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意思決定の失敗ケース ❶ サンクコスト

 とはいえ、撤退の意思決定は拙速に行なってはいけません。早ければいいというものではないのが悩ましいところです。  では、最適な意思決定を下すためにはどうすればいいか。その前に「意思決定を阻む要素」について知っておくことが大切です。  その一つが「サンクコスト」です。これは撤退の判断に大きくかかわってきます。  サンクコストとはこれまでに会社や事業に投入してきて、回収ができないコストのこと。「ここまでお金も時間もつぎ込んできたから、やめてしまうのはもったいない。いつか状況が好転するかもしれない」などと考えてしまい、サンクコストを回収しようとしてしまうことを、「サンクコスト効果」と言います。  負け戦だとうすうす気づいていながらリソースを突っ込み続けるのは、社長としては正しくない行為です。頭ではそうわかっていても、驚くほどに多くの社長がサンクコストに振り回されています。私自身も何度も経験があるので、気持ちは痛いほどわかります(*)。  そうなってしまうのは、「失敗を認めたくない」という後ろ向きの理由もありますが、社長は基本的にポジティブマインドの方が多いがゆえに「可能性がゼロではない以上、諦めたくない」「ここまでのみんなの努力を無駄にしないように頑張りたい」といった前向きな先延ばしが、さらなる不幸を招いてしまうのです。「このまま続けていてもゴールには進めない」と思ったら、一度冷静になって、別の選択肢を含めてフラットに検討することです。  過去は置いておいて、「今、この瞬間に自分が何のしがらみもなく経営に当たったとしたら、本当に今の事業を継続するだろうか」と客観的に自分を見ることが必要です。*創業初期から共に歩んできた、ある会社の役員の話です。本人は頑張っていましたが、事業上の成果は出ていない。そんな役員に対して「非常に厳しいな」と感じていながらも、功労者なので簡単には役職を解けませんでした。結果、ビジネスモデルを進化させるべきタイミングに手を打てず、後発の競合に大きくシェアを奪われ会社の経営が揺らいだことがあります。まさに意思決定の失敗が経営に悪影響を与えてしまった代表的な例でした。

意思決定の失敗ケース ❷ 過去の成功体験  もう一つの失敗パターンは、「過去の成功体験」に引っ張られるケースです。  伸びていた企業が没落するパターンの多くは、無意識に過去の成功体験や決断パターンに固執するあまり、意思決定のタイミングを見誤ってしまうというものです。  大企業に多く見られそうですが、意外にもスタートアップや中小企業でも頻発します。  ある企業の話です。社長自ら丹精込めてつくりあげたプロダクトが、出足こそ好調だったものの、想定していた目標からは大きく未達。いったい何が起きたのでしょうか。  後日、導入先の顧客に話を聞くと、じつはプロダクトを評価していたわけではなく、社長との関係性から導入をせざるをえなかったのです。  当の社長は、「プロダクトが市場で受け入れられた」と勘違いしており、「営業次第で拡販できるはず」と営業部に繰り返し改善を求めます。  しかし、プロダクトのコンセプト自体が市場に合わない以上、そう簡単に売れるはずがありません。組織の誰も社長の「成功体験」を表立って否定できず、経営に行き詰まってしまったのです。  ちなみに、歯止めが利かなかった根本的な背景には、社長は過去に近しいプロダクトをヒットさせてきただけでなく、この会社の経営陣が、過去に類似プロダクトで、別の会社を華やかに上場させた実績がありました。そうした成功体験があだとなり、現実と向き合えなくなってしまったのです。  トップとしては、常に、過去に囚われず、フラットな目で見ることが必要だったという教訓ではないでしょうか。

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