創業初期の頃は、良くも悪くも、社員 1人の入社が経営に与えるインパクトは計り知れません。社員 100人の会社における 1人と、社員 3人の会社における 1人では重みがまったく違うからです。では、創業初期に人を採用するにあたり、具体的にどういったポイントを意識しておくといいでしょうか。 まず気をつけたいのは、スキルや実績があるからといって、「価値基準の違う人」を採用しないことです。ほとんどのスタートアップ社長は、価値基準の違う人を採って失敗したという経験を持っています。 価値基準とは、会社として大事にする価値観や行動規範というようなマインドの部分です。たとえば、「常に未知なる分野に挑戦する」「お客様へのお役立ちを実現する」といったこと。こうした会社の価値基準がその人と合っているかどうかを見ることが大切です。 採用面接をすると、誰でも「これくらいのスキルがあります」「前職ではこういう実績をあげました」などとスキルや実績をアピールしてきます。なかでも自社に求められるスキルが高い人がピンポイントで見つかれば、ありがたい存在に見えてくるでしょう。 しかし、前職の環境下で営業ができたとか、前例があるうえで企画・分析ができるといったスキルは、わずかに環境が変わるだけで通用しなくなるものです。すると、スキルが通用しなくなった途端、会社や社長の批判を始めたり、社内外でトラブルを
起こしたりする人が実際は多いのです。 価値基準が同じ人なら、最初は能力が求める水準に満たなかったとしても、その会社で働いているうちに、一定水準のスキルは後からついてきます。 スキルだけが高く仕事をこなせる人は、一見ミッションに共感し、価値基準も合っているように見えたとしても、本音では共感していなかったり、会社が大事にしている考え方や仕事に対する姿勢が微妙にずれていたりするケースが少なくありません。 悩ましいのは、価値観が合っているように見えても、価値基準に対する定義やニュアンスが、社長と中途入社の社員で異なっていることでトラブルになるケースです。 ある著名なスタートアップの社長がコア人材を採用した際のことです。 採用面接で社長が「うちは大企業ほど環境が整っていません。いろいろ不安定なこともあります。でも成長の機会が多い環境で、未来を創っていく仕事です」と伝えたところ、お相手が「環境が整っていないのも安定していないのも承知の上です。当事者意識を持って、成長できる環境で働けるのが楽しみです」と前向きな気持ちで入社を決めてくれました。 ところが、いざ入社してしばらくするとその人が「あまりにも整っていない」「リソースがないと自分一人では何もできない」「事業の未来が見えない」と、文句を言い始めます。 逆に社長は「環境は創るものだ、当事者意識が低すぎる」と反論し、両者は次第に揉め始めたのです。 えてしてこうした事態に陥るのは、同じ言語を使っていても、「安定」「機会」「当事者意識」などの言葉の定義やニュアンスが双方で異なっているからです。社長と面接者が同じような意味合いで言っているのか、そうではないのか。言語化して食い違いを見極めないと、その溝がだんだんと深まっていきます。 面接では相手の小手先のスキルではなく、これまでの人生や職業経験を通じて語られる言葉の背景から、会社が大事にしていることや仕事のスタンス、マインドの部分が本当にマッチしているかどうかをよく見極めることです(*)。*スキルではなく、仕事に対するスタンスやマインドの部分を見るのは、新卒社員を採用するときも同様です。新卒の場合は中途ほど、現時点でスキルの絶対値に差がないことが多く、将来的なのびしろの部分を見るケースが大半です。
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