シナリオを描く際の環境分析には、特に政府などが公開している統計データが役に立つ。
例えば、ある街に引っ越すとして、私なら、そこに隕石が落ちてくる可能性はどのくらいあるかをデータで確認する。少なくとも過去 100年は一度も落ちていないとわかれば、隕石の心配はあまりしなくていいとわかる。 隕石の話は極端だとしても(だが冗談ではない)、会社のある地域の地震発生率や津波の被害想定などは、実に多くの情報が提供されている。 あなたは、自分の住んでいる地域やオフィスがある街のハザードマップを確認したことはあるだろうか。自分が、大雨の際にどの程度浸水する可能性がある地域に住んでいるか、しっかりと把握しているだろうか。津波のときはどうだろうか。 あるいは、何らかの障害で長期間にわたって停電してしまったらどうだろう。キャッシュレスだけに頼っていると、電子決済ができずに何も買えなくなる可能性がある。となれば、ある程度の現金は手元に置いておいたほうがいいかもしれない。 こうしたシナリオは、いくつかの統計データを見るだけでも、イメージが湧いてくることが多い。企業の倒産に関する統計を見れば、よくある倒産のパターンがわかるし、実際の例を見れば、具体的にどんなことが起こり得るのか知ることもできる。 例えば、会社が高齢化すると倒産しやすい。だから、しっかりと人を育てなければ倒産が早くなる。設備投資をしなければ、いずれ倒産する。様々なデータに目を通すことで事前に対策が立てられるようになり、会社の安定度が増す。 環境分析が身につくと、そのうち、データや情報を眺めるだけで様々な仮説における対応が思い浮かぶようになっていく。あらゆる事態を想定してシナリオを描いておくことは、ビジネスと人生を盤石なものにしてくれる。 パンデミックによって世界中の経済どころか社会生活までも止まってしまうとは、誰も想定できなかった、という意見があるが、本当にそうだろうか? 人類にとって未知のウイルスとの遭遇は、何も新型コロナウイルスが初めてではない。よく引き合いに出されたスペイン風邪やコレラのほかにも、近年でも、 SARSや新型インフルエンザの大流行があった。 そうした情報をもとに、もしさらに謎のウイルスが発生して、大規模な感染拡大が起きて、世界中の移動が禁じられ、グローバル社会が一気に止まってしまったら……と考えておくことは、決して不可能ではなかったはずだ。 パンデミックに限らず、もし長期にわたって売上を立てられない事態になったらどうするか、という想定を一度でもしておけば、万全の準備はできていなくとも、ただ呆然として成り行きを見守り、どうすることもできずに従業員を解雇して会社を畳む、という事態にはならずに済む。 これは、予想を当てるとか、いつか人類は滅亡するとか、そういう話ではない。ただ、調べて想定しておきさえすれば、ほとんどの悲劇は避けられる、ということなのだ。社長として会社を経営し、ビジネスを進めていく以上、判断の「先」を想定してシナリオを立てることは、必要不可欠の作業だと私は考えている。「すべては想定の範囲内です。だから、立ち止まって悩むことはありません。みんなで力を合わせて、ベストを尽くしましょう」。スタッフや関係者に対して、自信を持ってこう言える社長で、私はありたい。
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