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生き残る社長は高級外車を買い、潰れる社長は我慢をする。

「奥村さんさあ、あんたにとっちゃ他人事だから、いくらでも正しいことなんて言えるんだよ。でもよう、こっちはそれを夢見て必死にがんばったんだよ。わかんないでしょ?」  酒の席で、酔っ払い社長に絡まれました。目が据わっています。  この社長は私に恨みを募らせていたようですが、その原因は、昔、私が外車を買うことを許可してあげなかったことでした。  何年も前に、会社の経費で、ベンツか何かの高級外車を買いたいと相談してきたことがありました。そのとき私は「話にならない」と却下しました(言い方はもっと優しかったです)。  経営不振が続いて、ようやく調子が上向いたところです。客観的に考えれば、ちょっと利益が出たからといって、まだ贅沢をしていい状況ではありません。「まわりの経営者仲間はいい車に乗ってて、俺だけボロい車だからみじめになる」とか「車を買えば節税対策にもなるはずだ」と社長は、様々な口実をあげて私を説得しようとしました。でも、私は首を縦に振りません。結局、社長には我慢してもらいました。  その後、会社経営は復調しました。そして、あの酒の席がありました。  私は、浪費を戒めたことを感謝されることはあっても、まさか、恨みつらみをぶつけられることになるとは一ミリたりとも予想していませんでした。  人の欲望というのはすごいですよね。長い時間が経っても、社長はまだ根に持っていたんですから。成就されなかった欲望は、くすぶって怒りとなり、心のどこかに居座っていたのでしょう。おそらく、本人ですら自覚していなかったのではないかと想像します。  欲望は、その取扱いには注意が必要です。  私が駆け出しのコンサルタントだった頃は、数字や理屈ばかりを重視し「社長の私欲なんて我慢してもらって当然」くらいに考えていました。  しかし、何度か欲望の暴走と思われる場面を経験し、考え方を改めるにいたりました。  今ではもう、無理に止めようとはしません。「個人的にはベンツなんて買ってる場合じゃないと思いますが、社長が買いたいなら好きにしてください」というスタンスをとるようにしています。  抑圧し過ぎると反動が怖いのです。成就されなかった欲望が、もっと悪い行動を起こしてしまうことすらあります。  誰かを好きになったものの、その人を手に入れることができないとわかれば、今度は、好意が憎悪に変わり、相手に殺意さえ抱いてしまうことすらあるのが人間ですから。  欲望をうまく扱うためには、ときに会社の金で高級外車を買うくらい許されるケースだってあるように思います。ぶっちゃけ、小さな会社なんですから、会社の金なんて社長、あなたの金です(同時に、会社の借金もあなたの借金です)。  ほめられた行動ではなくても、「息の長さ」というモノサシにおいて有利に働くのであれば、悪いお金の使い方とは言えない場合もあるでしょう。  それくらい欲望を甘く見てはいけないのです。  欲望だけではありません。感情全般にそれは言えます。道を間違えたとき、起点にとり扱い方を誤った感情があったケースは、非常に多いはずです。  あなたは自分の感情を客観的に把握できていますか。  意外と難しいことです。定期的に紙に書き出して、点検してみてはどうでしょうか。  まず思いつくかぎりの自分の感情を書き出します。  次に、第三者になった気分で書き出したものを眺め、じっくり吟味してみてください。「会社を大きくしたい」と書いたある後継者社長がいました。  その欲望を吟味したら、確執のあった先代社長の父親に対して「あいつを見返してやりたい」という執着の気持ちがあることに、はじめて自分で気づいたそうです。このときすでに父親は亡くなっていたのですから、人間の感情というものは不思議なものです。  自分の深層に横たわっている感情を知ることが、息の長い活躍の準備になります。 17  生き残る社長は、自分の感情を整えることを優先する

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