客が 2組だけなど、見たこともない数字が数週間も続いて、ほとんど眠れない日々だったといいます。「一気にメンタルをやられてしまった」と福本さんは振り返ります。  そして、多くの起業家がそうであるように、ある月の貸借対照表(バランスシート)を見た瞬間、「これはつぶれる」と手に取るように未来がわかったそうです。「ここでやめたら、負け犬」という思い  事態がこれ以上、悪化しないうちに会社を清算しなければ……。  そう思った福本さんの心にブレーキをかけたのが、社長としてのプライドでした。「このまま続けたら大事な社員や取引先にも迷惑がかかる、という状況になった時点で、会社を清算することは覚悟しました。でも、なかなか踏み切れなかったのは、見栄やプライドが邪魔していたからです」「見栄やプライド?」「実は私、短期間で成功したので、地元では、成功者というか、名士みたいな見られ方をしていたんです。そんな自分が、たとえコロナのせいとは言え、資金繰りに追われているなんて、知られたくなかった。『ここでやめたら負け犬だ』って思っていました」「そうですね。プライドが粉々になってしまいますものね」「そうなんです。周りからの尊敬のまなざしがなくなって、もしかしたら侮蔑の視線に変わるかもしれない。私のカフェが多店舗展開し、急成長したことに、よく言う人ばかりではありませんでした。『やっぱりね』っていうエサを与えるのも悔しかった。会社を清算する前は、そんなどうでもいいことに悩んでいました」「どうでもよくないですよ。それがバネになって成功したんですから。それにしても、よく見栄やプライドを捨てて、清算の決断をされましたね」「いったい自分にとって一番大切なものは何か?  それを真剣に考えたら、『社員さんたち』という答えに至ったんです。そこがクリアになったら、やはり、彼らを守るためにも、まだ、お金が残っている今、会社を清算するべきだという結論になりました」「素晴らしい!」  私は、思わず声をあげてしまいました。  福本さんが素晴らしかったのは、「地元の人たちから馬鹿にされるかもしれない」という葛藤を乗り越えて、「自分の弱さ」をさらけ出したことです。他人の目なんて、所詮は他人の目!  社長としてのプライド。  社長である以上、多かれ少なかれ、お持ちのことと思います。  周りから「成功者」として見られていることを意識するあまり、このプライドや見栄が邪魔をして、資金繰りが苦しくなっていたのに、生活のレベルを落とすことができず、傷口を広げてしまうという話を聞くこともあります。  ましてや、会社をたたむなんて「馬鹿にされるのではないか」って思ってしまう。  でも、「馬鹿にされるのが嫌だ」と思ってしまうのは、どうしてなのでしょう?  その元は、「自分を認めてもらいたい」とか「自分を大切にしたい」という思いだったりします。  そういう、目には見えない「自分の価値」が形になったものがお金です。  ですから、お金が入らなくなると、自分の価値が下がったように思えて、「馬鹿にされるのでは?」なんて考えてしまう……。  でもこれ、 100パーセント「自分サイドの問題」なんです。「他人の目が気になる」といっても、他人の目なんて、所詮は他人の目。  自分が思うほど、他人は自分に注目していないものです。「アイツ、会社を作って繁盛してるらしいぜ」「ふーん」「アイツの会社、つぶれたらしいぜ」「ふーん」「アイツ、また会社を興して、復活したらしいぜ」「ふーん」  せいぜい、その程度の反応です。  みんな、自分の人生を生きることに忙しくて、基本的に、他人の人生になんて、たいして興味を持っていません。  大事なのは「他人の目」ではなく、「自分はどうしたいのか」ということです。  見栄やプライドを捨てて、会社を清算する決断をされた福本さんの選択は、実に賢明でした。業績ではなく、素晴らしいのは「社長自身」

会社ひと筋でやってきた社長さんのなかには、会社がつぶれた途端に、自分もつぶれてしまうという方もおられます。「お金を持っていること」がモチベーションの方は、お金がなくなってしまうと、自分までなくなってしまうのでしょうか。  業績が良いときはいいんです。  でも、業績が悪化して資金繰りに追われると、自分がどこかにいってしまう。  私は、業績が悪化して、あるいは、会社が倒産して、自分を見失ってしまった社長さんに、よくこんなことをお伝えしています。「会社をやってきたのは社長さんです。業績とかは関係なく、ここまでやり遂げてきた、ここまで頑張ってきた。辛いことも、悔しいことも、すべてご自身で乗り越えて今がある。だから、社長さん自身が素晴らしいのです」  業績は時代の流れやその会社を取り巻く環境、経済の動向で大きく変わります。誤解を恐れずに言えば、半分は運みたいなものです。もし、コロナがなければ、福本さんのカフェだって、今も盛況だったはず。業績なんて、ただの結果でしかありません。  つまり、業績が悪化したって、社長さんが負け犬になったわけではありません。  たまたま、そういう結果が出ただけのことなんです。業績の悪化くらいで、社長をやってきた方の素晴らしさは揺るぎません。それまで培ってきた経験や、積み重ねてきた実績は、その社長さんに実力がある「証」です。今まで頑張っきたご自身が、何より素晴らしい存在なのです。  自分の弱さをさらけ出し、社員への給与や退職金の支払いを確保できる段階で会社を清算した福本さんの後日談です。資金繰りの不安から解放されて、今は、残ってくれた仲間と「新しいことをはじめよう」とワクワクする日々だとか。 「1度、年商 1億円超えを経験したことがあると、また 1億円稼げるという自信が持てるんですよ」と、力強くおっしゃっていました。  自分の素晴らしさを、自覚されている言葉だと思います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次