「信用していた社員に裏切られた」という社長は少なくありません。 とくに多いのは、社員による会社の金の使い込みや持ち逃げという事件です。社長が最も信頼している人物を経理担当者にして、通帳も印鑑も預けたところ、いつの間にか会社の金を私費に使ってしまうというもので、こういう事例は枚挙にいとまがありません。 ほとんどの場合、社長は信頼しきっているので、なかなか気がつきません。判明した時には、会社の存続に影響を及ぼすほどの高額になっていることが多いのです。 私が大阪で出会った建設会社の社長がそうでした。会社の経理は、昔からいる 50歳代の女性に完全に任せていました。金融機関との交渉においても、社長自身はお金のことはサッパリわからないので、何でもこの経理担当者がやっていました。 会社としては特殊な工事方法の技術を持っていたので、業績は安定して見えました。ところが、私が初めて社長に会った時は、悲壮感が漂っていたのです。「この前、経理担当者が 1000万円使い込んでいたのがわかったんや」 ガテン系のいかつい社長が泣きそうです。どうやら 1年くらい前から、経理担当者が自分の兄弟を助けるために、会社の金を引き出していたらしいのです。 私 「なぜ気づかなかったのですか?」 社長「信頼して全部任せとったんや。もう 20年もウチにいたからなあ」 1000万円を取り返そうとしたらしいですが、後の祭りで、その経理担当者は行方がわからなくなっていました。 この社長の痛手はお金の問題だけではありません。 20年間信頼し続けていた社員に裏切られてしまったのですから、心の傷も負ったのです。 この社長のように、優秀だと思った社員をつい信用し過ぎてしまうと、痛い思いどころか存亡の危機に直面するリスクがあります。 一方、儲かる社長は、表面的には社員を信頼しているような素振りを見せますが、心底信用することはありません。「社員の人間性」を信用していないというわけではなく、「社員がする仕事」を信用していないのです。「金の使い込み」といったひどい裏切りをしないまでも、仕事上でミスをしてしまう社員は多いからです。 東京でインターネット通販をしている会社の社長は、多くの社員を雇っていますが、社員と一緒に飲みに行くなど、社員とのコミュニケーションに力を入れています。 しかし、仕事に関しては、社員を信用し過ぎることはなく、とくに個人情報の取り扱いやコンピューターシステムを担当する社員については、ミスや情報漏洩がないか、定期的にチェックしていました。 大手企業では、コンピューターなどから企業秘密といえる情報を持ち出そうする社員がいないか、目を光らせる体制を整えています。中小企業ではどうしても手薄になりがちですが、この社長はしっかりと監視していました。そのほかにも、商品の発送ミスが起こらないように、発送担当者が相互に仕事をチェックすることも取り決めていました。 社員が犯してしまうミスや、悪意に基づく情報漏洩を防ぐ取り組みをしていたのです。そのおかげで、大きなミスや情報が漏れてしまうという事故は起きておらず、会社の業績も安定しています。 中小企業の場合は、社員数が少ないので、アットホームな雰囲気になりがちです。それはいいことだと思いますが、社員を信用して仕事を任せ切ってしまうと、思ってもいないようなミスや不祥事が起こる懸念があります。 儲かる社長になるためには、「社員の人間性」は信用しても、「社員がする仕事」は信用し過ぎないようにすることが大切です。 ただし、社長自身がすべての社員を監視しようとすると、社内がギスギスの雰囲気になってしまいます。 ある社長は、過去に社員が会社の金を使い込みしたことがきっかけで、すべての社員が全く信用できなくなってしまいました。その社長は常に会社の事務所にいて、 1日中、社員全員に監視の眼差しを向け続けていたそうです。当然、この会社の社員の定着率はとても低く、かえって儲からなくなってしまったのです。 極端に社員に対して不信感を持ってしまうと、社員のモチベーションが極小化します。社長自らが監視するのではなく、社員相互でチェックし合う体制を整えればいいのです。 23/儲かる社長は、社員の仕事は疑えど、人間性は信用する!
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