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18  目標を与え続けているか

18目標を与え続けているか水はよどんだら腐る。水と同じく、経営も流れていなければならない。決して老化させてはならない。ゆえに経営者たるものは、日に新た、常に会社と社員が進化するよう、目標を与えなければいけない。 ――苦しかった時代には寝る間も惜しんで働いてくれた従業員たちも、最近は現状に甘んじてしまい、覇気が感じられなくなりました。組織が老化しつつあるのではないかと思うのですが、それを防ぐために、経営者としてどんな手を打てばよいでしょうか。松下  私のほうが逆に聞きたいくらいですわ。それほど老化を防いでいくのはむずかしい問題やと思います。ともすれば老化する、ともすればきょうに安んずる。これは人間の常でしょうな。ですから、部分的に老化していくのを防ぐというのは、非常にむずかしいですね。国といわず企業といわず、絶えずそういう老化現象が起こっているわけです。全体としてはうまくいっているとしても、個々については老化現象が起こっているといえましょう。それを防いで全体をしてさらに進化せしめるという仕事は、非常にむずかしい。  しかしお答えしないというわけにはいかんから、一応、私の見解をお話ししますと、老化しないようにやるためには、やはり経営者が、そのことを絶えず心がけていないといかんということでしょうな。そして常にそれを訴えていく努力を怠ってはならんということでしょう。そういうことを怠っている会社は老化する。そういうことを怠らず、経営者が常に、老化しないためにはこうあるべきだということを訴えていく。あるいはそういうことを具体的にいわなくても、希望を与えるようなことを発表していく。そうすれば老化現象というものは、比較的少なくてすむんやないかと思います。つまり、経営者の経営態度によって、老化が防げるんやないかという感じがいたします。  水はよどんだら腐りますから、流さなければいけない。経営も流れていなければいけないわけです。経営が常に流れているというのは、つまり日に新たでなければいかんということです。ですから、常に進化するような指導というものが、その会社になくてはならないと思うんです。  そういうものがないと、部分的に老化したり、停滞現象が起こったりします。そうですから、経営者たるものは、常に方向を示さないといけない。そしてそれを推進することを訴えないといかん。そういうものを訴えずしては、個々の老化現象というものが起こってくると思いますな。  原則としては、老化は起こりうる性質をもっているんですね、ほうっておけば。それを起こさないようにするには、行動を起こさなければいかん。その行動とは、それを訴えるということである。経営者たるものは、その労を惜しんではならない。私はそう思いますね。  そういうことで、私はときどき、五年先のことを話したりするんですよ。私は、昭和三十一年に、「五年先には、四倍の生産をする」と発表したんです。昭和三十年の生産販売が二百二十億円でしたから、昭和三十五年には八百八十億円の生産販売をするということを、一月十日の経営方針の発表のときに言ったんです。そこで目標を与えたわけですな。そうすると、心ある者は、五年で四倍もやれるかどうかというわけですな。だけど社長がやると言うておるんやから、そういうことを考えないといかんかなということで、自然に力が入ってきますわ。ついに五年目には一千億円を突破したわけです。五倍以上できたわけです。  それでつぎに、週休二日制度を発表したんです。「アメリカでは、週五日制度で週に二日休んでいる。だから、週五日制度にしよう。アメリカのとおりにできるはずや。あすからはできないだろうが、五年先にはできるだろうと思う。みんながそうすればできるだろう。だからそのつもりでひとつやろうやないか」と言うて、五年先には週二日休みにするということを発表したんです。そして今度は何を言うたかというたら、今年の正月に、五年先には、欧州の賃金を抜いてアメリカの賃金に近づけるということを言うたんです。  だから、そういうようなことで、結局、私は経営者たるものは、常に目標を与えなければいけないと思います。そうすれば、やはり人の性は善良でありますから、基本的に間違いがなければ賛成してくれると思うんですね。主義を異にするから、是非善悪というものを別にして反対せねばならんという、思想の違いによる反対、これは簡単にはいきませんけれど、そうでない範囲においては、そのことに誤りがなければ、目標を掲げることによって、人心はそれに集中させられます。そこによどみというものがなくなっていくんやないかという感じがしますね。〔一九六七〕

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