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生き残る社長は銀行と一定の距離を保ち、潰れる社長はズブズブな関係になる。

35年にわたる社長人生に終止符を打つことにした T社長は、 M& Aの相談を私にしてくださいました。   M& Aについては昨今、業者の営業攻勢がヒートアップ、銀行も追随しています。融資で稼げなくなったため、 M& Aで手数料を稼ぎたいと考えるようになっているのでしょう。「銀行の前でストリップ踊ってどうするんだ?」と、銀行の M& A業務への参入を話題にしていたところで、 T社長が発言しました。まさに名言。  銀行に洗いざらい情報を明かすことに、 T社長は危うさを感じていたわけです。  銀行との付き合い方や距離感は、社長によって差があります。銀行に尻尾をブンブン振る人がいれば、この社長のように冷めた目で一定の距離をおく人もいます。  私としては、あまり近づき過ぎるのはよくないと思っています。  銀行は様々な商品を買わせようとします。融資だけでなく、住宅ローンや投資信託、相続関連の商品等。危機感がないと、いつの間にか、がんじがらめにされてしまうかもしれません。  自由は奪われたくありません。経営というものは、利害関係者からいかに自由を確保できるかが一大テーマです。常に警戒は解けません。  いざというときになれば、銀行とは敵対する関係になるということまで想定しておいていただきたいところです。  ひょんなことから、関わることになった S社長がいました。この人はひどかった。  仕入先への支払いが 4か月分溜まっていました。会社の底地を貸してくれている地主には、もう 1年近く地代の支払いを待ってもらっています。  従業員の給料についても 2か月分遅配しています。「これでよく会社をやめないで働いてくれるものだ」と変な感心をしてしまいました。  もうおしまいかと思いきや、まだありました。   S社長は友人に「俺を信じて貸してくれ」と頭を下げ、 1000万円を借りたそうです。きっと友人が老後資金のために大切に貯めておいたお金でしょう。  奥さんには、本当のことを言っていません。  奥さんが何かあったときのためにと、貯めていた 3000万円を「大丈夫だから」と言って出してもらいました。そのお金は会社の運転資金として、すでに溶かしてしまっています。  また、自宅を勝手に銀行の担保に提供しました。自宅の購入資金の半分は、奥さんの実家からの支援だったので、実質的には、権利の半分は奥さんのものですが……。  さて、近い将来何が起きるでしょうか。  会社はすでに瀕死ですし、社長個人の資産もまったく残っていません。金を払えないことは確実です。 S社長は、取引先も地主も、従業員も、友人も裏切ることになります。奥さんにいたっては、金を失っただけでなく、自宅まで奪われることになるでしょう。  関係者から恨まれて、刺されても不思議じゃない、というレベルの話です。 S社長の居場所は、世の中からなくなることでしょう。再起のチャンスはもらえません。  ちなみにあなたは「 S社長はひどい悪人だ」と感じたかもしれません。でも実際は、優柔不断だけど、やさしくて、人はいいのです。案外こういうものですね。   S社長は、こんな手当たり次第の金策をしていたくせに、銀行にだけは、毎月キッチリ耳をそろえて返済していたというから驚きです。  銀行への支払いを優先し、そのために他の支払いを後回しにしたり、知人から金をかき集めていたのです。  では、そこまでして尽くした銀行の対応は、どうだったか。「経営立て直しのための金を貸してくれ」と S社長が頭を下げても「できません」とあっさり拒否。さらに社長の話から危機を察知して、すぐに会社と社長個人の口座を凍結しました。かつて半ば強引に組まされた定期預金も、もう動かせません。  最後の最後まで、とにかく銀行との関係性を優先させようとした S社長の姿勢は、間違っていたと私は考えます。自分に近い相手こそ優先すべきでしょう。 41  生き残る社長は、自分に近い人から大切にする

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