31人の長所を見る社員には長所があれば短所もある。その長所を見るようにしているだろうか。誠心誠意、接しているだろうか。松下 人使いのコツというものは、ないとは申しませんけども、私は、はっきりあるとも申しあげかねるんです。というのは、人を使うということについては、やっぱり誠心誠意よりないと思うんです。 昔、お釈迦さんが、「人を見て法を説け」と言われた。同じことを同じように言ってもあかん、この人にはこう言うが、つぎの人にはそれと反対のことを言うて、どっちも救う、というようなことを言われていますね。まあ、お釈迦さんにしてできることですわな。われわれはあんまり、そういうことは用いないほうがいいと思うんです。 私は人使いのコツがもしあるとするならば、誠心誠意ということを考えてその人と接していくほかないと思いますが、さらに具体的にいうと、その人の長所を多く見るということが大事やと思うんです。 極端な例を申しあげますと、太閤秀吉と光秀が信長をどう見ていたかという話になるんですが、秀吉は信長の長所を見ておった。終始長所が目についたわけですね。光秀も非常に誠実な人だと聞いていますが、常にその欠点を見たわけですね。信長の長所を見て、それに共鳴したのが秀吉です。欠点を見て、欠点を是正してあげようとしたのが光秀です。信長にしてみると、どっちがうれしいでしょうか。それは、よく意見してくれることもうれしいと考えるべきだろうと思うけど、彼はそう思わなかったんですな。えらいごちゃごちゃ言うやつやなあと、こう思ったんでしょうな。けれども秀吉は自分に共鳴する。「あんたは偉いですよ」と言うわけです。これは信長でもだれでもうれしいですわ。お上手で言うのではなくして、長所が目につくからそうなるんですね。 従業員の方にも長所も短所もある。短所を見ると、こっちも頭が痛むし、その人間も短所を指摘されるといやになります。しかしその人間にも長所があります。長所を見ると、あいつは偉いやつやなあ、おもろいやつやなあと、こうなりますね。「きみ、こういうことでやれよ」と言うと、その人もまた「分かりました」というようなことで、知らず識らず一所懸命働きます。 ですから、一つは、誠心誠意その人に接するということでしょう。いま一つは、努めてその長所を見ていくということであれば、多くの人が使えるでしょうな。 では、おまえはどうかと言われると、私は多く人の長所を見るほうであったというふうにいえます。ですから、わりかた仕事がうまく運んだという感じがします。 ときに失敗することもあります。長所ばかり見て、短所を見るということが薄いと、やはり失敗する場合もあります。だから、適当に短所にも気をつけないといかんのですけども、まあ四分六でしょうかな。長所に六分、短所に四分、目のつく人なら、だいたい人は使えると思います。その反対の人は、人は使えないと、こういうように思いますね。 コツといえば、そういうようなものの見方がいえるんやないかと思います。そのほかは、あなたの持ち味をお生かしになるということでしょうね。〔一九六三〕
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