06「穴熊社長」は会社をつぶすできる社長は「独断」で決めない社長はすべて一人で決めなくてはいけない、と思い込んでいませんか?しかし、正しい方向づけのためには、「独断なんてもってのほか」なのです。 社を出て、「人」「現場」「お客さま」を自分の目で見よ 決めること、考えることが社長の仕事だからといって、社長室に閉じこもってばかりいたのではダメです。 経営のヒントは、社長室にはありません。外にあるのです。 まずは、何よりも、お客さまを訪ねたり、現場を見たりして、いまどんなことが求められ、何が問題かを知ろうとする。あるいは、新しくできたものを見に行ったり、体験したりして、世の中の変化を実感する。 さらには、有益な知識や情報を持っている人に会い、話を聞く。優れた知見を持つ専門家の意見を聞く。経営者仲間と定期的に会って情報交換をするなどして、知識や情報のブラッシュアップを図る。 そのなかで、正しい判断をするうえでの気づきや発見が得られるのです。 私もシアトルに行ったとき、「レジレス・コンビニ」と言われる Amazon Go(アマゾン・ゴー)ができたと聞いて、立ち寄ってみたことがありました。 スマホでアプリを入手した後、店内に入り、商品を手に取り、それを持ってゲートを出てくるだけで買い物ができる。来店者と商品をカメラとセンサーが認識し、その人の Amazonアカウントから自動でクレジット決済されるというシステムです。 当時はまだ精度の面で少々難ありでしたが、「こういうものなのか」といちはやく実体験できたのはまさに「百聞は一見に如かず」で面白かったです。 同行していた経営者の方も、興味津々で買い物をしていました。 このように、知っているのと体験するのとでは、得られるものが大違いです。 一倉定先生は、「穴熊社長は会社をつぶす」と言われていました。 穴熊のように、社長室にこもってばかりいる経営者への訓戒です。 外に出て、現場、お客さま、社会をよく見て、知っていなければ、正しい判断をすることはできないのです。 優れたリーダーは「独断」しない 戦後、近鉄グループを大きく育て上げ、「中興の祖」と言われた佐伯勇さんという名経営者がいました。この方が、「独裁すれども、独断せず」という名言を残されています。 決断に当たっては、まず社内外の多くの意見を聞く。社外の専門家だけでなく、社内の意見も聞き、周到に知恵を集めたうえで、いざ断を下すときは、自分一人で決める。 衆知を集めたうえでの決断は「独断」ではないのです。「見ること博ければ迷わず。聴くこと聡ければ惑わず」 松下幸之助さんが『道をひらく』のなかで、この古言を引きながら「衆知を集める」ことについて、こう書かれています。「相手がどんな人であろうと、こちらに謙虚な気持ちがあるならば、思わぬ知恵が与えられる。つまり一人の知恵が二人の知恵になるのである。二人が三人、三人が四人。多ければ多いほどいい。衆知を集めるとは、こんな姿をいうのである」 決めるまでは、いろいろな人から知恵を集めることがとても大事なのです。 社員から忌憚なく意見を出してもらうためには、社員が役職に関係なく、自由にものを言える雰囲気を普段からつくっておくことです。 いつも偉そうにしていて、「俺の言ったことは絶対だ」なんて思っている、意に沿わない意見を聞くと不機嫌になる、こんな社長には誰も意見など言いたくなりません。権威的な社長ほど、周囲が反対意見を言わなくなるので、間違うのです。 普段から、考えていることを周りに話し、「いま、こんなことを考えているんだけど、どう思う?」と訊いてみるなどして、フランクに話しやすい環境をつくっておかないといけません。 取り巻きの役員、社員たちが、「それはいいですね、さすが社長!」とおべんちゃらを言っているような組織はダメです。
また、なまじ何か言ったら、自分がやらされることになるから言わないでおこうと、社員が縮こまってしまうような組織もダメです。 部下に意見を求めても、具体的な意見が出てこない場合、社長自身の態度や社内の雰囲気に何か原因があると考え、反省したほうがいいです。 謙虚な気持ちがないと、衆知は集まりません。 ただし、衆知を集めるということは、なんでも人の意見を受け入れるということではありません。自身の正しい信念で判断するのです。そのためには、正しい考え方や原理原則をいつも勉強している必要があります(後記参照)。 そして、「独裁」です。決めたことはきちんとやらせる。「独裁」というとワンマン社長のようであまりイメージは良くありませんが、決めたことをとことんやりきるためには、独裁のできるリーダーが必要です。決めたら、自分の責任のもと、四の五の言わさず全力でやる、やらせる。 そこで部下にきちんとやらせられない人は、腰くだけ。本当の優れたリーダーではないのです。 「納得感」を持って組織を動かす 一人の知恵には限りがあります。 会社経営の場合、独断専行による失敗をすれば、多くの人に迷惑をかけてしまいます。もちろん自分も何もかも失うことになるかもしれない。 決断するまでには、できるだけいろいろな意見に耳を傾けなければいけない。 議論をきちんとする、ということがとても大切です。 ガバナンスの本質とは、「会社の存続のために、議論されるべきことがきちんと議論されているかどうか」だと言いました。 決める前に、きちんと議論がなされない組織は、将来が危ういのです。 どんな判断も、実行前はすべて「仮説」です。どれだけ情報収集し、分析・研究した結果であれ、それはやっぱり仮説でしかないわけです。 社長が「絶対いけるぞ」と確信を持っていたとしても、一つの仮説にすぎない。 その仮説に、やる前から「ハズレ要素」があるのであれば、それをきちんと指摘し、検討し直さないというのは、会社に対して不誠実な姿勢なのです。「社長が言っているから」ではなく、みんなが納得して前に進むことが大事なのです。 議論を重ねないと納得できないというのが、組織の正しい姿です。それもスピード感を持ってです。それをどこかで怠ると、道を誤るのです。 Point社長は「穴熊」にならず、衆知を集めるべし。そして決めたことはきちっとやらせること。
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