私は「会社をたたむ」や「社長をやめる」といった、相談者の人生においてこれ以上重大な判断はそうないだろう、というレベルの相談ごとを大量に受けてきました。 税金などを含めた金銭的なポイントだったり、手続きや法的な意味合いからアプローチをしたこともありました。 しかし、こんな表層部分をちょっと触ったくらいでは、重大な決断なんてできません。 大きな決断をするためにはエネルギーがいるし、よりどころとなるモノサシが自分の中に作られていなければいけません。何でしたら、決断するために、自分が今より成長することすら要求される場合だってあるのです。 私が相談を受けて、社長とセッションをする場合、過去に時間軸を飛ばすケースがあります。 たとえば、子どものときに何を恐れていたか、親との関係はどうだったか、何に熱中したかなどを問います。過去を振り返ることで、自分の歩んできた人生を再度消化し、自らの養分にしていただきたいためです。 地下鉄から地上に出たとき、どちらに進んだらいいか迷いませんか。スマホの地図をたよりにしているのに、目的地と真逆のほうに歩きはじめた経験が、私には山ほどあります。 この原因は、どこから歩いてきたかがわからなくなることによります。もし自分がどちらの方向から歩いてきたのかがわかっていたら、進むべき方向を間違えません。 人生だってそう。 現在だけでは、あなたがこれから進む方向に迷ったり、間違ったりしてしまいやすくなります。でも、過去と現在を両方見えていれば、未来の方向性が定まります。 進むべき未来は、過去と現在を結んだその延長線上にあるためです。 過去をしっかり見つめるか否かは、未来の歩みの精度に大きな差を生むと考えます。 過去を振り返るという話に付随して、原体験にも触れておきましょう。 原体験は自分を動かすエンジンになるので、思い出せるといいですね。 先日テレビで、ミュージシャンの小田和正氏のライブツアーを追いかけたドキュメント番組を観ました。 コンサートの MCで彼は「高校時代に歌でハモる体験をしたときに、楽しくてしかたなかった。家へ帰る道でも、友達とずっと歌ってハモりながら歩いていた」と語っていました。正確な言葉は覚えていませんが、こんなニュアンスだったはずです。 この体験は、きっと彼の原体験なんだと感じました。 彼は、オフコース時代を経て、ソロになってからも、長く、長く活躍しています。テレビの収録の頃はもう 75歳くらいだったはずですが、美しい歌声は健在でした。 原体験が、長く走り続ける彼のエンジンになっていたのでしょう。 私のお客様でも、原体験を思い出して、前に進めた方がいました。 親のあとを継いで社長をやっていましたが、続けるかどうか、道に迷っていました。 私との面談をくり返していたある日、自分の原体験を思い出し「そうだ、俺は技術者になりたかったんだ」と声を出しました。 それから家業をたたみ、再度一人で起業して、自転車関連の仕事を始めました。 様子をうかがいに行ったときには、油で黒くなった手に工具を持ちながら、実に楽しそうに仕事をされていました。 過去はあなたの財産です。玉手箱を開けてみたら思いもよらぬ何かが出てくるかもしれません。 過去を振り返りたくても、私のような掘り下げる役割の人がいない場合も多いことでしょう。そういった場合は、自分史を書いてみてはどうでしょうか。年表を作ったり、印象深いエピソードを書き出してみてください。 いろんな発見があるはずです。 16 生き残る社長は、自分の過去を大切にする
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