「自分があと 3人いたらいいのに……」というセリフは、多くの社長から聞かれる悩みだ。自分はこれだけのことができるのに、今いるメンバーは「気が利かない」「物事の理解力が低い」「言われたことすら満足にできない」などなど。だから、自分があと 3人いたら、もっとうまくいくはずと考える。 これもまた、自分が万能でなくてはならない、自分が一番できなくてはいけない、と考える社長の典型的な悩みと言える。私自身も過去に「自分があと 3人いたら……」と思っていた時期がある。しかし今は、全く思わない。 なぜなら、それぞれの分野で自分より能力の高い人や、自分とものの見方・考え方が違う人たちと仕事を共にして、そのおかげで、私自身の可能性を大きく超える成功を手にしているから。自分の独断でやるよりも彼らの意見を聞き、統合しながら仕事を進めたほうが、圧倒的に結果が素晴らしく、かつ効率が良いことがわかっているからだ。 それに、どんな人にも調子の波があり、良いパフォーマンスを発揮できるときもあれば、イマイチのときもある。当然ながら、得意なこともあれば苦手なこともある。会社を自分だけのリーダーシップでワンマン運営すると、調子の悪いときや体調がすぐれないとき、気分が乗らないとき、苦手な分野の仕事に直面したとき、そのまま会社の雰囲気や業績につながる。まさに、自分の限界が会社の限界になるのだ。 一方で、普段から様々な人の意見に耳を傾け、力を合わせて協力しながら会社を運営していれば、思わぬところで思わぬ人の力が発揮されることもある。結果、ワンマンで運営しているよりもリスク回避ができ、チャンスに強くなり、可能性も広がり、安定度も増してくる。いいことずくめだ。 また、世間的なイメージとして、「社長は偉い」というものがあるかもしれない。しかし、社長は偉いわけでもない。社長も単にひとつの役割に過ぎないからだ。 例えば、社長より腕の立つ職人がいれば、その人が社長よりも威張っている会社もある。仕事をとってくる営業担当者が威張っている会社もある。私の父親も社長だったが、その会社には、社長である父よりも偉そうな従業員がたくさんいた。 社長の仕事は判断をすることであり、社長自身が何でもできる必要は全くない。むしろ、あまりできないほうが従業員としては仕事がしやすいことも多い。 では、社長には何が必要なのかと言えば、それは「判断できる力」であり、そのための「知識」だ。誰でも社長になれるとは書いたが、全く無知の社長では、会社はすぐに行き詰まってしまうだろう。 では、どの程度の知識があればいいか。それは、会社運営に必要な出来事を「判断できるレベル」の知識だ。 会社の業務ひとつひとつには、それぞれ得たい結果があり、プロジェクト単位や月次、年次単位でも得たい結果があり、決算などでも得たい結果がある。それらの得たい結果を理解し、そこに達するためには何が必要なのかを理解できるだけの知識は、社長に必要だ。 その知識を備えた上で、他人の仕事を理解し、適切な人に適切な業務を任せる、という判断ができればいい。簡潔に言うと、「やるかやらないか」そして「任せるか任せないか」を判断できれば、それでいい。 社長は、仕事を任せたり、指示を出したりできるレベルの知識を持っていればよく、それ以上の勉強をする必要はない。だが、そのレベルにも達していなければ、誰にも何も任せられないどころか、誤った判断を下して、任せてはいけない相手に任せてしまうことにもなりかねない。
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