ここまで、カネ、人、組織、事業、出口戦略にまつわる社長の悩みを見てきましたが、あらゆる領域のマネジメントに共通して言えるのが「意思決定」の難しさでしょう。 事業を進めていくうえで、簡単には判断を下せない事案が次々と出てきます。 たとえば、赤字を垂れ流している事業に、これ以上資金や人をつぎ込むか否か。 事業の顧客ターゲットを変えるなどのテコ入れをすべきか否か。 それ以外にも、採用の最終合否や人事異動、他社との提携や、重要顧客とのトップ商談などに加え、小さい決断も数多くあります。 世の中のすべての社長は、ほぼ毎日、意思決定の場面に直面していると言っても過言ではありません。 社長が迫られる意思決定はとりわけ社内外に与えるインパクトが大きいことばかりです。 全社が目指しているビジョンを達成するためには、リスクや失点を防ぐ「守りのアプローチ」だけではダメで、次の成長に向けた「攻めのアプローチ」が欠かせません。そのため、どうしても社長の意思決定には、失敗のリスクも伴います。 さらに、スタートアップの場合だと、そもそも誰もしたことがないビジネスを手がけていることも多いですから、何が正解なのかは、社長も含めて誰にもわかりません。 そのため、どんな社長も意思決定するのに躊躇するのは無理のないことでしょう。 しかし、意思決定をいたずらに先延ばしにしても、良いことはほとんどありません。 新しく立ち上げた事業がこのままでは厳しい、とうすうす感じているものの、ここまで投資をしてきたから期待したい、頑張ってきた社員の目もある、社外関係者への説明責任もある、だから、とりあえず思い切った意思決定は先延ばしにして事業を続けよう……。 その結果として、傷口が広がって、損失が著しく膨らんでしまう。このような例は数知れません。 あるいは、事業のテコ入れのために、幹部候補の中途採用を検討したものの、「他にもいい人がいるかもしれない」と思って決断を先延ばしにしていたら、他社に取られてしまったというケースもあります。「もうちょっと早く意思決定しておけば……」と後悔しても、時すでに遅しなのです。 そう考えると、失敗を恐れず、速やかに意思決定をすることが鉄則と言えるでしょう。 名だたる社長も、最初から正しい意思決定がスピーディにできたわけではありません。後悔と葛藤を繰り返しながら、意思決定の質やスピードを少しずつ高めているものです(*)。 もっとも、単に意思決定が早ければいいというわけではないのですが、その理由は、この後の「撤退の意思決定」の項で詳しく述べたいと思います。*社長として失点をしなかったら、良い社長かというと、そんなことはありません。ユニクロの柳井正さんが著書で「 10回新しいことを始めれば、 9回は失敗する」と言っているように、偉大な社長でも 1勝 9敗なのです。全勝する必要はまったくないのです。
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