読者の皆さんへ最初に断っておくと、本書は「成功」を約束する本ではありません。
会社を発展させる原理原則や経営の要諦がまとめられた指南書だと期待して本書を手に取られた方、ごめんなさい(『経営中毒』というタイトルを見てそう思う方は少ないと思いますが)。
未来を夢見て立ち上げた会社に、予期せぬ困難が次々と降りかかり、組織を「崩壊」に追い込んでいく──。
商品やサービスの失敗、仲間の裏切り、資金ショート、事業の乗っ取り……会社を経営していくうえで待ち受けている、目を覆いたくなるような問題の数々をこれからお伝えしていきます。
「社長は孤独だ」と、昔からよく言われています。なぜ、一見華やかで、偉く見える社長が、誰よりも孤独なのか。そこには「構造」が存在するのです。考えてみてください。仮にあなたが、会社のすべてに責任を持つ、社長だったとしたら──。
日々、体験したことのない課題が発生し、なんとか乗り越えたと思ったらまた次の問題が押し寄せる。そこには、過去に多くの社長も同じようにはまってきた「落とし穴」があるのです。
本書は、そんな大きな落とし穴にはまらないための「転ばぬ先の杖」になるかもしれません。
はじめに社長はつらい?それとも楽しい?
初めまして。
エッグフォワード代表の徳谷智史と申します。
Podcast(音声配信サービス)「経営中毒~だれにも言えない社長の孤独〜」を聞いてくださっている方にはおなじみかと思いますが、そうでない方に少しだけ自己紹介をさせてください。
私が経営しているエッグフォワードは、「いまだない価値を創り出し、人が本来持つ可能性を実現し合う世界を創る」というミッションのもと、個人・組織に関するコンサルティングやコーチングなどのサービスを手掛けながら、現在ではVC(ベンチャーキャピタル)として国内外多数のベンチャー企業に出資するだけでなく、次々に噴出する「ヒト・カネ・組織」の問題にクライアントの社長と二人三脚で一緒に取り組んでいます。
そのため、社長の方々とかかわることが多く、数万人の社員を擁する業界トップ企業から創業前後の先進スタートアップまで、1000社以上の企業変革や出資によるハンズオン支援(*)を手がけてきました。
また、個人の可能性を最大化するべく、2万人以上のキャリア支援にも従事してきました。
規模を問わず大小数多くの会社と社長を、日々二人三脚で支援するなかで、明らかになったことがあります。
多くの会社が創業して1~2年目に苦しい状況に陥っている。そして会社を起業してどれだけ経っても、すべてが計画通りに進むことは絶対にありえない。
会社を創業すると次のようなトラブルが一つや二つではなく、文字通り次から次へと襲ってきます。
- ・自信を持ってリリースした事業が大コケした
- ・創業メンバー同士の考えが合わず、仲間割れの末、メンバーが辞めていった
- ・資金が枯渇し、給料も外注費も支払えなくなった
- ・アテにしていた資金調達が、環境の変化で、受けられなくなった
- ・信頼していたメンバーの横領が発覚した
- ・引き際を見極められず、事業の撤退を余儀なくされた
ここに挙げた例はごく一部です。
経営が、トラブルなく順調に進めばどれだけいいでしょうか。
社長なら誰しもそう思うはずです。
ところが、はじめは計画通りだったとしても、その後もずっと計画通りに進んでいった会社を、私はただの1社も見たことがありません。
これから述べるのは、(私の経験を含め)数多くの社長を見てきた立場からのリアルです。
一般化する気はありませんが、遅かれ早かれ、どんな社長も直面しうる共通の「悩み」であると言っても過言ではないと思います。
*本欄では、キーワードの補足や経営のこぼれ話などを紹介していきます。
「ハンズオン」とは、投資先やコンサルティング先に人材を派遣するなどして、経営に深く関与することです。
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