また、体を動かす日をつくっている社長は数多くいます。 そもそも社長はメンタルの強さが求められますから、メンタルを保つうえでも、肉体を整えることが大切です。私は肉体の専門家ではありませんが、実際に多くの社長と接しているとそう感じます。 社長は基本的に事業・会社のことを常に考えていますが、体を動かしているときは、なかなか他のことを考えられません。そうやって強制的に頭の中を空っぽにすることで、マインドをいったんリフレッシュするというわけです。 あくまで個人的な感覚ですが、社長の方は、自分を追い込むようなスポーツ、たとえば、トライアスロンのような競技をしている割合が一般の方より高いように感じます。これは比較的自分を追い込むことが好きというか、特性としてできる人が多いのでしょう。 「Mっ気がある」と言うとちょっと語弊がありますが、社長はそういう M気質を持っていたほうが向いているのかもしれません(もちろん、 Mじゃなかったら起業してはダメという話ではありません)。 私が思うに、社長がトライアスロンに求めているのは「困難」と「達成感」だと思います。 私も一時期、トライアスロンにはまっていました(ガチではないです)。 トライアスロンはスイムがあって、自転車があり、ランがある。数時間にわたりひたすら自分と向き合い、そして孤独な戦いが続きます。 経営においても厳しいフェーズがいくつもあり、それを一つひとつ乗り越えてゴール(ビジョンの実現)を目指すという点でトライアスロンと通ずるものがあります。 トライアスロンはいわば、「疑似経営」が体験できる競技なのではないでしょうか。しかも、タイムが出るので自分の成長実感が数値として得られるし、走り抜けた先に待つ仲間と喜びを分かち合える。 野球やサッカーなどのスポーツに比べると、トライアスロンは自分で目標を決めてやり切ることが求められる社長向きのスポーツだと言えますね。 ちなみに、私自身はサウナがとても好きでうまく活用しています。年がら年中オンの状態でいるのは、社長に限らず心身どちらにとっても不健康です(*)。 それでも常にファイティングポーズをとり続けなくてはいけない社長の方々は、意識的かつ計画的に「社長」という仮面を脱ぐことを習慣づけるのが大切だと思います。 健全な経営をするには、社長が自分で自身を健全に保つこと。自身をある意味で、一番のマネジメント対象として向き合うことが大切になると思うのです。*考えない時間をつくるという意味で、サウナに通っている社長は多いですね。私のおすすめは「渋谷 SAUNAS」。水風呂に頭まで浸かれるのがポイントです。「水温はシングルじゃないとダメ」などこだわりがありますが、紙幅が足りないのでまた別の機会に。
おわりに あなたは孤独な社長ではない ここまでお読みくださり、本当にありがとうございます。 経営にまつわる悩みや苦しみ、社長の孤独と試練、それと裏腹の楽しさややりがいについてつらつらと述べてきました。そして、それが起こる構造を解説してきました。 あくまで私の主観ではありますが、たくさんの社長を見てきた事例とそれに対する率直な想いを包み隠さず伝えてきたつもりです。 社長を志す皆さんのなかには「華やかに見えるけどこんな苦しみがあるんだな」と冷や汗をかかれた方もいるでしょう。また、会社員の方のなかには「私たちのためにこんなに頑張ってくれていたのか」「もう少し同情(?)の目を向けないとな」と社長に対して優しい気持ちが芽生えた方もいるかもしれません。 そして、社長の皆さんには、ご自身の原点や経営経験を思い返して、懐かしく思ったり、自身を褒めたく思ったり、周りに感謝する気持ちが芽生えたり、そんなきっかけになったかもしれません。 経営には悩みがつきものです。そして、誰かが完全に社長と同じ立場になってくれることはありません。でも、だからこそ、社長にしか見えない世界があり、社長にしか享受できない喜びややりがいが存在するのです。 どんなに歴史の長い会社も、急に生まれてきたわけではありません。誰かの想いから会社が始まり、その想いが紡がれ、広がり、仲間が集まります。 事業やサービスが顧客に届き、顧客から必要とされ、少しずつ、社会にその影響が広がっていきます。かかわる従業員たちの生活や家族の支えにもなっていくでしょう。 こうした未来を築き、たくさんの人の幸せに寄与していけるのは社長の喜びにほかなりません。 社長の方にはぜひ、自身の創業時や社長就任時を思い出して、そのときの想いを胸にまた今日からゴールに向かって歩んでほしい。 社長でない方は、社長の気持ちも踏まえてそのゴールの実現に向けてかかわってほしい。 これから創業しようとする人は、経営のつらさ、楽しさを感じてほしい。 それが本書を通して私が伝えたかったことであり、心からの願いでもあります。 途中何度も述べてきたように、エッグフォワードも決して順風満帆ではなかったのですが、「いまだない価値を創り出し、人が本来持つ可能性を実現し合う世界を創る」べく、企業にも個人にも真剣に向き合ってきたと自信を持って言えます。もちろん、今後も気を緩めるつもりはありません。 その意味では、私自身も孤独な社長の一人であり、ビジョンの実現のために戦っていくチャレンジャーです。これからも、皆さんと一緒に悩み、学び、そして成長していければと思っています。 本書では、私が 20年来、経営に寄り添うコンサルタントとして、株主と同じ船に乗るキャピタリストとして、そして、ミッションを大切にする起業家・経営者としてたくさんの会社に向き合い、たくさんの社長に伴走してきたからこそ、知りえる事例を数多く皆さんと共有してきました。 こうした内容を皆さんに伝えられたのも、たくさんのクライアント、投資先の社長のおかげです。エッグフォワードのメンバー、そしてリスナーの皆さん、読者の皆さんのおかげです。 冒頭で述べた通り、本書は Podcast「経営中毒 ~だれにも言えない社長の孤独〜」の内容を再構成して、大幅に加筆を加えたものです。プロデューサー、番組の MCとしてご尽力いただいた野村高文さんには感謝してもしつくせません。 また、拙い文章を、書籍にまとめていただいた編集担当の大隅元さん、編集協力の杉山直隆さんにも心から感謝しています。 本書が皆さんにとって、何かしらの拠り所やターニングポイントになれば、これ以上の喜びはありません。そして、その結果として、人が本来持つ可能性を実現し合う世界に少しでもつながっていきますように──。エッグフォワード代表 徳谷智史
著者略歴徳谷智史(とくや・さとし)エッグフォワード株式会社代表取締役社長/ GOLDEN EGG Ventures代表パートナー京都大学卒業後、大手戦略コンサルティング会社入社。海外法人の立上げとアジア代表を経て、「いまだない価値を創り出し、人が本来持つ可能性を実現し合う世界を創る」べく、エッグフォワードを創業。企業向けには、大手からスタートアップまで、 1000社超の企業変革コンサルティングを手掛ける他、出資 ×コンサルティングの VCスキームで「スタートアップ共創のエコシステム創造」を目指す。個人向けには、 2万人を超えるビジネスパーソンの意思決定・キャリアを支援。 NewsPicksキャリア分野プロフェッサー、 Podcast「経営中毒〜だれにも言えない社長の孤独〜」メイン MC、 PIVOT社長改造コーチ、著書に『キャリアづくりの教科書』( NewsPicksパブリッシング)など。趣味はハンドボール・サウナ。
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