自分がやりたいことをやると、孤立する?「社員のためを思って、正しいことを伝えているのに、言うことを聞かなかったり、反論したりしてくると頭にくる」 中小企業の社長さんなどから、よく聞く悩みです。 こっちが言っていることが正しいという確信があればあるほど、「わかりもしないくせに、若造が何を言ってやがる!」なんて思ってしまうもの。 そんなときは、どのようにして感情を整えればよいのでしょう。 これからご紹介するのは、子どもの頃に経験したある出来事が一種のトラウマになってしまい、それが元で、トラブルが絶えなかった社長さんの事例です。 その社長、近藤さんは、小学 5年生まではとてもわがままで、自分勝手な少年(本人談)だったそうです。 よく言えばリーダーシップがあったのでしょう。自分が野球をしたくなったら、「野球やるぞ!」って言ってみんなを引き連れて野球をやる。サッカーをやりたくなったら「今度はサッカーやるぞ!」って言って、サッカーをはじめる、とそんな具合に、自分がやりたいことに周りを巻き込んでいました。 でも、小学 5年生くらいになると、友だちにも自我が芽生えてきます。 それまでは、黙って近藤社長の言いなりになっていたものが、「なんだよ、アイツばっかり威張りやがって」とバッシングを受けるようになり、気がつけば仲間外れにされて、ひとりぼっちになってしまったのだとか。 ここで、近藤社長の心のなかに、「楽しいことをやると、ひとりぼっちになる」という刷り込みが生まれました。本当は、「楽しいことをやると」ではなく、「周りのことを考えず、自分勝手なことをやると」だったのですが、勘違いして刷り込まれた……。 これによって、近藤社長はその後、大人になっても、「自分が楽しいことを封じ込めて、周りを楽しませることを優先する」という考えに縛られてしまったのです。「反論されると我慢できない」という心理の正体 成長して大人になった近藤社長は、数年前にオンラインサロンの運営を始めます。 集客も兼ねて発信しているブログは、「読者を楽しませる」という思いから、しっかりと構成を考え、ときには 4時間もかけて執筆するそうです。 ところが、このブログに、「それは違うんじゃないか」とネガティブな書き込みをされることが多々あるとのこと。そのたびに近藤社長は深く傷つき、怒りが湧いてきて、つい反論をして、ネットで言い合いのようになってしまうことがあるのだとか。 そんなことが月に 1回くらい起こってしまう、というのです。近藤社長の事例はブログへの書き込みですが、こういう「反論に対して我慢ができない」という心理は、いったいどこからくるのでしょうか? その反論に対する怒りの正体は、実は「自己犠牲」である場合が多いのです。 近藤社長は、小学生の頃の体験により、自分が楽しいことをやるのを抑え、周りが喜ぶことを優先するようになりました。そういう構図には、自己犠牲が発生しやすい。 すると、どうなるかというと、「自分は、みんなのために時間をかけて苦労してやってあげているのに、それに対して、反論してくるって、いったい、どういうこと!」と、そんな発想になってしまうのです。 近藤社長の場合は、考え抜いて書いている自分の意見は、正しいことを書いていると思っていますから、余計に腹が立ったのだと思います。 中小企業で、経験豊かな社長さんが「社員のためを思って、指導のつもりで言ったこと」に対して反論されると、カチンとくるのも同じことです。 では、このような怒りの感情は、どのようにして整えればよいのでしょう? 私の知人で、誰からどんな反論されても「いい意見だねぇ」なんて、いつもニコニコ聞いている人がいます。その人に、「自分の意見を否定されても、平気なんですか?」と聞いてみたら、こんな答えが返ってきました。「だって、真実はいつも1つじゃないと思っているから!」 この考え方が、まさに、答えです。 いっぽうが「正論」だと言い張るから、もういっぽうが「間違い」になってしまう。 以前に、私の SNSにも、私の書き込みについて、「こんなことを書くなんて、どうかと思います」というコメントが入ったことがありました。 それに対して、私はお礼の返信をしたんです。たしか、「人の数だけ意見はあると思うので、素敵な意見をありがとうございます」と。 結局、その人は、向こうからフェイドアウトして、それっきりになってしまいましたが、そのときの私の返信は、皮肉でもなんでもなく、本心でした。 誰のどんな意見にも、たいがい正義はあります。ケンカも、戦争も、正義対正義だと、ややこしくなります。「自己犠牲をしてまで正論を伝えているのに」と、自分の正義を振りかざすのではなく、相手の正義も「それもありだね」って認めてあげれば、争いになりません。 近藤社長の場合は、まず、小学生の頃の勘違いによるトラウマを癒すところからはじめました。「近藤さんは、本当は友だちとワイワイやるのが好きなので、ひとりぼっちになるのが嫌だったんですね。ひとりになるのが嫌で、怖くて、それを回避するために、自分が楽しいことをしないで、相手が楽しいことを優先するようになってしまったのですね」「そうですね。そうだと思います」「つまり、自分軸ではなく、他人軸に合わせているということですよね。それって辛くありませんか?」
「辛いです」「ですよね。辛いですよね。今まで本当によく頑張ってきましたよね」「はい。頑張ってきたと思います」「まず相手、ではなくて、まず自分、というように順番を変えないと、ずっと辛いままの状態が続いてしまうと思うんです」「そうですね。私も、そう思います」「そうなんです。ここでよく考えてみてください。よくよく考えると、小学 5年生のとき、近藤さんが楽しいことをやったからひとりぼっちになったのではなくて、自分勝手なことをしたからひとりぼっちになったんです。自分の思いを大切にして、相手の思いも大切にできたら、誰も近藤さんのもとを離れることはないと思います」 子どもの頃の出来事が、ちょっとした解釈のボタンの掛け違いによってトラウマになってしまった近藤社長でしたが、この感情コンサルによって、「自分はどうしたいのかをまず考えながら、周りの人たちも喜ぶことをやればよい」、つまり、まずは自分の思いを大切にすることだと、気づくことができました。 やっと、自分が楽しめることを優先できるようになったのです。 結果として、オンラインサロンの利益もアップしたとか。「今までは、周りにどう合わせればよいかと、そればかり考えていましたが、すごく、ラクになりました」と、近藤社長。 何よりも大きかったのは、反論に対して、必要以上に傷つき、反応してしまっていた原因が読み解けたことだったそうです。
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