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09先人の歴史から「普遍的思想」を学べー人生と経営の軸となる「座右の書」のすすめ

進むべき道に悩んだとき、よりどころとなる考え方があれば、ブレることなく物事を判断できるようになります。

目次

人は揺れてもいい。ただし、「正しい思想や哲学」を心に持て

どの方向に進むべきか、なかなか答えが出ない……。

判断に悩んだときは、「この会社の原点は何か」をいま一度考えてみてください。

そもそもの志、存在意義、目的を思い出し、原点に立ち返る。

「いま向かおうとしている道は、会社のミッション、ビジョンに合っているか?」と考えるのです。

そして、人間としての生き方の原理原則も大切です。

第1章で、私の人生の師として、藤本幸邦先生のお名前を挙げました。

その老師が、二人でタクシーに乗っているときに「振り子の原点」という話をしてくださったことがあります。

「人というものは揺れるものだ。揺れない人は面白くない。だが、振り子は揺れるときに必ず原点を持っている」

人は、揺れてもいいのです。

しっかりとした「考え方の原点」を持っていれば、揺れても結局は落ち着くべきところに考えが落ち着くのです。

自分のものの考え方の軸、ベースとして、正しい思想や哲学を持っていれば、根本の価値観がブレてしまうことはない。

判断に、整合性、一貫性が保たれ、大きな間違いをしでかすことはないのです。

判断に迷うとき、これほど心強いものはありません。

では、正しい思想や哲学とは何なのか。

それは、長い歴史のなかで、多くの人々が正しいと支持してきたものの考え方です。

仏教、儒教、老荘思想、あるいはキリスト教、古代ギリシア哲学……時代を越え、文化の壁を越え、多くの人が「正しいものの考え方」として親しみ、学んできたもの。

そういう普遍的なものの考え方を自分のものとし、心の基軸とするのです。

本当に成功する経営者は皆、普遍的な価値観を持っている

自分を支えるベースとなる思想をどう身につけるか。

まずは、長い間多くの人が良いという本を読むことです。それも何度も読む。それにより、普遍的な考え方を身につける。そして、それを実践することです。

例えば、渋沢栄一がものの考え方の原点にしようと思ったのは『論語』でした。

『論語』の教えを人生のバイブルとすると決めたのです。

そして、それをビジネスの場でも実践しました。

松下幸之助さんは、一時期、お坊さんと一緒に暮らしていたことがありました。

仏教的感覚もさることながら、神道の考え方にもなじんでおられたようです。

京セラの名誉会長、稲盛和夫さんは、かつて、職を離れて得度され、臨済宗のお寺で仏教修行されています。

若いころから仏教思想に心惹かれていたといいます。

このように、成功する経営者は皆、普遍的な価値観をしっかり身につけています。普遍的思想をまずしっかり学ぶ。そこから自分の人生哲学ができていくのです。

稲盛さんが経営哲学を教えていた盛和塾は、2019年の解散時には会員数が約1万5000人になっていました。

中国でもっとも熱心な参加者の一人だったのが、アリババの創業者、ジャック・マー氏だったのは有名な話です。

経営にはテクニック、スキルも必要です。しかし、それ以前に、人間としての生き方のベースを持たないといけません。

松下幸之助さんの『道をひらく』や、稲盛和夫さんの『生き方』という本がなぜロングセラーになっているのか。

その理由は、普遍的な思想を学び、経営者としてそれを実践し、成功されてきた、その生き方の哲学が分かりやすく詰まっているからです。

論語などの古典が難しい人は、松下さんや稲盛さんの本を勉強するといいでしょう。

渋沢栄一しかり、松下さんや稲盛さんしかり、優れた経営者が尊敬されているのは、その人が成し遂げた功績だけでなく、人間として尊敬されるだけの資質を兼ね備えているからです。

その原点には、「正しいものの考え方」があるのです。

骨太な思想を学ぶには「この3冊」がいい

「とはいえ、どんな本を最初に手に取ればいいか分からない……」そんな人に私がお薦めしたいのはこの3冊です。

  • 1.『論語の活学―人間学講話』(安岡正篤プレジデント社)
  • 2.『論語と算盤』(渋沢栄一角川ソフィア文庫)
  • 3.『修身教授録』(森信三致知出版社)

私は銀行員をしていた20代のころ、上司との人間関係で悩んだことがきっかけで、儒教や仏教などの本を読むようになりました。

儒教を学ぶきっかけになったのは、安岡正篤先生の『論語の活学―人間学講話』でした。いろいろな人が解説している『論語』の本を読みましたが、安岡先生の本は深さが違います。ロングセラーで、最近は新装版が出ています。

『論語』の教えとビジネスが合うのかという疑問に、自分自身で答えを出したと言いきっているのが、渋沢栄一の『論語と算盤』です。

「論語」と銘打たれていますが、『孟子』『易経』などからも幅広く知恵を引いています。

談話をまとめたものですが、漢語表現がとっつきにくいという方は、現代文に読み下した本もいろいろ出ています。

森信三先生の『修身教授録』は、師範学校で教職に就く人のために人間本来の生き方を講義した本で、これもロングセラーです。

こういう生き方をすることが人間として正しいのだ、と指し示してくれている本です。まずはこの3冊を読んでください。

ものの考え方の土台がしっかりすると思います。

「松下幸之助さんのように考えられるようになりたい」

私が人生の師である藤本老師と出会ったのは、35歳のとき、ある会社のパーティーでした。

それ以後、生きていくうえで根源的な教えをたくさんいただきました。

なぜ私を可愛がってくださったのか。

考えられるのは、若いころから儒教や仏教のことを多少なりとも勉強していたということ、そして、もっともっと学びたいという気持ちが強くあったこと、この2つのおかげだと思っています。

藤本老師は、生きた心の師匠でしたが、私が本を通じて師と仰いでいたのは松下幸之助さんとドラッカーです。

経営コンサルタントとして独立する際、松下幸之助さんの本、ドラッカーの本を徹底的に読み、尊敬する2人の思考パターンを身につけたいと考えていました。

いまも松下幸之助さんの『道をひらく』を読み続けています。もう140回以上は繰り返し読んでいるのですが、いくら読んでも十分だという境地には行きつけません。

常に「自分はまだまだだなあ」と痛感しています。

謙虚な気持ちを失わないため、これは私にとって、とてもいい薬。

有難い存在です。

Point

生き方と経営のベースとなる思想、哲学を持つこと。これは成功への大切な一歩です。

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