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起業家の「原体験」がベースになる

 ミッションやビジョンの決め方は会社によってさまざまですが、これだけは外してはいけない、というポイントがあります。  それは、ミッションやビジョンが、社長の想いや「原体験」と密接につながっていることです。  一般にミッションやビジョンは、社員に対する求心力を高めるために制定したほうがよい、あるいは顧客や社会からの共感を得るためにあったほうがよいと言われます。  もちろん、それも事実ではあるのですが、私はむしろ、誰もゴールを与えてくれない社長にこそ必要だと断言します。  どんな旅も、競争も、何のために、どこに向かっているかがわからないと、修羅場を日々くぐって歩み続けるモチベーションが続きません。  社長に限った話ではないですが、誰からもゴールが与えられないトップこそ、「なぜ会社を創ったのか」「どんな未来を実現したいと思っているのか」という自身の強い想いをミッションやビジョンとして明文化することで踏ん張れる。逆境時の「拠り所」になるのです(*)。  さらに、第 1章で書いたようにベンチャーキャピタルや投資家は、創業からの年数が浅いスタートアップを投資に値するかどうか見極めるにあたり、事業モデルよりも「社長」を見ます。  事業の筋が良いに越したことはありませんが、それは変えられるし、環境変化に応じてそのつど戦略的に正しい方向に変えていけばいい。それよりも、舵を取る社長が本気でそれを目指しているか。しんどいときに逃げないか。そちらのほうが成功の確率を大きく左右すると考えているのです。  実際、社会的な意義を提供できる規模に成長したスタートアップの多くは、「ミッションやビジョンに対する社長の想いが本気である」「世の中のニーズや課題に合ったビジネスを手がけている」、この二つの条件が揃っています。  ニーズや競合の動向などにより、事業内容や戦略は変わり続けないといけませんし、過去の成功モデルを自ら変えないといけないケースもありますが、「社長のビジョンや想いがあるビジネス」という点は一貫しているはずです。  だからこそ、投資家はミッションやビジョンに、起業家の想いや原体験があるかどうかをチェックしているわけです。  もちろん、ミッションやビジョンは、投資家やお客様にウケの良いキャッチーなものにしても良いのですが、相手もうわべだけの言葉にだまされるほど節穴ではありません。根本に起業家の想いがないと、簡単に見破られてしまいます。  これらのことを踏まえると、ミッションやビジョンを考えるときには、起業家が「そもそもなぜ起業したいと思ったのか」、そう考えるに至った原体験を改めて振り返ることが大切です。  どんなスタートアップでも、社長は誰かに言われて仕方なく起業したわけではありません。大変なことが多々あろうことは想定されたにもかかわらず、大切なものをかなぐり捨ててゼロから起業しています。

そこには必ずストーリーがあります。「上場させて儲けることがすごく好き」という人もいますが、ほとんどの人は何かしら自分の原体験にひもづいた課題感や「社会課題のこういう悩みを解決したい」という気持ちが少なからずあるはずです。  あるかないかと言うよりも、「ある」という前提に立って、自身の体験を一度掘り下げてみるとよいでしょう。自身の体験をとことん掘り下げてみるのです。  あなたがもし起業や、事業の立ち上げを考えているなら、その原点に当たるエピソードを語ってみてください。それを誰かに語ったり、頭に描いたりしていくと想いが強固になります。 *「なぜ自分はわざわざこういうことをやろうと思ったのか」とか、「しんどくても続けてやりたい理由は何なのか」という根幹の部分を創業者自身が忘れてしまうと、事業は瞬間風速でうまくいくことはあっても、どこかで止まって崩壊してしまいます。迷ったとき、つらいときに必ずそこに立ち戻る「拠り所」が必要なのです。

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