会社の規模が大きくなればなるほど、社長が自分の会社の経営状況を正確に把握することが重要になってきます。社長にとって大切なことは、お金の流れを示す数字を直視して、経営判断を行うということです。 ところが意外にも、自社の数字をあまり把握できていない社長が多いのが実態です。現場の最前線で指揮をとって社員にハッパをかけることに夢中になり、肝心の数字のことは経理担当者や税理士に任せっ放しという社長などはその典型的なタイプです。 会社の業績がいい時はそれでもいいでしょうが、経営状態が厳しくなればなるほど、数字を無視することはできなくなります。 数字を把握しようとする時に、多くの社長は、まず「売上が昨年と比べてどうか」というところを気にして、次に「いくら儲かったか」と利益に着眼します。 利益が出ていることがわかれば、「儲かってよかった」と安堵しますが、「勘定合って銭足らず」といわれるように、利益に対して現預金の残高が乏しいという状態に陥っている時があります。利益が出たからといって安心してしまうと、「黒字倒産」に至る懸念があることを忘れないでください。 基本的なことですが、利益が上がっても現預金が残らないのは主に次のような理由があります。 ・売掛金の回収条件が遅いのに対して仕入や経費の支払日が早く来る ・売掛金が期日通りに入金されない ・商品在庫が過剰に膨らんでいる ・無駄な経費がかさんでいる ・事業以外に資金が流出している ・現預金を誰かが使い込んでいる 以上のような事態になっていないか、社長としては最低限チェックすべきです。 真に儲かっている社長は、売上や利益だけではなく、現預金の残高を注視しており、当面の「資金繰り」を把握しています。 6カ月後に資金不足が見込まれると、融資などで資金を調達する必要がありますから、早めに準備することができます。 機械輸出業を経営している W社長は、今期で創業 20周年を迎えますが、自社の数字を把握するのに苦手意識がありました。それでもかなりの利益が出ていて資金繰りにも大きな問題はなかったので、深刻な状態にはなりませんでした。 しかし、リーマンショックでかつてないほど業況が悪化し、気付いた時には来月の資金繰りが危ういという事態になっていました。その後、危機は乗り越えたのですが、「こんなことではいけない」と思った社長は、中小企業診断士の勉強をしてとくに財務に関する部分のスキルを高める努力をしたのです。それまで苦手にしていた経営分析にも目を背けずに自分で取り組むようになり、毎月、向こう 1年の「資金繰り表」も作成するようになりました。 運転資金が不足し始めると、早めに銀行へ提出する資料を作成し、融資の申請ができる体制を整えていました。また、財務に関する知識に詳しくなったことから、銀行員から質問があった時に、数字について的確な回答ができるようになりました。 これらが功を奏して、以降は資金繰りで頭を悩ませるということがなくなったのです。 私が多くの社長から聞いたことがあるのは、ひとたび資金繰りの悩みが発生すると、四六時中それで頭が一杯になり、本来の営業活動に身が入らなくなるということです。 W社長のように、自社の数字や資金繰りを自ら把握しておけば、早め早めの資金手当てができるので、社長本来の仕事に打ち込める余裕も出てきます。 ところで、「資金繰り表」というと、「とても自分でつくれるものではない」という社長がいますが、一度覚えてしまえば、それほど難しいものではありません。 もちろん、経理担当者に作成させてもいいのですが、その時は預金通帳や帳簿などをつき合せて、その内容が正しいかどうか、しっかりと自分の眼で確認することが重要です。 極端なことをいうと、どんなに赤字が出ていても資金繰りさえできていれば会社は継続することができます。つまり、現預金の残高を注視するということです。ぜひ資金繰りをしっかりと見定められる社長になってください。 28/儲かる社長は、現在のお金の状況をおさえ、的確な経営判断ができる!
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