MENU

1セミナーや講演会の効果と限界を知っておく商工会議所などのセミナーは社長用が少ない

 この章では、社長が経営戦略を高めるときに欠かせない方法をいくつか説明します。  中小企業の社長がよく利用しているのが、商工会議所などが主催するセミナーです。あなたの会社も商工会議所の会員になっていて、さらに参加料金も安いなどの理由で、 1年に何回かはこうしたセミナーに参加していることでしょう。  しかしこれには、いくつかの問題点があります。  問題点の 1番目は、経営戦略で最も大事なテーマに関するセミナーが少ないことです。  私もあちこちの商工会議所からセミナーの講師を依頼されますが、何カ所かで過去 2年分のプログラムをコピーしてもらって調べたところ、最も多いのは従業員を対象にしたテーマで、 65%以上を占めていました。  一方、社長のための、経営戦略など経営の大事なところについてのセミナーは、 8%くらいしかなかったのです。これだと、 1年間に開かれるセミナーが 30回だとすれば、社長のためのテーマは年間にわずか 2、 3回ということになります。これでは、中程度の実力を身につけることもできません。  従業員 100人以下の場合、業績の 96%以上が社長 1人の戦略実力で決まるのに、なぜこうなっているのでしょうか。  その原因はいくつもあるでしょうが、最も大きいのは、中小企業の社長が商工会議所に、「従業員教育のセミナーを多くしてくれ」という要望を多く出すからです。そうした要望が多ければ、担当者は当然、そのニーズに応えようとします。  ですから中小企業の社長は、まず社長の戦略実力を高めるセミナーを増やすよう、商工会議所に要望すべきなのです。社長が実力を高めて、自分自身で従業員教育に取り組もうというふうに、発想を変えなければなりません。  問題点の 2番目は講師が説明する経営規模と、セミナーに参加している社長の会社の経営規模との間に、ミスマッチが発生していることです。  セミナーを担当する講師の多くは、アメリカ人が書いたマネジメントやマーケティングの本を参考にして話します。しかしそれらの本が扱う会社の規模は、たいてい従業員が 3000人以上の大企業が中心です。中でもドラッカーの本にいたっては 1万人 ~ 10万人規模の企業の話がよく出てきます。日本で従業員が 1万人以上いる会社は、わずか 100社くらいしかありません。  こういう本で学んだコンサルタントは、「管理職はこうあるべきである」云々の話をしますが、不思議なことに「社長はこうすべきだ」という説明はほとんど出てきません。そのため日本の社長たちはみんな、勘違いしてしまうのです。「管理職」とは戦術リーダーを部下にもち、自分自身は戦術リーダーの仕事をしない人で、大企業ではだいたい部長職に当たります。  管理職は、自分の人件費を初めとして、自分がいるために発生する経費はすべて部下の働きに依存するので、一定数以上の部下をもたないと、自分がいること自体が業績を悪くする原因になってしまいます。  卸売業や業務用の販売業など、訪問型の業種で考えてみましょう。   1人の部長(管理職)が、 5人の戦術リーダーを部下にもつとします。 5人の戦術リーダーは、それぞれ 10人の営業パーソンを部下にもっているとすれば、その管理職の部下の総数は 55人になります。  このような部長が 2人いれば部下の総数は 110人、 3人いれば 165人です。実際の経営では、他に経理部や倉庫係、配送係なども必要になるので、従業員の総数はこの 3割増しになるはずです。もう、中小企業とはいえません。  ここで何が言いたいのかといえば、企業数の 98%を占める従業員 100人以下、特に 70人以下の会社では、本当の意味で管理職といえる人は社長だけだということです。  そういう会社では、後継者はともかくとして、「本部長」などは必要ないのです。  それなのに、コンサルタントの多くは、「社長以外の」管理職のあり方について話すため、実態とずれた内容になってしまいます。  もちろん部下が 10人くらいの戦術リーダーを管理職と呼んだり、 4 ~ 5人の部下をもち、自分も戦術を担当している伍長型のリーダーを幹部と呼ぶことはできます。しかしそれらは、あくまでも名前だけの管理職や幹部です。  名ばかりの管理職をたくさんつくって、残業代を節約している社長もいるようですが、これは論外です。  こういう初歩的な誤りが生じる大きな原因は、セミナーを担当するコンサルタントが、日本の会社の従業員数別の統計をきちんと理解していないからでしょう。  個人企業まで含めた日本の会社の従業員数別の比率は、次のようになっています(小数点以下の数字は四捨五入しています)。   1人 ~ 9人…… 80%   1人 ~ 19人…… 90%   1人 ~ 29人…… 94%   1人 ~ 49人…… 97%   1人 ~ 99人…… 98%  ちなみに個人企業まで含めた平均従業員は約 8人で、個人企業を除いた法人企業だけの平均従業員は約 16人です。  経営書の中には、「小さな会社の ○ ○」などのタイトルの本がたくさんあります。あるときふと、小さな会社とはいったい何人規模の会社を指しているのだろうか、と疑問に思いました。そこでさっそく知り合いの社長 300人にアンケート調査をしてみたところ、平均は 27人でした。  つまり小さな会社とは、 25人 ~ 30人規模以下の会社を指しているのです。

 東京や大阪では上場企業の子会社が多いので、従業員が 200人 ~ 300人いる会社が何社もあります。しかし地方に行くと 100人以上いる会社はとても少なく、 30人以下の会社がとても多くなっています。  だからセミナーを担当する講師は、人口 50万人以上の都市では従業員 30人 ~ 50人規模の会社を中心に、人口 50万人以下の都市で話をするときは 20人 ~ 30人規模の会社を中心に、人口 10万人以下の都市では 5人 ~ 20人規模の会社を中心に話をすべきなのです。そうすれば、講師が説明する経営規模と参加者の経営規模が一致するので、説明を聞く人の誤解が少なくなるはずです。  問題点の 3番目は、業種の違いによるミスマッチです。  業種の数は年々多くなり、現在では 1万を超えているため、セミナーの講師が説明する業種と、セミナーに参加した社長の業種が一致する率はとても低くなります。  もちろん、経営の大事なところはどんな業種でも共通します。  しかし、経営の大事なところはつかみどころがなく、やや抽象的になるので、これをわかりやすく伝えるには具体例が必要になります。その具体例が、参加している社長の業種と同じか近い業種であれば、参加者も理解しやすくなります。  だから商工会議所が中小企業の社長を対象にして経営戦略のセミナーを開くときは、製造業、建設業、卸売業、小売業、飲食業など、最低でも 5業種から 6業種に分け、場合によってはもっと多く分けるべきでしょう。こうすれば業種の違いによるミスマッチがかなり防げます。  他にも、セミナーには「差別化について詳しい説明をする講師が少ないこと」「セミナー時間が短いので本当に役立つ話は少ししかできないこと」など、いくつかの問題があります。  そのため、従業員 50人以下、特に 30人以下の規模の会社の社長が、経営を進める上で欠かせない大事なテーマの戦略実力を、商工会議所が行う 1時間 30分 ~ 2時間 30分のセミナーだけで上位に高めることは期待できないのです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次