本業は赤字に転落。資金ぐりも苦しくなってきた。 業界は斜陽産業に属し、社長には事業を黒字化させる策はなし。 このまま手をこまねいて見ていたら、会社をたたんだとしても、借金を全部返すことすらできなくなってしまう。社長は借金の連帯保証人だから、そのときは、個人の資産を投げ打ってでも返済しなければならない。 こんな状況で、何ができますか。 一刻も早く事業を止めて、現金の垂れ流しを止める。これしかないのではありませんか。とにかく早く出血を止めないといけません。皆さんも、そうお考えになったはず。 ところが、案外、現場の様子は違うのです。「会社をたたむと、従業員の雇用を維持することができなくなってしまう」 この期に及んでまだこんなことを言い出す社長が、過去に何人もいました。廃業のプロジェクトを組み立てて実行させなければいけない立場にいる私は、こんな発言を聞くと少々うんざりしてしまいます。 そもそも赤字の会社が、人を雇い続けることなんてできません。この真実を捻じ曲げることは誰にもできないのです。 問題には、努力すればどうにかできるものと、いくら悩んだところでどうにもできないものがあります。このケースの雇用の継続は、後者です。受け入れるしかありません。 会社を船にたとえましょう。従業員は船をともに動かす船員です。 赤字の船は船底に穴が空いて水が入ってきているような状態です。そして、浸水を止められない場合、船長は、航海に見切りをつけ、目的を避難へ切り替えなければいけません。そうしなければ、船長のあなたは船と一緒に沈むことになります。 映画では、船長が避難しないで、船と命をともにする場面を観ることがありますが、不可解です。船は船で、あなたはあなた。会社は会社で、社長は社長。別の存在なのです。 いざというところまで追い込まれたら、会社や事業に見切りをつけて、自分は脱出する発想を持ってください。 会社は、乗り物です。しょせん道具です。会社が潰れたところで、あなた個人の社長人生まで終わってしまうわけではありません。逃げるべき時に逃げられれば、しぶとく、仕事を続ける道も見えてきます。 ただし、避難はみなではできません。船から降りたら、あとは各自が自分で身を立ててもらうしかありません。 最後の最後まで「雇用を守りたい」という社長の情の厚さには、頭が下がります。 しかし、あえて言わせていただきましょう。会社が潰れる寸前に、まだ雇用だとか言う社長はヤバいです。平和ボケし過ぎです。 重大な決断から逃げたい心理がそう発言させるのかもしれません。いい人と思われたい自己保身が原因の場合もあるでしょう。思考の混乱によるケースも考えられます。 危険です。 たとえば、私のようなコンサルタントに「なるほど。社長はとにかく雇用を維持することが最優先なのですね」と、発言を額面どおりに受けとられたらアウトです。逃げる機会を失ってしまうことになりかねません。 この本は、著者が本気で、社長のあなたが生き残ることを願って書いている本です。 一見似ているように見える多くの他の本は、いかに「会社を」生き残らせるかという発想でしょう。会社の存続が優先で、その奥にいる社長という人間のことは見ていません。 しかし私にとっては、「社長に」生き抜いていただくことが何より優先です。 やむを得ない状況になったら、ためらうことなく会社を見捨ててください。 切羽詰まったときに時間的猶予はほぼなく、選べる選択肢もほとんど残っていません。この状況下においては、本当に優先すべきことだけに徹してほしいのです。 避難を選んだのであれば、あとはただ黙って遂行あるのみです。 長く生き抜くために、いざというときに逃げられる人間であってください。 32 生き残る社長は、いざとなれば会社を捨てて逃げる
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