文句は、整理してからテーブルに乗せる 高度成長期の「社長」には、ワンマンというイメージがありました。 言いたいことをガンガン社員に伝えて、グイグイ引っ張る。そういう社長さんが成功する時代でもあったと思います。しかし、今、中小企業の社長さんが同じことをやったら、次々に社員が辞めてしまうでしょう。たとえば、不満を直接伝えようものなら、「うちの社長は小さいやつ」などと言われかねません。 そういう場合は、 1人のときに、遠慮なく文句を言ってくだい。 口に出すだけで足りなければ、新聞紙を丸めて段ボール箱を叩きながら言ってもいい。お金を払って、お茶碗とかを自由に割ってストレスを解消できるお店もあります。私の友人は、そこに行ってお茶碗を割ってみたそうで、「スッキリした!」と言っていました。 自己啓発のセミナーではよく「ネガティブなことは口にしないでください」なんて言っていますが、そんなの無理だと思います。だって人間なんですから! 私に言わせれば、溜め込まずに吐き出すほうが、ずっと、ボジティブです。 同調圧力が強い日本では、事なかれ主義が重要で、「怒り」の感情は悪者になりがち。 でも、「怒り」は、社長さんにとってパワーの源になることもある大切なものでもあります。ですから、怒りは溜め込まずに、口から外に出すことで、心の中を軽くして、怒りの奥にある「意欲」を取り戻せばいい。 感情コンサルにこられた小西社長は、「我慢できない行動をとる社員がいて、どうしても本人に本音を伝えたい」とのことでした。「わかりました。では、社長さんが抱えている不満を、その社員さんに伝えていただいてもよいです。ただし、伝え方に注意が必要です」「伝え方? 不満にも正しい伝え方があるのですか?」「あります。その前に、 1人のときに不満を言うと、スッキリするだけでなく、もう1つ、素晴らしい効果があります。それは、『相手のどこがそんなに嫌なのか』が整理されることです。小西さんは、その社員のどこがそんなに嫌なんですか?」「そうですね。私がミスを注意してもヘラヘラしていて、まったく反省しているように見えないところですかね。昨日もそんな態度をされて腹が立ちました」「その態度が、どうしてそんなに腹立たしいのですか?」「なんだか馬鹿にされているような気がするし、ちゃんと反省しないと、彼だって、次につなげられないじゃないですか」「なるほど。では、その事実だけを伝えるようにしてください。たとえばこんな感じです。『私は昨日、あなたが反省していない態度を見たときに、実はすごく腹が立ったんだ。ちゃんと反省しないと、同じミスをして周りに迷惑をかけて、あなたの立場が悪くなるんじゃないか? だから、しっかり反省してほしいと思ったから腹が立ったんだ』」「怒るのではなく、事実を伝えるんですね」「そうです! 本音を伝えるときは、感情をぶつけるのではなく、事実をテーブルに乗せるイメージで。感情のボールを投げつけても、相手は反射的によけてしまいますから」「なるほど」「あと、出だしは『私は』です。あくまで『自分は、こう感じたけれど、どうかな?』という事実をテーブルの上に乗せてください。その思いを受けとるかどうかは、相手の自由にさせます。そうしないとコントロールになってしまいますから」「わかりました」本音を伝えると、本音が返ってくる 私とこんな会話をした小西社長は、そのあと、また同じ社員の態度にカチンときたとき、その場ではグッとこらえて、翌日、その社員を会議室に呼び出したそうです。 そして、なんと、その社員に、お茶を入れてあげたのだとか。 そのうえで、「実は昨日、私はすごく腹が立ったんだ。なぜかというと……」と話をしました。怒るのではなく、自分の思いをテーブルの上に乗せてみたのです。 すると、相手の社員は、「いや、自分は、まったくそういう意図はなくて……」って、どうしてそういう態度をとってしまうのかを説明し出したそうです。 それで、お互いに考えていたことがわかって、関係が前に進んだのです。 不満は、お腹に溜め込まずに、 1人になったときに吐き出す。どうしても本人に伝えないと気が済まないときや、相手に伝えたほうがよいときは、相手に伝えるのも、ありです。 ただし、怒りの感情のまま相手に伝えることは、思いっきり相手めがけてボール投げつけるのと同じ行為です。怒りを整理して、「私はこう感じた」と伝えれば、相手も受け取りやすくなるものです。 本人に伝えづらいからと、別の人に伝えると、それが別ルートで本人の耳に入って、人間関係が破綻してしまうこともあります。「伝えるなら、本人へ直接」が原則。そして、小西社長の例のように、自分の気持ちを、テーブルの上に乗せるように伝えてください。「自分はこういうところが傷ついて、こういうところが嫌だったんだよね」って。 さらに、できれば、「早く一人前になってもらいたいから、つい強く言ってしまったんだけど」って、責めてしまった自分の思いをセットで伝える。 そうすれば、相手は受け取りやすくなって、わかってくれるものです。こっちが本音を伝えると、相手からも本音が返ってきます。本音のキャッチボールができると、深く理解しあえるようになります。社長だって人間です。社員に本音を伝えてもいいんです。
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