社長が資金調達のノウハウを持っているかどうかで、企業の維持力が決まるといっても過言ではありません。 ここでは、資金調達手段としてもっとも一般的である、融資をうまく受けるためのコツをお伝えします。 どの銀行も、融資の業務は欠かせないもので、積極的に融資をしたいと考えていますが、不良債権を出すわけにはいきませんので、「業績のいい企業にたくさん融資する」というのが基本的な姿勢です。 銀行のいう「不良債権」とは、返済が遅れている融資先だけではありません。たとえ返済をきちんとしていても「不良債権」と見なされてしまうことがあります。あなたの会社が「不良債権」だと認定されてしまうと、融資を受けるのがとても難しくなります。 どういうことかご説明しましょう。銀行は「自己査定」という作業を行っています。 これは、すべての融資先企業について営業実態を調べて、「正常先」「要注意先」「破たん懸念先」など、 5段階(「要管理先」を入れると 6段階)の「債務者区分」をつけるというものです。「債務者区分」を決める基準は、金融庁が発行している「金融検査マニュアル」に記載されています。これは誰でもインターネットで見ることができます。 この「債務者区分」で「要注意先」以下になると「不良債権」のような扱いになります。「要注意先」以下の企業へ融資すればするほど、銀行の決算に損失を計上する必要が出てくるからです。 また、銀行が融資をするかどうかを決めるのは、「債務者区分」だけではなく、「信用格付」と呼ばれる各銀行が独自に定めた基準によるランク付けも大きく関係します。「債務者区分」も「信用格付」を決める大きな要因は会社の財務諸表の内容ですが、必ずしもそれだけではありません。企業の技術力や経営者の能力など「定性面」の評価や、今後の見通しなども大きなファクターになります。中小企業には財務諸表に表れない強みがあるという考え方があるからです。 そのため、金融庁の「金融検査マニュアル」には「別冊(中小企業編)」というものが準備されており、財務面に問題があっても上位の「債務者区分」に引き上げるための内容や事例が紹介されています。たとえば、「経営者と企業を一体として判断する」「技術力や販売力を評価する」「経営改善に向けた取り組みを評価する」などです。 したがって、財務内容に難がある中小企業が、銀行から融資を受けやすくしようと思えば、これらを意識してカバーできる材料を銀行へ提供する必要があります。 社長のなかには、銀行員が自己査定をするためにヒアリングしようとすると、面倒がって非協力的な対応をする人がいます。しかしそれだと、財務内容だけで債務者区分を判断されて、「要注意先」以下に区分されかねません。 ですから、銀行員とは円満な対応を心がけるとともに、自社の強みや将来性をしっかりと説明しておくことが重要です。 このように、財務内容に問題があっても、融資を受けるコツを把握しておけば、円滑に資金を調達できる可能性が高まります。 項目 27でご紹介したアパレル会社を経営する V社長は、毎年決算書ができ上がると銀行の担当者への説明会を開催しています。 決算書はいつも黒字というわけではなく、大きな赤字を計上することもありました。決算書が赤字だと、それだけで「債務者区分」が「要注意先」以下になる可能性があります。 V社長は「金融検査マニュアル別冊(中小企業編)」をよく読んでいたので、それを知っていました。そこで、決算説明会において、次のようなことを説明し、暗に「うちは正常先である」ということをアピールしていたのです ・赤字は一時的な要因であり、来期は黒字に戻る ・当社のブランド力が高いことから優良な新規取引先を確保している ・在庫ロスを少なくする策を実施してキャッシュフローを増加させる V社長は、こうした内容について、単に口頭で説明しただけではなく、「経営向上計画書」といった冊子にまとめて、銀行員に手渡していました。銀行員にとっても、当社の「自己査定」を行う際に、稟議書に資料を添付できるので、とてもありがたいことなのです。 なかなか V社長の真似をするのは容易ではないと思いますが、銀行員に対してできるだけいい材料を提供するように心がけることが、円滑な資金調達のコツなのです。 32/儲かる社長は、円滑な資金調達のコツを体得している!
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