しょせん中小は中小、大企業には勝てない。一番にはなれない。ひょっとしたら、そう思っている方がいるかもしれません。そして、やっぱり会社は大きいほうが強いのだと。 ふうむ。 では、ちょっとここで質問します。──日本で一番広い湖はどこですか? そう、琵琶湖です。では二番目は?──日本で二番目に高い山はどこですか? 実はこれ、以前、わたしが受けた質問です。分かりませんでした。正解は、霞ヶ浦と南アルプスの北岳なのですが、いったいどれだけの方が答えられるでしょう?一番ならだれでも知っている。でも二番目は知らない。二番手は覚えてもらえない。 これが現実です。たしかに一番でなければ意味がない。一番になれない限りどうしようもない? では、次の質問ならどうですか?──日本で一番の百貨店はどこですか? 講演のたびに、聞いてみました。すると、関西の人は高島屋だと言うし、東京の年配の方は日本橋の三越、若い人は伊勢丹、名古屋では JR高島屋だと言います。友人の芸術家に聞いたら銀座の松屋だと言いました。ディスプレーが一番きれいだからだそうです。 さて、ここからが本題です。 山や湖は一番がひとつしかないのに、百貨店の一番がたくさんあるのはなぜか? それは、山や湖は「客観的基準(高さや大きさ)」で質問しているのに対し、百貨店については「一番の基準」を回答者に委ねているからです。言い換えれば、お客さまはそれぞれ、どの会社や商品を一番だと思うかを 自分の「主観的基準」で決めている。 ここにこそマーケティングの重要なポイントがあります。 すなわち、意識するしないにかかわらず各人が、それぞれ「自分にとって」最適な Q、 P、 Sの組み合わせを持っており、その一番のところを「主観的に」選んでいるのです。 少々値段( P)が高くとも、商品の品質( Q)やサービス( S)がよいものを好むお客さまもいれば、 Q、 Sはそこそこでも Pが安いほうがよいと考えるお客さまもいる。巨人ファンがいれば阪神ファンもいるのと同じで、あくまでも「主観的」基準なのです。 規模などの客観的基準ではなくて「主観的一番」、それがお客さまが商品を選ぶときの基準です。 先に説明した「リレーションシップ・マーケティング」で一〇〇%のブランドロイヤルティや店舗ロイヤルティを持つ「支持者」となっていただくとは、この「主観的一番」を持っていただくことなのです。主観的一番ならよそを選ぶ理由がないからです。 ですから、勝ち残りの大鉄則とは、 メインターゲットとするお客さまに主観的に「おたくが一番」と言ってもらえる Q、 P、 Sの組み合わせを提供することです。 これは、客観的一番をとれない企業がとる戦略という意味ではありません。そんなことはどうでもいい。お客さまが望む最適の Q、 P、 Sの組み合わせを提供し続けようと思うこと、それこそが、「お客さま第一」の根幹だからです。 もともと売上高などで客観的な一番をすでに持っている会社でも、客観的一番は、必ずしも主観的一番ではないので、客観的一番を主観的一番に変える工夫を怠ってはなりません。 この場合、具体的には、多くのお客さまに買っていただいているという「安心感」を強みにアピールすることもできます(心理学的には「同調」を促すということになります。ほかの大勢がやっているのと同じことを行うことに、人は本能的に安心するのです)。 安心感というのも、主観的なポイントです。 わたしたちが何かを選ぶときには、主観的には、好きか嫌いかということが非常に大きなポイントとなります。商品に対する「信頼感」、価格に対する「値ごろ感」、サービスに対する「安心感」、「心地良さ」、会社に対する「愛着」など、たくさんの要素が、お客さまの心理に影響を与えるのです。
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