ここまでに、差別化力がある経営システムのつくり方について説明してきました。ただ、これを実行に移すには、会社のリーダーである、社長自身の実行力をしっかりと高めなければなりません。 では、社長個人の実行力は、どのような要因で決まるのでしょうか? 多くの競争相手がいる環境では、ランチェスターの第 2法則が適用されるので、その公式に従って説明しましょう。 社長の実行力は、「仕事時間量の 2乗 ×質」で表わされます。 この場合の質とは、社長が責任をもって担当すべき仕事の種類のことです。 これを微分すると2つの要因のウエイトが出ます。ウエイトは、仕事に投入する時間量が 67%を占め、質は 33%になります。 だから社長が実行力を高めて業績をよくするには、まず仕事時間量を多くし、次に質を高めればよいのです。 a.必勝と圧勝の時間戦略 社長が実行力を高めるには、まず仕事時間量を多くしなければなりません。 では、どれくらいの時間、仕事をすれば合格といえるか時間目標を決めておく必要があります。 中小企業の平均労働時間は 1850時間なので、これを基準時間とします。 では社長は、どれくらいの時間仕事をすれば同業者の中で合格といえるのでしょうか。 これにはアメリカの数学者バーナード・コープマンが、ランチェスターの法則を使って導き出した「必勝と圧勝」の数値が参考になります。 これによると必勝型は 3倍になり、圧勝型は 4倍になります。しかし仕事時間には「 2乗」がついているので、実際の仕事時間は、この平方根でよくなります。 ちなみに社長が休日に自宅で経営戦略の研究をしたり、経営計画書づくりをした作業は仕事時間に入るので、平日の仕事時間は思ったほど多くはなりません。
経営の全体をつかみ、やるべきことをウエイト付けする ではここで、経営の全体をつかみ、社長がなすべきことをウエイト付けしてみましょう。 経営を構成する8つの「大事な要因」と、これを実行に移すときの作業手順の2つを組み合わせると経営全体像がはっきりします。私はこれを竹田ビジネスモデルと名づけました。 1.商品対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 2.地域対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 3.業界・客層対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 4.営業対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 5.顧客維持――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 6.組織対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 7.資金・経費対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 8.時間対策――願望 →目的・目標 →戦略 →戦術 次に、経営を構成する大事な要因のウエイトと、社長の願望や熱意を除いた実行手順のウエイトの2つをかけると、経営を構成する全体のウエイトが出ます。 営業地域、業界と客層、営業方法、顧客維持の4つをまとめた「広い意味での営業対策」では、戦略分野が 45・ 7%を占めていて最も多くなり、次いで商品戦略が 22・ 9%となります。2つを加えると 68・ 6%にもなるので、社長はこれらの戦略については、何としても実力を高めなければなりません。 これに対して組織対策の戦術に当たる賃金制度などの処遇は、 1・ 9%しかないのですから、賃金制度は簡単にして手間がかからないようにすべきです。 また、資金と経費対策の戦術に当たる簿記や会計は 1%しかないのですから、これも簡単にして手間がかからないようにすべきでしょう。 アメリカで出版されるビジネス書に、必ず出てくるのがマーケティングについてです。 マーケティングはもちろん大切なのですが、しかしマーケティングという言葉だけでは、その「構成要因と範囲」がはっきりしないばかりか、ウエイト付けもされてないので、ひどくあいまいになっています。 しかし、この表の組織対策と資金・経費対策の2つを除いたものをマーケティングの構成要因と考えれば、とてもわかりやすくなります。 ドラッカーは、「マーケティングに販売戦術は入れない」と言っていますが、コトラーなどの他の本では明示していません。このためだけではないでしょうが、日本のコンサルタントのマーケティングについての説明も、社長にとってはとてもあいまいで、応用しにくくなっています。社長の実行力は、「仕事時間量の 2乗 ×質」で決まる ここまでに、差別化力がある経営システムのつくり方について説明してきました。ただ、これを実行に移すには、会社のリーダーである、社長自身の実行力をしっかりと高めなければなりません。 では、社長個人の実行力は、どのような要因で決まるのでしょうか? 多くの競争相手がいる環境では、ランチェスターの第 2法則が適用されるので、その公式に従って説明しましょう。 社長の実行力は、「仕事時間量の 2乗 ×質」で表わされます。 この場合の質とは、社長が責任をもって担当すべき仕事の種類のことです。 これを微分すると2つの要因のウエイトが出ます。ウエイトは、仕事に投入する時間量が 67%を占め、質は 33%になります。 だから社長が実行力を高めて業績をよくするには、まず仕事時間量を多くし、次に質を高めればよいのです。 a.必勝と圧勝の時間戦略 社長が実行力を高めるには、まず仕事時間量を多くしなければなりません。 では、どれくらいの時間、仕事をすれば合格といえるか時間目標を決めておく必要があります。 中小企業の平均労働時間は 1850時間なので、これを基準時間とします。 では社長は、どれくらいの時間仕事をすれば同業者の中で合格といえるのでしょうか。 これにはアメリカの数学者バーナード・コープマンが、ランチェスターの法則を使って導き出した「必勝と圧勝」の数値が参考になります。 これによると必勝型は 3倍になり、圧勝型は 4倍になります。しかし仕事時間には「 2乗」がついているので、実際の仕事時間は、この平方根でよくなります。 ちなみに社長が休日に自宅で経営戦略の研究をしたり、経営計画書づくりをした作業は仕事時間に入るので、平日の仕事時間は思ったほど多くはなりません。
b.朝の仕事始めは 7時 30分 朝何時から仕事を始めるかも、時間戦略の重要な要素です。 それは、 7時 30分です。 私がかつて企業調査会社に勤めていて、倒産会社の取材をしていたときに気づいたことがあります。それは、倒産会社の社長はほとんど、 9時 30分 ~ 10時頃の遅い時間に出勤することでした。二代目や三代目で倒産した社長で、特にこの傾向が顕著でした。 では逆に、業績が良い会社の社長は朝何時に出勤しているだろうかと考えて調べたところ、 6時半とか 7時など早い人もいたのですが、 7時 30分までがいちばん多くなっていました。しかもどの社長も、必勝以上の時間戦略を実行していました。 このことから私は、社長は 7時 30分には仕事を始めたほうが良いと結論づけました。「資金はない、人脈はない、信用もない」など、ないないづくしの中で起業し、一代で大企業に育てた社長たちはほとんど朝型で、しかも「決死型」(年間 4140時間)以上の時間戦略を実行しています。 本田技研の本田宗一郎氏、京セラの稲盛和夫氏も朝型で、毎年 5000時間以上、 35年も働き続けています。孤児という境遇に負けることなくカレー店をつくり、これを上場企業までにした壱番屋の宗次徳二氏は毎年 5500時間、 35年も働き続けました。自宅のガレージで経営を始め、世界的な企業に育てたアップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏も、朝型で、 4500時間、 25年間働き続けました。 もちろんこれらの社長は素質も並はずれて高く、「われわれとは違う」と言う人がいるかもしれません。しかしだからこそ、社長としての素質がふつうのレベルの人が高い経営システムをつくり、それを力強く実行してより大きな成果を出すには、朝型で、必勝型以上の時間戦略を実行することが欠かせないのです。 社長としての素質は中以下で、働く時間も少なければ、結果がどうなるかははっきりしています。 では必勝型(年間 3200時間)以上の時間戦略は、何年間続けるとはっきりした成果が出るようになるでしょうか。 社長の場合は、 5年間です。 さらに、地元の同業者の中でトップクラスの実力を身につけたいと思うなら、 15年は続ける必要があります。 仕事時間を多くすることは、言い換えれば「仕事時間の差別化」です。だから、競争条件が不利な会社の社長は、時間戦略の実行が欠かせないのです。 中には、「自分はこの業界で首都圏で 1位になるのだ」とか「この商品で近畿圏 NO. 1になるのだ」と言っておきながら、朝は遅くに出勤し、夕方もさっさと帰って遊びに行くような社長がいます。あなたの同業者にも、そんな社長が必ず何人かいるはずです。そういう人はただの「ホラ吹き」なので、要注意です。 c.「 80対 20の法則があるではないか?」という疑問 私はこれまで、今述べたような話を、「利益時間戦略」というテーマで 500回以上も講演してきました。講演が終わって質問の時間になると、決まって次の反論が出ました。「質を高めれば、それほど働く時間を増やさなくても業績を向上させることができるのではないか」 「80対 20の法則に従い、より重要度が高い仕事に力を入れて取り組めば、働く時間を長くしなくても業績を良くすることができるはずだ」 などという質問です。 一見すると、これは正しいように思えます。 しかしそれらの質問はみんな、「質」についての話です。もし同業の社長と比べて質が変わらないのであれば、実行時間量が多い人がより多くの成果を出すに決まっているのです。 それより何より、素質が高くない人が仕事の「質」を高めるには、大量の学習時間が必要になるのです。 社長の仕事の「質を上げる」とは、ここまで述べてきた利益性の原則や戦略と戦術の違いを知り、ランチェスター法則の応用から出てきた強者の戦略と弱者の戦略に基づいた商品戦略、地域戦略、営業戦略、顧客維持の戦略、組織戦略、資金戦略と経費戦略などをしっかりマスターすることです。 これらを研究し、同業者 100人中 3番以内に入るようにするには、ふつうの人であれば 3000時間は必要になるでしょう。 これを 10年間でマスターしようとすると、 1年間では 300時間が必要です。この学習時間を平常の仕事時間に加えると、結局、長時間労働になるのです。 d.時間管理の 4大条件 時間戦略を実行してより多くの成果を出すには、そのウエイト付けもしておく必要があります。ランチェスター法則を応用して計算すると次のようになります。 1.仕事時間量を同業者よりも多くする。(戦略)………… 57% 2.自分が責任をもって担当すべき仕事を正しく理解し、重要度が高い仕事に時間を優先して配分する。(戦略知識)………… 29% 3.仕事の計画を立てるとともに、仕事時間のムダを少なくする。(戦術)………… 14% 1と 2は仕事時間における戦略分野で、合わせて 86%になります。 一方、「時間をムダなく使う」のは当然欠かせないことですが、これは戦術なので、時間管理全体では 14%になります。 もし同業の社長より仕事時間が 2割も 3割も少なければ、時間をいくらムダなく使ったとしても、同業者の社長より多くの成果を出すことはできないのです。 時間管理について書かれた本ではどれも、時間を効率的に使うことばかり説明していますが、それは、戦略と戦術の区別がついていないからでしょう。 以上、この第 1章では、差別化力のある経営システムをつくるときに欠かせない、経営を構成する大事な要因と利益性の原則について説明し、つくった経営システムを実行する際の手順について説明してきました。 これらのことは経営では基本部分になるので、何回か目を通して理解を深めるようにしてください。
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