会社の業績がいいか悪いかを外から判断する1つの基準に、その会社が社員を増やしているかどうかというのがあります。売上が伸びている会社は、ほぼ例外なく人手が必要になってくるからです。 ただ、企業のコストのなかで人件費は大きな割合を占めるため、しっかりとした分析に基づいたうえで、社員を増やすという決断をすべきです。 建築業を営む M社長は、総ヒノキ造りの家が評判になり県内で次々と受注を獲得していました。さらに売上拡大を図るために営業を強化したいと考え、社員を徐々に増やしていったのです。 M社長が優れているのは、やみくもに社員を増やすのではなく、売上、収益、資金繰りを常にチェックしながら必要な人材を慎重に選んで確保しているところです。 M社長は、「今うちの業績がいいのはたまたまだからコストが増えることは慎重に行うべき」と考えました。現場の社員が忙しさのあまりアップアップの状態になって「どうか人を増やしてください」と懇願しても、すぐに人員増を決断しません。自社の数字をしっかりと分析し、限界がきたところでようやく新しい社員を採用するという主義でした。 この会社の業績はその後もゆるやかに右肩上がりを続け、県内では 1、 2位を争うまでに成長しているのです。 多くの場合、現場の社員が「忙しいから人を増やしてください」といえば、中小企業の社長は「そうか、じゃあ採用しよう」と簡単に増やすものです。ひどい社長になると、「わが社は儲かっている」ということを対外的にアピールするために、無理して人を増やしていることさえあります。 人件費は業種にもよりますが、売上高に対して 15 ~ 40%ほどを占めるほどの大きな負担になります。採用した社員が高い生産性を発揮すれば問題はないのですが、なかなかすぐに期待通りの働きはしてくれません。仕事を教えなければならないうえにトラブルまで起こしたり、売上を減らす方向に向いてしまうことすらあります。 とはいえ、企業として売上や収益を上げて成長するためには、社員を増やして生産性を高める工夫をし続ける必要があります。今や、派遣社員やアウトソーシングなどを活用することによって、人にまつわる問題を軽減したり人件費コストを下げたりする会社も増えています。もちろん悪いことではありませんが、それでも中小企業の商品やサービスのコアを固めるスキルやノウハウは、自社の社員の働きに依存する部分が大きいものです。 儲かる社長になるためには、生産性やコストに十分配意しつつも社員を増やしていくことが求められます。 逆に、社員を減らしている社長は、売上や利益の低下で資金繰りがひっ迫し、やむを得ず人件費コストを下げる行動をしています。 このように、コスト削減を目的として社員を減らす方向に向かっていると、ますます業績が落ちてくるという現象が起こってしまいます。 サービス業の会社を経営していた N社長は、かつて売上が右肩上がりの時に大量の社員を採用しましたが、業歴が 20年を迎えた頃から売上が急低下し、人を減らすことを余儀なくされました。なんとか人件費を削減して会社を立て直そうとしていたのです。 N社長は、自分がワンマンで社員に怖がられるほどの存在でしたから、「みんな文句もいわずに去っていくだろう」と高をくくっていました。 しかし、一旦採用した社員を辞めさせるのは容易なことではありません。解雇をいい渡された社員たちのなかには、激しく反発して残業代未払いを要求するなどの行為に及ぶ者が出てきました。すでに会社が破たん寸前に追い込まれていた N社長は、「弱り目に祟り目」でたいへんな思いをする羽目になったのです。 残念ながら N社長のような事例はとても多いのです。 クビをいい渡された社員たちは、もはや社長のことを助けようという意識はなく、自分の要求を突き付けてくるばかりになります。業績が好調な状態で社員を増やそうと思ったら、こうした場面も想定しつつ慎重に採用を行うことが重要です。中小企業にとって社員を増やしている場面はとてもいいのですが、経営が厳しい状態になれば余剰人員を削減することが重要課題になってきます。 もちろん、うまく社員を減らすことができれば、儲かる社長に返り咲くことは可能だということを付け加えておきます。 17/儲かる社長は、社員を増やすことの重要性を知りながら、慎重に検討する!
目次
コメント