「資格っていうのは現場で働く人が持つものであって、社長は資格なんていらないんだ。うちの会社も、建築士の免許を持っている人を雇ってはいるけれど、お父さんは何の資格も持っていない。 資格どころか、本当の専門家としての知識だって、社長には大していらない。当然、学歴もいらない。学歴で銀行がお金を貸してくれるわけじゃないし、学歴で仕事が取れるわけでもないんだから。 学歴や、勉強ができることや、資格を持っていることと、仕事ができることは全く違うんだよ」 予想外の内容にショックを受ける私。そして、続いて聞こえてきた父の言葉が、良くも悪くも私の人生を大きく変えた。 要は、判断ができればいいんだ。何をやればいいのか? それとも、やらないほうがいいのか? いくらで仕事を受けるか? 誰に任せるか? どんな物を作るか? そういう、「何が自分の会社にとっての正解なのか?」という判断さえできれば、それでいいんだ。 建築士になるには膨大な時間を使って勉強しなくてはいけない。建設業には建物の知識以外に、電気や水道の知識、土地の知識、金融や法律の知識も知らなければいけない。それらを全部、プロのレベルまで勉強したり、資格を取って専門家になったりするなんてことは、時間がかかりすぎて無駄だし、そもそも専門知識があったとしても良い社長になれるわけじゃない。 社長に必要なのは、その時々の状況に応じた適切な判断だ。適切な判断ができれば、それ以上の知識なんていらない。ただし、その適切な判断ができるくらいまでは、その分野のことを理解する必要がある。でもそれは、その道の専門家として生きていくレベルの半分以下でいい。数分の一か、数十分の一の理解で、ほとんどの場合は事足りる。 技術だって法律だって年々変わっていく。それを全部覚え、習得する必要はない。正しい判断ができる基準さえ持てば、あとは専門家に聞けばいいんだ。専門家はそのためにいるんだから。
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