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1「新規事業」よりも「人材育成」

 武田信玄で有名な武田節に、「人は石垣、人は城」というくだりがあります。まさにそのとおりです。ある会社の経営計画書に、「五年後を支えるのは新規事業、十年後を支えるのは人」とあるのも同じでしょう。この経営計画書は、「人こそが最大の財産と考えて、採用、教育を行わなければなりません」と続きます。  現代の経営を見ていると、多くの会社で、あまりに戦略志向に偏っており、人材育成の大切さが軽視されているように思えてなりません。頭でっかちで、経営など実際にはやったことのないコンサル(失礼!)を入れるのが流行っているからか、戦略さえ正しければすべてがうまくいくという、頭だけで経営を考える風潮が強まっているように思います。  戦略はもちろん企業経営の「必要条件」ですが、人が動くことが「十分条件」です。  人こそが企業の基盤です。適切な人材がいなければ、どんなに優れた戦略も十分には機能しません(いま「適切な人材」と書きましたが、これについては、次項で詳しく説明します)。  生前、松下幸之助さんは、「松下電器(現パナソニック)は何をつくっている会社かと尋ねられたら、人をつくっている会社です、あわせて電気製品もつくっています、と答えなさい」と言ったそうです。よい会社は人を育てているのです。  とはいえ、教育はすぐには効果が出にくいものです。経営者も投資家も短期的な利益を求める風潮が強いなか、人の教育に時間とお金をかけるには勇気がいります。でも、立派な経営者は、人を育てることが結局は企業業績をよくすることであり、  有為な人材を育てることが大きな社会貢献であると考えているのです。その度量の大きさが、ちまちまと自社の短期的な業績を求めている経営者より、結局、企業を発展させるのかもしれません。  ある会社では、新卒採用者には入社半年前から会社の基本方針などの教育を数日間の泊り込みで行っています。「鉄は熱いうちに打て」ということですが、そうした地道な努力が、遠回りに見えても結局は会社をよくする近道となります。  ちなみに、人に関して松下幸之助さんは、「各人が店主だと思え」とも言っています。各人、自分がそれぞれ独立して商売していると考えよ、というのです。  企業という組織に属していても人に依存せず、独立心を持って行動するべきだということです。  これは、自分勝手に行動するべきだと言っているのではありません。一人ひとりが自分が店主だという気持ちになって、仕事や採算に関して責任を持って働くことが重要ということでしょう。  サブプライム危機後、日本でも「派遣切り」などが大きな問題となり、また、派遣社員だけでなく、正社員の雇用もおぼつかない企業が増えるなか、「人」についての考え方があらためて問われる時代となっています。  わたしの人生の師匠である曹洞宗の藤本幸邦老師は、「経済は人を幸せにする道具」とおっしゃっていますが、道具である経済や企業に、人が振り回されては本末転倒です。  長期的には年功序列の終身雇用制度の維持がむずかしくなり、働く人の意識も多様化しているなか、いろいろな意味で考えなければならないことです。

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