MENU

【解説】───人気者の社長が、会社を危機に陥らせてしまう単純な理由

 組織の運営に苦慮し、誤解や錯覚を多く生じさせている社長には共通点があります。  それは「一人の人間として社員に好かれたい。人気者でいたい」という気持ちに素直すぎることです。  本人はそうと気づいていないことも多いのですが、そういう社長は社員が喜ぶようなイベントをたくさん開いたり、社員の要望にできるだけ耳を傾け、一人ひとりに寄り添ってその悩みを自ら聞いてあげ、ときにアドバイスしたりします。社員と一緒に飲み歩き、二次会や三次会にまで付き合います。  まさに本書の若宮の行動ですが、実はそうした社長の行動の裏には、自分が一人の人間として社員に好かれたい、「いい人」だと思われたい、という承認欲求が隠れていることが多いのです。  本人の意識としては「これこそが会社の成長につながるんだ」「こうやって丁寧にケアしてあげたほうが、社員が成長するんだ」といった考えがあることも多いのですが、果たして、本当にそうでしょうか?  社長が本来、評価を獲得しに行かねばならないのは、消費者やクライアントといった市場であり、金融機関や株主といったステークホルダーです。それなのに「社員から好かれたい、人気者でいたい」と社員からの評価を獲得しに行ってしまっては、会社が回らなくなるのも無理はありません。  本来は市場やステークホルダーからの評価を得るために必要なことを、分解してそれぞれの社員に課すことが社長の役割なのに、社員からの評価が下がることを恐れてそれができなければ、まさに本末転倒です。  また、社員の生産性を高め、成果をしっかりと出してもらうための責任と権限は、社長ではなくそれぞれの部署の管理職が持っています。  それなのに、会社のトップである社長が一般の社員とマンツーマンで話し合い、業務上の悩みを聞いて直接アドバイスする。あるいは一緒に飲みに行って、いつも最後の最後まで付き合う。──このような行動をしていると、社員の間には「自分は社長の直属の部下なんだ」という錯覚が生まれます。そればかりか、「自分は社長の直属の部下なのだから、間に挟まっている上司の言うことなんて聞く必要はない」という錯覚まで生まれやすくなります。  さらには管理職の人間にまで、「社長が直接部下の指導をしているのだから、部下の管理の最終責任を負っているのは社長であり、自分ではない」という誤解が生じるのです。  こうした誤解や錯覚にまみれた状態では、会社の指揮命令系統はうまく回りません。  上司が部下に指示を出しても、部下がそれを尊重せず、不満があれば直属の上司を飛ばして社長に直接文句を言いに行くようになります。  社長の側でも社員に嫌われたくないので、「じゃあ、君だけは特別対応でいいよ。課長には私から言っておくよ」などと応じてしまいます。  結果、次第に組織が機能しなくなって、市場で競合に競り負けるようになり、危機に陥っていく、という悪循環です。  逆に言えば、社長が部下それぞれの立場に求めることを明確に示し、それぞれの役割が持つ責任と権限についての誤解や錯覚を正した上で、自らもそれらを逸脱する行為をやめれば、機能不全に陥っていた組織は一気に改善します。  結果として、 2章で安藤が実現したような V字回復を見せることもある、というわけです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次