私が社長になってから、四十三年が過ぎようとしています。 その間、いくもの会社を潰しましたが、それでも懲りずに会社経営を続けています。 その理由は、会社をやめても人生経営は生きている限り続くからです。 また、会社をやめても、仕事をしなければ生活ができません。 サラリーマンの人たちは六十歳で定年を迎え、退職金で最後の住宅ローンを完済し、晴れて無借金となります。 しかし、人生はそれで終わりません。 確かに夢の年金生活も素晴らしいとは思いますが、わずかな年金だけでは老後を安心して暮らせるわけではありませんね。 そのため老体に鞭打って仕事を探し始めます。 ハローワークや求人広告にはたくさんの募集がありますが、年齢という壁があるため、自分の思うような収入と仕事内容は、夢のまた夢にすぎません。 では、自分でなにか起業してみようか? でも、怖い……。 ああ、人生はこんなにも大変でつまらないものなのでしょうか。 でも、会社ってなんでしょうね。 単なる生活のための手段、金儲けための方法? 人はなんのために会社を興すのでしょうか。 現在の私は会社経営を続けています。会社という法人格をいくつも持っています。 さらに、毎年会社を設立していこうと考えています。 その理由は、会社というものは属人的でなく、自分以外の別人格を持つものだからです。 従来の会社に対する考え方は、一つの会社を生涯に持ち、誰かに譲るか、解散するか、倒産するかというものでした。しかし、会社自体を財産と考える人はあまりおりません。 たとえば私の会社は倒産しましたが、現在も存続しています。会社は廃業届を出さない限り残り続けるからです。 また、多額の借金もあります。しかし、新しく作った会社のすべては無借金経営です。 日本は会社を倒産させたら敗者復活ができないといわれていますが、それは本当でしょうか。 確かに法的責任、道義的責任は残りますが、多くの復活している経営者がいることをご存じでしょうか? 私の新しい会社は無借金経営で、現在も仕事をこなしています。この新会社は誰にも迷惑をかけず、利益も出し続けています。 私の新会社のほとんどは、「合資会社」か「合名会社」です。 その理由はわずか六万円の印紙代で登記でき、設立できるからです。 株式会社は資本金がゼロ円でも設立できるようになりましたが、設立費用が三十万円から四十万円必要になります。さらに五年後には資本金が必要です。 ならば、六万円で出資金や資本金なしで設立できる合資会社、合名会社を五つくらい作ればいいという考え方です。また、設立費用ゼロ円の NPO(特定非営利活動法人)も三つ作りました。 会社は新しい財産形態です。 自分で経営しても、他人に経営を任せるのも自由。他人に売ることも、貸すことも自由。合併させることも可能です。 また、あるアイデアがあり、そのアイデアを中心とした会社を設立して出資を募ることもできます。もちろん出資者には利益が出たら配当をしなくてはなり
ません。 出資というと驚く人もいますが、大きな考え方ではなく、無理のない方法が前提です。そのアイデア会社に一人一万円からの出資で十人、五十人、百人の出資者を募る方法もあります。これは借入金ではありません。返済の必要のない出資金です。 あるパン製造販売工場は、私の提案で六つの合資会社を設立しました。 本社、工場、配送部門、販売部門(店舗四店)の本社を除く六カ所を別会社にしました。もちろん社長が六人です。 これにより、製造部門、配送部門、販売部門の無駄な部分、経費節減、売り上げ、経費等の明確化、利益配分の細分化、作業効率の回転と各部署の責任感が生まれました。 それぞれが小さな規模になりましたが、一番が効率、利益率がよくなったことでした。図体が大きくなり、小回りの利かなくなった会社に合資会社を取り入れた分社経営がうまくいった例です。 もちろん、本社を除いてすべてが健全な無借金経営であることはいうまでもありません。 大不況、ものが売れないと叫ばれる時代。 定年後に働く場のない人たち。 会社をやめていく人たち。 なにか新しいことにチャレンジしようと考えている人たち。 図体が大きくなってしまった会社の経営者たち。 もう一度やり直そうと考えている人たち。 あなたたちも社長になって、世の中のお役に立ってみませんか? ただし、本書をよく読んで「社長という病」にならぬよう心がけ、支え合う会社の社長になりましょう。 私は、初めて手にした社長の名刺を思い出します。 もう一度、あのころに戻り、病のない経営を目指しています。 ああ、社長って素晴らしいね。
第 3章 「社長をやめる」勇気
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