私が息の長い社長として、勝手に、そしてひそかに注目している社長がいます。 社長の会社では、 3か月ごとに社長を含めた全スタッフで席替えすることをルールにしているそうです。 席替えとは、懐かしい響きです。好きな子の隣の席を願った学生時代を思い出させます。 それにしても、社長はどうして定期的に席替えをさせるのかを聞いてみました。「組織を硬直化させないようにするためですよ。わずかな人数の会社だから人事異動もないし、仕事内容も基本ルーティーンばかり。放っておいたらスタッフの気持ちまで固まってしまう気がするんだよね」 こんな発想は思いつきませんでした。 正直なところ、席替えにどれほどの効果があるのかはわかりません。それでも、社長が平時から組織の硬直化を警戒し、変化にさらそうとしているセンスに「さすがだなぁ」と感心してしまいました。 時間がたつほど、メンバーが年齢を重ねるほどに、普通、組織は硬直化していきます。人材はわがままになって柔軟性がなくなっていきます。すると、いざ本当に変化が必要な時がきたときに、柔軟性を失って対応できなくなってしまうのです。 業績が悪化し、経営の再建が急務となった別の会社がありました。 資金ぐりに窮して、各銀行に借金返済のリスケジュールの依頼もしていました。 しかし、会計的なアプローチには限界があります。本来の仕事が改善されないことには、復活なんてできません。 この点、多くの社長が誤ります。借金に窮した社長は、目の前の借金をどうにかすることばかりを考えてしまいがちです。 法的アプローチによって、返済の期限を延ばしたり、借金の額をカットすることはできます。でも、復活できない会社が大半です。商売が崩れたままだからです。いくら借金を減額したところで、本業で利益が出せないのであれば問題の解決にはなりません。 この会社でも、本業が崩れていました。 特に目についた点は、従業員がろくに働いていないところでした。顔には危機感のかけらもなく、何もしないでボーっとしているような時間が長いように見えました。 そこで社長と私は、スタッフに対して、従来の自分の役割にとらわれず、一人で複数の役割をこなしてもらう企画を考えました。 ホテル業でたとえれば、フロントの人材でも、お客さんが来ない暇な時間は、ベッドメイクや夕食の準備にも参加してもらうイメージです。 一人が何役もこなすことで、何もしない無駄な時間が減り、結果、バイトを減らして人件費を抑えることもできるだろうという思惑でした。 正社員全員に集まってもらい、まず会社の厳しい状況を共有しました。次に、仕事の範囲の拡大について社長から各自に指示を出すつもりでした。 経理担当の女性に、社長から「 Aさんには、今後、営業のサポート業務もお願いします」と伝えたときです。「いえ、それは私の仕事ではありません!」 間髪入れずに拒否されました。(会社が危機的状況なのに……) 私は唖然としました。 この会社の従業員からは、会社をどうにかするため「自分たちにできることをやろう」「自分たちを変えよう」という姿勢がまったく感じられませんでした。 一方で、会社に貢献せず、自分たちの責任は果たさなくても、権利ばかりは立派に主張するのです。 組織の硬直化とは、まさにこういうことなのだと実感しました。 日ごろから柔軟運動やストレッチをして動かしておかないと、関節が固くなってしまいます。人間も、変化のない日々のくり返しでは、凝り固まってしまうのでしょう。 変化に対応できる柔軟性を保たせなければいけません。 26 生き残る社長は、組織の硬直化を日ごろからほぐす
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