働く人の気合いがあればこそ、うまくいくことはたくさんあります。逆に、どんなに優れた戦略でも、肝心の実行する人たちに情熱がなければ何事も実現しません。でもやはり、気合いだけではどうにもならない、というのも事実です。 上司はよく、「とにかく気合いだ! がんばれ」などと言いますが、実際のところ、たいていの部下は、何をどうがんばればよいのか分かっていないのです。やることが分かっていたら、すでにやっているはずです。そんな上司には、部下は心の中で「あなたこそがんばれ」と思っているのです(口に出して言わないだけです)。 経営のコツのひとつに「具体化」があります。 たとえば、わたしの事務所は東京の麹町にありますが、そのあたりの地理をまったく知らない人に、「東京駅まで行ってください」と頼んでも簡単には行けないでしょう。 しかし、会社の近くの地下鉄有楽町線の麹町駅で新木場行きに乗り、三駅目の有楽町駅で先頭車両方向に降りて、そこで JR山手線に乗り換えて一駅で東京駅だ、ということを教えてあげれば、小学校高学年の子どもでも行けます。 部下に指示をするときは、このくらい具体化してやらなければいけません。 最初はブレークダウンした目標を与えて、それを順にこなしていってもらい、達成するとはどういうことかを知ってもらうのです。 ただし、いつまでも具体化ばかりだというのも、それはそれで問題です。部下の自発性がなくなるか、もっと自律的な仕事をさせてくれる会社に転職してしまいます。 つまり、上司は、時機を見て、その具体化を部下が自発的にできるように促していかなければならないわけです。ちょうど、子どもが小さいうちは手取り足取り教えてやらなければならないけれど、ある程度大きくなったら大筋の方向性を示せばよいというのと同じように。 このように言うと、たいていの人が、わたしは具体化して、部下に指示を伝えています、とおっしゃいます。ところが、実態は? というと……。 「具体化」に関する最大の問題は、具体化できない人は、自分が具体化できていないということに気づかない、ということです(まあ、これは、具体化に限らず、何についても言えることですが)。養老孟司先生が、著書の『バカの壁』(新潮社刊)で、「言っても分からない人間は分からない」と言っているように、たしかに本人はそのことに気づいていません。 けれども、「具体化」に関しては訓練次第で能力は向上します。 会議などで具体化を心がける質問をみんなが出すようになるだけで、ずいぶん違ってくるはずです。特に、「高い、安い」、「よい、悪い」といった形容詞が出てきたときは、チャンス(?)です。 「それで具体的には?」とだれかが口を挟むようにします。 たとえば、「もう少し安ければ売れると思う」という意見に対しては、 「もう少しって具体的にいくら?」といった具合です。そういう質問を繰り返すうちに、みんな漠然としたことを言わなくなります。「ほんとう?」「なぜ?」「それから?」は、具体化のためのキーワードです。 先に触れた「小さな行動を変える」もそうですが、こうした小さい習慣を積み重ねることが、会社の体質を確実に強くしていくのだとわたしは思います。
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