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社員からの苦言を受け入れる

 誰もが社長になると見えなくなること、感じなくなることが多くなります。それは、社長自身は社員に対して平等、公平の精神を持ちますが、社員から見た社長という目線はだいぶ違うからです。  それは、お金を支払う立場ともらう立場の違いです。  そのために、社長が社員から真実を聞き出すということはとてもむずかしくなります。  社員は言いたいことをいつも我慢しています。

 耳を傾ける社長には素直に意見を言ってくれますが、現実には社員の意見を聞く社長は多くありません。  しかし、それでも社長は会社の実態を常に把握しなければなりません。放置していては、やがて会社が成り立たなくなるからです。  あるホームページ制作会社の社長が、そのことで面白い考え方をしていました。「私はまず、社員を信頼します。彼らの意見をすべて受け入れるようにしています。彼らの意見を一切否定しなければ、自由な発言が生まれるからです。  以前の私は、社員の意見など耳に入れたことはありませんでした。聞くたびに腹が立ち、私の気持ちなどわかってもらえない、という意識があったからです。そのために、耳に心地よい意見ばかり聞いていました。しかし、経営はどんどん苦しくなってしまったのです。そんなとき、ある社員の言葉が私を変えました。それは、『社長の考え方は間違っています。もう、ホームページ制作会社としての活動には無理があると思います』  というものでした。私はとてもショックで、その晩は眠れませんでした。なにも苦労のわからない社員の言葉だと思ったために、悔しさで眠れなかったのです。そして、次の日にまたその社員と話をしました。すると、『昨日は社長に失礼なことを言って申し訳ありませんでした。私は会社をやめるつもりで勇気を出して話したのです』『で、なにかいい知恵でもあるのかい』『はい。ホームページ制作を無料で行い、そこに入れる広告制作を専門にする会社に変えることです。ホームページ制作は価格競争のど真ん中のため、利益が出せなくなりつつあります。そこで、制作費は無料で広告はその会社や団体に集めてもらい、広告制作費をいただくシステムにしたらどうかと考えました。業種は変わりませんが、広告代理店機能を持った業態に変えたらどうか、と思いました』  私は驚きました。翌日から私はその社員の意見を取り入れて営業に奔走するようになりました。その後、その仕事が順調に運ぶようになり、彼を責任者として迎え入れました」  社員が提言、意見すると、怒る社長がいます。  とくに入社したての新人や、平社員、他の会社から入社した者たちに対して顕著です。  これは創業社長に多いといわれています。裸一貫で血と汗を流し、苦労に苦労を重ねてきた経験から、「私の気持ちがわかるはずがない」と思い込んでしまうためです。  その思い込みからか、本当の現場のことがわからない、外部のコンサルや経営者の意見には耳を貸してしまいます。  その結果、ますます社員の提言や意見を「苦言」に感じてしまうのです。  自分が作り上げた会社ですから、耳の痛い意見を批判に感じてしまい、耳を貸したくなくなるのです。  私もかつては「私の気持ちがわかるはずがない」と思い込んでいた社長の一人でした。  あるとき、社員が「あのお客様は注意してください。取引をやめたほうがいいと思います」と意見してきました。  私は「なぜ?」と聞きました。  すると、「あのお客様は、私たちの前での態度と、社長が前にいるときの態度が違いすぎるので、信用ができないのです」と言いました。  このとき、私はその社員を叱りました。  私のほうがそのお客様と話している回数は多いし、私はそのお客様を信頼している。その大切なお客様を批判するなど許せるものではなかったからです。それに大口の契約のお客様でしたから。  しかし、契約が成立してからというもの、そのお客様はまるで変身したかのように無理な注文、希望、執拗な値引きなどを続け、最終的にはそのお客様との取引は赤字になってしまいました。  私になぜそのことがわからなかったのか?  なぜ、見破れなかったのか?  結局、最終代金もお金を支払ってもらえず、裁判となり数年かけて回収できましたが、大赤字となりました。  なによりも、貴重な意見を伝えてくれた社員の言葉は、いまでも忘れられず思い出します。  私は、お客様に多少の問題があっても仕事がほしかったのです。大口の契約を取りたい一心で、嫌なことに目を瞑ったのです。  その結果、なにも見えなくなってしまったのです。自分のことが自分では見えなくなるように、医者が自分の身体を診断できないように、自分の都合、主観だけで判断してしまったのです。  しかし、その社員には相手の本性がよくわかっていたのでした。  この一件があってから、私は思い込みの強い自分の判断の甘さを認め、その社員に謝り、意見を注意深く聞くようになりました。大切なことは、自分の主観、都合だけで判断しないようになりました。  社長は社員のことがわからなくとも、社員は社長の性格や考え方をよく見ているのですね。どうやら、ここに会社を伸ばす秘密がありそうです。

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