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9「拡大志向」だけよりも「小さくなる能力」

 だれでも会社を大きくしたいと思うものです。それは本能だと思うし、その気持ちがないと経営はやっていけない。よい商品やサービスを提供して、喜んでくれるお客さまを増やそう、事業拡大によって幸せな従業員を増やそうと考えるのはよいことです。  けれども、固定費の負担増に見合った売上が続かない、規模が経営能力を超えてしまったなど、大きくしたがゆえにつぶれてしまった会社も、わたしはたくさん知っています。  ビジネスはよいときばかりではありません。売上が落ちるときもあれば、既存の市場全体がなくなるときもあります。  たとえば、いっときは女子高生などの使用で回線が足りなかったほど繁盛していたポケベル市場も、ケータイの普及によってほぼ消滅してしまいました。サブプライム問題に端を発した現在の経済危機でも、多くの企業がうまく小さくなれずに大きな赤字を計上しています。さすがのトヨタ自動車でさえそうです。景気がよいときに固定費を増加させてしまったからです。  うまくいっているときには、それがずっと続くような「錯覚」にとらわれてしまうものです。でも、投資や拡大をした結果、「あの設備投資をしなければ」とか「あの事業に手を出さなければ」と言ってもあとの祭りです。  では、拡大路線をとらないほうがいいのか、というと、もちろん、そんなことはありません。拡大しようとするときには、同時に「小さくなる能力」も確保しておくのです。いざというときに小さくなることができれば、会社をつぶすことはありません。不況抵抗力といってもいいでしょう。  ずいぶん、肝っ玉の小さい話だと思われるかもしれませんが、欧米の巨大企業では、 M& Aや提携に際しては、別れることを想定した契約をします(余談ですが、米国の金持ちは、結婚するときに離婚のことまで考えて、結婚前の財産は、もし離婚する場合には分与しないという契約を交わすことがあるそうです)。  日本人は前向きのことを考える際に、同時に後ろ向きのことを考えるのが下手だし、いやがりますが、外国企業は、 M& Aや合弁の提携交渉などをする場合、必ず「撤退条項」についてきっちり詰めてから契約を締結します。これについては見習うべきだと思います。  さて、小さくなる能力を得るには、たとえば外注を活用すればよいでしょう。すべてを自社でやるのではなく、その一部分を外注で賄うようにします。  従業員を鍛えておくのも小さくなる能力です。つまり、どうしても人員削減をしなくてはいけなくなってしまったとき、辞めていただかなければならない社員が路頭に迷わなくてもすむように、つまり、すぐ別の会社に就職できるだけの実力をつけられるような環境にしておくことです。十分に実力のある従業員なら、いざというときでも他社から引っ張りダコのはずです(とはいえ、そういう従業員が多くいる会社には、「いざ」というときは少ないはずです。不況に陥っても、そんな会社は独り勝ちということもあります)。  また、借入れを一定限度内にすることもたいへん重要です。  借入れが一定限度以上になると、借入れ返済のために売上から資金繰りをつける自転車操業をせざるをえなくなり、事業規模や売上を落とせなくなってしまいます(残念ながら、そんな会社を少なからず見てきました)。  つまり、小さくなりたくても、なれなくなってしまうのです。  では、借入れが一定限度以上というのは具体的にはどのくらいか、ということですが、これについては、「社長力 4  会計力」の章で説明します。

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