企業を経営していると避けては通れないのが、「コンプライアンス」の問題です。 コンプライアンスは「法令遵守」という意味ですが、現在では、法令だけでなく、社会的規範や就業規則などさまざまな規則を遵守することが求められています。これらに反すると、「コンプライアンス違反」とみなされます。 コンプライアンス違反の例を挙げてみましょう。 ・お客様から預かっている個人情報を漏洩させた。 ・部下に対してセクハラ・パワハラをした ・社員が会社のお金を持ち逃げした。集金したお金を自分のものにした( =横領) ・交通費や飲食代などの領収証を偽造して、会社のお金を着服した ・ SNSでお客様の誹謗中傷をした ・外部業者に高めに発注して、代金の一部を個人口座に流してもらった( =キックバック) ・会社の備品や社用車をプライベートで利用した ・架空の取引によって営業数値を水増しした 創業初期のスタートアップに多いコンプライアンス違反は、お金に関するトラブルです。 なかなか表には出ませんが、かなりの割合の社長が、社員に持ち逃げや着服、そこまでいかなくても一定のトラブルに巻き込まれる経験をしています。 スタートアップは管理機能が弱く、金庫番を誰か一人に任せているケースも多いので、やろうと思えば簡単に不正ができます。 また、そう思わせてしまう組織体質にも原因があります。 事業が順調に成長しているときは「後で自分にも見返りがあるはず」と思えるので、不正をする人はあまりいないのですが、事業がうまくいかなくなり、先行きが不透明になってくると、「自分が投下したお金や時間などが、ムダになるかもしれない」と不安になります。まして報酬も満足にもらっていないとなると、つい目の前の 1000万円、 2000万円に目がくらみ、「このお金、ちょっとくらい使ってもいいかな」となってしまうのでしょう。 横領した人に話を聞くと、「ほんの出来心だった」と言うのですが、背景にはもう少し根深いものがあると感じます(*)。 横領までいかなくても、機密データを抜き取って、転職先の競合他社に持っていってしまうのはスタートアップでもよくある話です。 これは悲しい現実なのですが、仕事に夢中になっているときは、そうしたことを考える余裕はないのですが、熱が冷めると自分が得をすることを一番に考え、権利主張や度を越した自己利益を追求してしまう人が一定割合いるのです。 これまで私も、多くの社長からコンプライアンス違反の話を聞きました。こうした問題は、予期せずやってくるものです。しかも、「あの人、いかにもやりそうだな」という人ではなく、「え、あの人が!?」という意外な人が問題を起こします。「マジか?」と確認すると、残念ながらだいたいマジです(笑)。 社員のコンプライアンス違反が判明したとき、社長は大なり小なりショックを受けます。「あの人はこれまでどういう思いで働いてきたんだろう」「今までしてきた会話って何だったのか」と相手の裏の顔に愕然とし、人間不信に陥ることもあるでしょう。「なぜもうちょっと早く気づけなかったのかな」「じつは、自分が思っているより、社内の人間関係はグラグラなのではないだろうか」と自分の経営手腕に自信をなくすこともあります。*横領した人に話を聞くと、理屈はさまざま。「ギャンブルで増やしたかった」と言う人もいれば、「このお金を他で増やして会社に貢献したかった」「これを元手に別の事業を立ち上げていつか返そうと思っていた」などと意味のわからない理屈を述べる方もいます。いずれにしても出来心を起こさせないような構造が必要です。
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