会社は決して大きくしてはなりません。会社が大きくなれば儲けも大きくなるわけではありません。会社を大きくしようとすると、自動的にリスクが拡大されてしまいます。
会社は小さくてよいのです。
決して無理せず、小さな器でも大きな仕事を成し遂げることはできます。
どうして、会社を大きくしなければならないのでしょうか。会社は小さくてはいけないのでしょうか。会社が大きくなればなるほど、大変になります。
別に大変になることがいけないと考えているわけではありませんが、のんびりとゆっくりと少しずつ前進していく会社も心地よいものです。
社員をたくさん抱えれば、それに見合う売り上げが必要になります。
事業を拡大すれば、銀行からの借り入れが必要になります。
社長はどこに行っても頭をぺこぺこと下げ続けます。
どうして下げ続けなければならないのでしょう。
無理な仕事を受ければ苦労は絶えず、お金が足りなければまた頭を下げてお願いに行きます。
せっかくの家族との大切な時間を犠牲にし、友だちと会うこともままならず、夜は考えごとで頭がいっぱいになり、寝不足になります。
そのうちに頭の中は毎月の支払いと借金ばかりになり、家族との食事中でさえお金のことを考えるようになります。
本当にこんな人生を望み、この世に生まれて来たのでしょうか?私は、十二月三十一日の夜になると、涙がこぼれてしまいます。
毎年、この最後の日に集金に出向き、挨拶回りをします。
除夜の鐘は鳴り響き、新しい年を車の中で迎えます。
こんな人生を私は望んだりしてはいませんでした。
このように、人生も事業も同じで、会社経営、社長業は決して無理をしてはならないのです。
すべての人たちは私みたいな者ばかりではありませんが、私みたいな人々がたくさんいることは真実です。
一生懸命によかれと思い、命がけで頑張っている経営者のみなさん。もう、無理をする時代は終わったのです。また、無理をしなければならない会社は、なにかしらやり方に誤りがあるのです。
ちょうど、家庭が小さいように、会社も小さくてよいのです。
家族が生活できるだけの資金を稼げればそれだけでも成功と呼べます。
その程度でいいのなら、誰もが簡単に成功できるからです。
成功と失敗の分かれ目は、「これでよかった!」と思えるかどうかです。
成功には、他人は一切関係ないのです。
「これでいい!」「これでよかった!」「幸せだ!」これが成功です。社長なんて、必要のない時代。それがいままさに訪れようとしています。みんなが社長、みんなで社長。
こんな社長って素晴らしい、と思いませんか?
おわりに「ワン・アンド・オンリー」(One&Only)、これは私の大好きな言葉です。
この意味は、唯一無二。最愛の人。この人だけ。かけがえのない人。真の人。あなただけ、という意味合いを持ちます。
この世に同じ人間、まったく同じ考えの人がいないように、世界の中では私がオリジナル、あなたがオリジナル。誰にも真似のできないもの、それが私たちです。
本を読んで成功者の体験を知っても、その人の真似をすれば成功するわけではありません。
実際に成功者と呼ばれる人に直接指導を受けて学んだとしても、同じような成功者になれるわけではありません。
成功と失敗は目に映る実体ではなく、自らの内面に起こる充実感や満足感、幸せ感のあるなしではないでしょうか。
どんなに事業がうまくいっても、失うものが多すぎるなら、成功とはいえないでしょう。
人は生まれて、生きて、生き続けて、この世から去るわけですから、最終的に「終わりよければすべてよし」となることが、人生の成功者の資格です。
たとえお金がたくさんあっても、事業がうまく行き、儲かったとしても、充実感や満足感、幸せ感がなければ後悔だけとなる恐れがあります。
会社経営は確かに山あり、谷あり、天国あり、どん底ありの世界だと思います。決して楽な道などありません。苦難ばかりの険しい道なのかもしれません。しかしその苦難が、人生の終わりに振り返るときがあったとき、人生で一番の幸せの絶頂と思えるかもしれません。
人はよいときの思い出よりも、苦しいときの思い出が人生において支えと誇りとなり、本当の幸せを感じるのだと思います。
私は実際に会社を何度も潰し、何度もやり直し、何度もチャレンジして現在に至っています。
おそらく本書をお読みの方全員の合計よりも、私の失敗の数のほうが多いでしょう。
それだけ私は社長には向いてなかったのです。
しかし、雇われない生き方がしたい、自分の好きに生きたい、自由に飛び回りたい、という夢を追い続けて、四十三年の歳月が過ぎました。
その間、多くの友人、社員とも離ればなれとなり、財産もすべて失い、なにもなくなってしまいました。
後は死ぬことぐらいというどん底の世界にはまりました。
もう、これ以上なにもない、と思ったときに残されていたものに気づきました。
それはOne&Only、かけがえのない友人でした。
そのかけがえのない友人は、このような私でも信じてくれたのです。
信じられるというのは重いことでもありますが、こんなに嬉しいことはありませんでした。
そのときに友人から送られた言葉がOne&Onlyだったのです。
「オレはお前のことを大切に思っている」という強烈な言葉でした。
私のような者でも信じられ、思われる。
逆に信じられない言葉でした。
私には四十年の経営経験、失敗経験、成功経験という財産が無限に残っていることがわかりました。
いままで苦しかったこと、悲しかったこと、つらかったこと、失敗だらけだったことのすべてが私の頭の中に財産としてあるのです。
私はこの四十年間のノウハウを、多くの事業経営者、社長にコンサルタントとして伝え続けています。
失敗の反対は成功です。
失敗しないための方法とは、成功のための方法だからです。
その貴重な体験や経験が、このような本を書かせてくれました。
私はいまでも社長業に精を出しています。
あれから四十年経ったいまでも、社長でいて幸せです。
やってよかったと四十年後に感じ始めてきました。
そして、身体が動き続けるまで生涯現役、定年なしの社長業という業を積んでいるのです。
あなたも私もOne&Onlyなのです。
PS最後の最後に、人生の「希望」への感謝の気持ちを記させていただきます。
実は、いま思えば、運命に流されるのではなく、なにもかも捨て去り、生き直すことが、私の本当の「希望」だったのかもしれません。
そして、運命はやがて望み通りになり、私の希望通りにすべてを失わせてくれたのです。
そして、そこから新たな「希望」が生まれてきたのです。
人生には誰もが「希望」を必要とします。
「希望」がなければ生きていけません。
お金も必要ですが、さらに必要なものが「希望」です。
「希望」があれば、それだけで生きていける。
「希望」があれば、それだけで耐えていける。
「希望は」最大の心の処方箋です。
日々奮闘し、しかし、誠実に、会社に携わっている方々に、私の体験が一縷の希望となることを祈ります。
富樫康明
追伸ここまで、お付き合いいただき、ありがとうございます。
みなさまに、またお逢いできるときを楽しみにしています。
最後になりますが、本書を執筆するにあたり、約二年間にわたって本文のご協力をいただいた脇三枝子さん、ピックフレンド大友裕作さんに心から感謝申し上げます。
本書はともに戦ってきた父・富樫敏雄に捧げます。
富樫康明YasuakiTogashi株式会社APPLEHOUSE代表。
1954年東京生まれ。
19歳で起業し、全国でイタトマブームを起こし一世風靡したイタリアレストラン「ITALIANTOMATO(イタリアントマト)」第1号店からフランチャイズ展開の成功を導く。
またテレビやマスコミ等で取り上げられた海上輸送用改造コンテナ「CONTAINERHOUSENOA(コンテナハウスノア)」の自らの会社を大成功させたが、不慮の事態により、一気に経営破綻。
原因は「社長という病」だった。すべてを失い、死線をさまよいながらも、自力でこれを克服、再生を果たした。今は自身の体験と知識をもとに、苦悩する中小企業社長を救う活動を日夜続けている。
著書に社長病の体験や苦悩が描かれている『それでも人生にYESを』(小社刊)がある。
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