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●「苦しまないと成長できない」という誤解

「苦しまないと成長できない」という誤解悩みに向き合うときは、まず「安心すること」  第 2章は、「言いたいことが言えない」「自分の弱みを見せられない」という事例を3つ紹介しました。「社員よりもプレッシャーを感じるから経営者だ」というわけではないし、「弱みを見せないことが美学」でもない。社長だって、もっと自分に素直になってやっていくほうが自分らしく過ごせるということ、伝わりましたでしょうか?  この章の最後に、日本人に特有の思い込みである、「苦しまないと成長できない」という誤解について触れたいと思います。  ある社長さんを感情コンサルしたとき、その方がこんなことをおっしゃいました。「今回、こんなたいへんな苦難がありました。だから、変化も大きいと思います」  この言葉を聞いた私が、最初にやったことがあります。  それは、この社長さんの「苦しまないと成長できない」という思い込みを外すことでした。  悩みを解決したいとき、最初にやるべきことは、「安心すること」です。  人は、悩んでいるときって、うつむき加減で呼吸も浅くなります。逆に、安心すると深い呼吸ができて胸も開きます。  これが、問題解決ができる姿勢です。  ある出来事が起こったとき、思い込みによってマイナスの感情が出て安心できないと、人は解決のための行動ができなくなります。  逆に、マイナス感情が出ても、その感情を吐き出したり、時間が経って落ち着いたりして安心すると、心がフラットになって、次の行動に移ることができるのです。  ですから、感情コンサルでは、感情を癒すところからスタートします。  それにしても、なぜ、「成長」と「苦しみ」はセットになってしまったのでしょう?  思うに、トラウマを外すときって、本人にとって苦しかった出来事から思い起こして、心の深い部分に入るから、「トラウマから抜けて成長するためには、苦しまなければいけない」と誤解されてしまったのかもしれません(感情コンサルで、相手の方に、これに似たセッションをするケースがありますが、苦しい作業にはなりません)。  あるいは、ある世代の社長さんには、高度成長期に流行った、『巨人の星』(古くてすみません)に代表されるスポーツ根性漫画の影響もあるのかも、と思います。「苦しまないと成長できない」と思っていると、苦しみを引き寄せる  もちろん、実際には、苦しまなくても成長はできます。  繰り返しになりますが、感情コンサルのプロセスには、「苦しむ」なんていうステップはありません。  もっと言ってしまえば、「苦しまないと成長できない」って思い込んでいると、苦しみを引き寄せてしまいます。  これは、父の会社で七転八倒していた頃の自分がそうでしたから、体験としてよくわかります。  私が入社した当時の父の会社はとにかく忙しく、私も父母と同じように、午前 1時 2時まで働くのが当たり前でした。「社長の娘なんだから、普通に働くだけではダメ、忙しく働いて当たり前」と思い込み、弱音も吐かずに、毎日、頑張っていました。   24歳で4つ年上の夫(現在の二光光学の社長)と結婚しましたが、妊娠後も大きなお腹をかかえて働き続けました。出産の日も、午前中まで仕事をしていて、お昼ごはんも食べて、昼休みに少し体調がおかしいからと病院に行ったら、「もうすぐ生まれますから、すぐ入院してください」と言われて、その日の夜に出産したんです。  それほど忙しくても、社長の娘だから当然と思っていました。今、思えば、自ら苦しみを引き寄せていたと思います。  この異常なほどの忙しさというのは、「中小企業の社長(と家族)あるある」ですよね。  私には、まだ夫がいたので、ただ黙って見守ってくれていただけでも大きな支えでした。もし、夫がいなかったら、育児ノイローゼで本当に危なかったと思います。  身を粉にして働いて、言いたいことも言えず、さらに苦労が苦労を呼び寄せてしまう。  まさに負のスパイラルです。  ですから、まずは、とにもかくにも、自分をねぎらって「安心」しないと、この負のスパイラルから抜けられないんです。「悪いこと」は、ただそれだけの事実でしかない  感情が落ち着いて、冷静に周りの出来事を感じると、実は、良いことも悪いこともだいたい均等に起こっていることがわかります。  実は、心が落ち込んでいると、そのうちの「悪いこと」ばかりに目がいっているだけなんです。  有名な、「目をつぶって部屋のなかにある赤いモノを思い出す」という実験があります。意識していないと見えていなかった赤いモノが、目を開けて意識した瞬間から目につくようになります。あるブランドの商品を買おうと思っていると、街角でそのブランドの商品を持っている人が、やけに目につくようになるのと同じこと。  意識するから目につくだけで、悪いことのほうが多いわけではないのです。  まずは心を落ち着けて、「良いこと」も「悪いこと」も同じように起こっているな、と認識したら、次は、問題解決です。  問題は、ただの事実であって、「苦しみ」と連動していなければ、「あっ、それはこうすれば回避できるね」とか「こういう手を打てばいいよね」って冷静に対処できるものです。  それどころか、「問題が起こったということは、見直せというサインだね」って、前向きにとらえることもできます。

 痛い思いをしなくても変化できるなら、そっちのルートのほうがいいですよね。  今の若者たちは、すでにそのことを知っています。「苦しみを通して成長しよう」「可愛い子には旅をさせろ」なんて、昭和チックなことは考えていません。  それより効率を重視している。  それなのに、社長さんが古い思い込みでコントロールしようとすると、うまくいかなくなってしまうのです。「いや、自分はそれで成功したんだ」という社長さんも、いらっしゃることと思います。かつては、それでよかったのでしょう。  でも、時代は変わっていて、自分のコピーを作っても、未来に通用するとは限りません。  かつて、ご自身が歯を食いしばって頑張ってきたことは、とても尊いことです。  その頑張った奥にある、「会社のため」「社員のため」「ご家族のため」などの気持ちのさらに奥にある、そもそもの「温かい想い」を思い出してください。  次の時代へ伝えることは「やり方」ではなく「あり方」です。  社長さんも、自分に素直になりましょう。  素直な人のもとには、素直な人が集まります。  弱みを見せあって、お互いの強みでカバーし合えば、全体として強い会社になるはずですから。

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