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退職者がゼロなら良いわけではない──なぜ功労者が悪影響を及ぼすのか

では、退職者がゼロになれば良いかというと、そうとも言えません。  適度な新陳代謝はやっぱり必要です。少なくとも、私は数多くの会社を見てきてそう思っています。  上の役職・役割が詰まっているような組織は、一般社員からすれば「自分が活躍したり経験を積んだりするチャンスがない」「働く魅力がない」と感じられます。すると、優秀な若手が退職してしまいます。  一定の年次に達した人材には会社を〝卒業〟してもらう会社があります。「人材輩出企業」などと呼ばれているこうした会社の場合、若手に多くの活躍の機会を提供できるので若手の成長が早い。そして退職し、また若手が育つというサイクルが確立されています。  成長から退職まで、どのくらいのサイクルを目指すかは会社の思想やフェーズ、事業特性によっても違いがあり、正解はありません。サイクルを早くするということは、短期成果を出せる人が会社からどんどんいなくなることを意味します。  私は、基本的には、会社側から社員に辞めてもらうことは良しとしていないのですが(そもそも日本では労働契約法があるのでできませんが)、多くの組織に共通するパターンとして、このタイプの人が出てきたら、会社を出ていただいたほうがいいな、という人はいます。  それは、「お山の大将になって、組織に悪影響を及ぼしている」タイプです(* 1)。  創業初期から頑張ってくれている経営メンバーやマネジャー職の人は、よちよち歩きの頃から会社を支えてくれた功労者と言えるでしょう。  そのような人が不幸にも組織を崩壊させてしまった例をお話しします。  その会社では、営業の責任者を務めていた Aさんが「エースプレイヤー」として売上を支えていました。  会社の雰囲気はというと、直属の部下はもちろん、そうでない人も無意識に Aさんの顔色を見て動くような状態。社長ですらも、数字をつくってくれる Aさんに対して強く求めることができません。まさに「お山の大将」です。次第に、そんな Aさんのやり方こそすべて正しいかのような空気が社内に漂うようになりました。  転機が訪れたのは、会社のフェーズが変わったタイミングでした。この組織は、個人に依存した営業スタイルからチームで成果を出すスタイルへとシフトチェンジしたのです。これは、個人依存の限界を超え持続的に成果を創出するには合理的とも言える判断でした。  面白くないのは Aさんです。「自分の手によって数字をつくってきたのに、功労者だった自分がいなくても回るような体制をつくろうとしているのは許せない!」と会社に対して反旗を翻し、次第にミッションやバリューに反した言動が目立つようになりました。  さらには、自分が影響力を及ぼしやすいメンバーを囲い込んでは派閥を形成するようになったのです。そうして、 Aさんの個別最適の考えや基準が原因となり、組織が完全に分裂してしまったのです(* 2)。  この状態を放っておくと、組織の風通しはどんどん悪くなり、会社の成長は間違いなく止まってしまいます。  そうならないためには、 Aさんのような経営メンバーやマネジャーがいる場合には、まずは本人としっかり向き合うことです。「ここまで会社が成長してきたのは Aさんのおかげだ。しかし、会社のフェーズが変わってきた。さらに成長してミッションを達成するためには、会社の仕事の進め方自体をアップデートしていかなければいけない。そのためには、 Aさん、あなたも変わるべきだ──」  会社が変わろうとしている状況を説明したうえで現状を踏まえて、仕事のスタイルを変えてもらえるよう説得を試みる。それでも変化が見られないようなら、何らかの形で退場してもらうことも検討せざるをえないでしょう。 *1若手に活躍の機会を提供するといっても、事業が成長していなければ、機会をつくれませんから、持続的に伸びる事業構造をつくることも必要です。社長としては悩ましいところですが、そのつど、今の会社のフェーズに合った成長 →退職のサイクルは考えておいたほうが良いでしょう。 *2私は創業前、よく似た話を、神田昌典さんの『成功者の告白』で読んだことがありました。そんなことが本当にあるのかなと半信半疑でしたが、さまざまな会社の支援をするなかで、「本当に、よくあるな」と実感しました。

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